週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

東西比べ「一幸庵」の栗蒸し羊羹

 

先日、京都の老舗「亀末廣」の栗蒸し羊羹を取り上げたところ、あん友から「東京にもいい栗蒸し羊羹がいっぱいある。例えば茗荷谷の『一幸庵』。予約してから行かないと手に入らないよ」とメールが入った。

 

なので、今回は和菓子界でも評価の高い「一幸庵」(いっこうあん)の栗蒸し羊羹を取り上げることにしました。

どちらも秋から11月にかけての季節限定というのが希少。

 

京都「亀末廣」とは見た目も味わいも全く違う、和菓子の世界の多様性を実感できる黄金の時間となった。東西トーザイの巻です😍

 

まずはご覧いただきたい(チラ見せです)。

二層仕立てで、上が蒸しパンのような「松風」(京都発祥の主に味噌風味の菓子)で、下が栗蒸し羊羹。色全体が淡く、「亀末廣」の剛毅な、千利休の侘び寂びの世界にも通じる竹皮包みの栗蒸し羊羹(下の写真=参考までに)と同じジャンルのものとは思えない。

 

・今回ゲットしたキラ星

 栗蒸し羊羹(半棹)   2400円(税別)

 能登大納言小豆(瓶詰め) 810円(同)

 

【センターは?】

栗蒸し羊羹のもう一つの世界

 

「一幸庵」には5年以上前に一度行ったことがある。このブログを始めたころ。

 

時刻が夕方だったため、季節の上生菓子はすっかり売り切れていて、方針転換。すぐ近くにある「カフェ 竹早72」(『一幸庵』の娘さんが店主)で評価の高いあんこを数種類楽しんだ。

渋抜きがしっかりされた、上質なあんこが並び、特にこしあんは色も味わいも淡白だった記憶がある。

 

syukan-anko.hatenablog.jp

 

今回は予約してから伺ったので、ゲットできた。安くはない。なので、予算の関係で半棹にした。

白い長暖簾が印象的な店構え。女性客が3~4人いて、茶席にもよく使われる、首都圏の上生菓子屋さんというイメージが強い。

 

創業は1977年(昭和52年)。老舗の風格があるが、思ったよりも古くはない。

栗蒸し羊羹を受け取る際、ふと横を見たら、能登大納言小豆の瓶詰め」が目に入った。あんこの瓶詰めは最近、少しハマっているので、「一幸庵」の味を試してみたくなった。ついでにゲット。

 

さてさて、メーンの「栗蒸し羊羹」

包装にはメッセージが差し込まれていて「作るものから言えば、お菓子はすぐに口にしてほしのです・・・せめてその日のうちに」うんぬんと書かれていた。

 

●見た目

松風と二層仕立て、というのは東京にも京都にもない(と思う)。

調べてみたら、店主はもともとは江戸菓子の家に生まれ、京都、名古屋で和菓職人として修業を積んだことがわかった。

 

三都市の和菓子が店主の中に流れていることにもなる。

 

さらに調べてみたら、松風との二層仕立ては尾張名古屋独特の栗蒸し羊羹で、店主は名古屋で修業したときにヒントを得たのではないか。

 

サイズは半棹で115ミリ×20ミリ、厚さは60ミリほど。重さはパッケージ込みで290グラムほど。

蜜煮した栗がきれいに並び、蒸し羊羹自体はかなり淡い色。

 

上段の蒸しパン状の松風からはほんのりと味噌(溜まり醤油かもしれない)の香りがする。

 

●味わい

蜜煮した大粒の栗が絶妙なほっくり感。栗は茨城産「利平栗」を使っているようだ。

栗のぼこぼこ感と整然とした配列。ピュアな栗と「松風」の甘い味噌の風味が混然一体となる。「亀末廣」の荒々しいまでの栗とは明らかに異なる。

 

蒸し羊羹部分は淡い茶色が印象的。コントラバスみたいに。

自家製こしあん(北海道産厳選あずき)の入り方が絶妙で、むっちりと歯に吸いつくような食感。小麦粉の他に吉野本葛も加えているのではないか。

 

砂糖は鬼ザラメを使用しているようだ。

 

ひと噛みごとに三つの要素が舌の上で愛をささやき合っているような、不思議な感覚に襲われる(ハズしたかな?)。

こだわりの製法。説明によると、栗蒸し羊羹に松風を乗せ約3時間もかけて蒸し上げているとか。

 

