週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

「ハーンの羊羹」と「しぐれ納豆」

 

世間では今日からコロナ4連休。みなさんはいかがお過ごしですか?

 

あんこ生活にとっては「Go To 自宅」もそう悪くない(笑)。

 

今日テーブルに乗せるのは、京都、金沢に続く和菓子のメッカ、島根・松江からお取り寄せした逸品「ハーンの羊羹」(紅・小倉2本入り)と「しぐれ納豆」

 

創業が宝暦年間(1751~1764)という「御菓子司 一力堂(いちりきどう)」のふた品。

 

まずはそのお姿から、何か感じ取れませんか? あんビリーバボーな羊羹、とも言える(まさかダジャレ?)。

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とにもかくにも時空を超えた、面白い一品だと思う。

 

何が凄いかだって?

 

明治の昔、イギリスから日本に帰化し、「怪談」などの傑作を生んだラフカディオ・ハーン(日本名 小泉八雲)が愛した羊羹を当時のレシピで復刻再現したもの。

 

紅と小倉の2種類。煉り羊羹だが、「とらや」系とは別種の柔らかな食感。最初のひと口でハートをつかまれてしまった。

 

一本のサイズは117ミリ×55ミリ。厚さは27ミリ。重さは紅羊羹が236グラム、小倉羊羹が241グラム。

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とらやが代表するガシッとした重厚な煉り羊羹ではなく、口に入れたとたん、歯がスッと入り、続いてふわりとしたきれいな甘さが口いっぱいに広がる。

 

濃厚ではなく、やさしい、上品な貴婦人のような、穏やかな味わい。

 

明治時代の羊羹のレベルがいかに素晴らしかったか、よくわかる一品だと思う。

 

面白いことにこの伝統羊羹は小倉よりも紅。9代目によると、「松江では昔から羊羹と言えば、紅色」を指していたという。へえ~八つ。

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白いんげん豆に食紅で赤く染めているが、むしろピンクに近い。

 

暑いので、冷蔵庫で30分ほど冷やして食べてみた。

 

9代目によると、あんこの量が多いのが、当時の松江の羊羹の特徴だそうで、それゆえに寒天よりもこしあんの柔らかな食感と風味が滲み出てくる。糖蜜の滴り。

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ほどよい冷たさが舌に心地よい。

 

小倉羊羹は希少な備中産小豆を使用、グラニュー糖と上白糖で絶妙な仕上げを作り上げている。

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ラフカディオ・ハーンは旧制松江中学で教鞭をとった後、旧制五高(熊本)⇒東大と転居しているが、どこに行っても「一力堂(旧三津屋)」の羊羹が忘れられず、たびたびお取り寄せしていたという。

 

夏目漱石森鴎外谷崎潤一郎など、明治から昭和にかけての文豪には羊羹好き(あんこ好き)が意外なほど多い。ハーンさん、つまり小泉八雲もその系譜に位置する。

 

もう一品、「しぐれ納豆」も冷蔵庫で冷やしてから食べてみた。

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蜜煮した備中産小豆とうぐいす豆の2種類。

 

それぞれ寒天を流し込み、常温でしばらく置く「艶干しの技法」で表面を透明に糖化させ、二日がかりで仕上げたもの。「道端の小石や川辺のさざれ石の時雨(しぐれ)に濡れた風情」を表しているとか。

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おそらく江戸時代から伝わる技法。表面のじゃりじゃり感と中のゼリー状の寒天と蜜煮した小豆、うぐいす豆の風味と食感がたまらない。

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茶人としても知られる松江藩七代目藩主、松平不昧(まつだいらふまい)公がもたらした松江の和菓子文化の素晴らしさを想いながら、2020年7月、コロナ包囲網を一瞬だけ忘れて、黄金のひと時を愉しむ。

 

古くて新しい。いいあんこ菓子は不滅だと改めて確認する。

 

お取り寄せ先 「一力堂本店」(島根・松江市末次本町53)オンラインショップ

   http://www.ichirikido.jp/order.html

今回の費用合計 

     ハーンの羊羹(2本入り) 1836円

     しぐれ納豆(5ヶ入り)   789円

     送料(クロネコ便)    1180円

     ※代引き手数料は別途        

     合計代金         4135円

 

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