口どけもいい。栗と松風の余韻がしばらく残る。

 

●あんポイント あえて個人的な好みで言えば、京都「亀末廣」の、余分なものをそぎ落とし、テノワール(土壌)を意図的に打ち出した栗蒸し羊羹の方に衝撃を受けたが、同じ巧緻を極めた小世界なのに、全く異なる仕上がりというのが面白い。

 

syukan-anko.hatenablog.jp

 

【セカンドは能登大納言小豆】

これは意外な中身だった。

 

「日本一大きい」能登大納言小豆を蜜煮したものだが、色の濃い丹波系の大納言小豆とは微妙に違う。

ひと粒の大きさが測ってみたら左右13~15ミリもある。

 

何も言われなければうずら豆か金時豆にさえ見える。

 

小さめの瓶に約100グラム入り。

 

水分を飛ばしながら煮詰めたあんこではなく、シロップ漬けしたよう(砂糖は白ざら糖を使用)。

だが、スプーンで口に運ぶと、形がしっかりあるのに芯までふっくらと柔らかい。

 

新しい挑戦かと思ったら「もう20年前くらいから作ってますよ」と女将さん。

 

ひょっとして瓶入りあんこのパイオニアかもしれない。パンに乗せて食べてもイケる。

 

「一幸庵」

所在地 東京・文京区小石川5-3-15

最寄り駅 東京メトロ茗荷谷駅から歩約5~6分

 

            



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

進化系?😎きんつばのバラエティーSHOW

 

京都あんこ旅の締めは驚きの「きんつば」群です。

 

きんつばの星座?いやバラエティー化?

 

まずはほんの一部、下の写真を見ていただきたい。

ベースは円形の小ぶりな手焼ききんつばだが、上に乗っている具が上からピスタチオくるみ、実山椒(みざんしょう)・・・これだけでもビックリものだと思う。

 

たまたま新京極店で出会って、「きんつば」の独創的な進化につい立ち止まってしまった。ざっと見ただけでも20種類以上はある。

明治25年(1892年)創業「京菓匠 西谷堂」(にしたにどう)。

 

「ぐーどすえ金つば」と総称されているが、このグーには「具」と「グー(グッド)」それに「お腹がぐう」という三つの意味があるそう。

 

「京でっちようかん」で知られた老舗だが、敷居が低い。

〈出会うまでの経由〉

四条河原町から庶民的な新京極に入り、三条方面へとあんブラ(あんこ探しのブラ歩き)を楽しんでいたときに偶然出会った、というのが正直な経由。

 

以前、楽天ソレドコでお取り寄せの「京でっちようかん」を書いたことがあり、そのときにホームページで「面白いきんつばがあるなあ」とチラ見した記憶がある。「西谷堂の屋号」を見て、「ここだったのか」とあんこの縁を感じた。あんこの神様のいたずらかもしれない。

 

新京極は西谷堂が元々あった場所。周辺には芝居小屋や寄席、飲食店の多い歓楽街だったようだ。となりの寺町通りとは雰囲気が違うことがわかる。

 

さて、「ぐーどすえ金つば

 

ベースは自家製つぶあん(北海道産小豆+てん菜グラニュー糖)だが、上に乗せる具のアイデアがスゴすぎる。ミスマッチぎりぎり。

 

定番のほかにラムレーズン、アーモンドスライス、ブルーベリー、丹波栗まで。紹介しきれない。

 

全部ゲットしたかったが、キリがないので、6種類だけ選んだ。

 

●あんポイント きんつばの形は現在では四角がほとんどだが、名前が示す通り、江戸時代は刀のつばの形、つまり円形だった。発祥地は実は京都で「銀鍔(ぎんつば)」と呼ばれていたようだ。それが江戸に入ってから、「金鍔(きんつば)」と江戸っ子好みの派手な名称になった。四角い形になったのは明治以降というのが定説。

 

・ゲットしたキラ星

 金ごま(ベーシック) 税込み98円

 黒ごま         98円

 くるみだく      152円

 ピスタチオだく    152円

 実山椒だく      152円

 もっちり干し芋    216円  

 

【センターは?】

山椒とつぶあん、食べたら「うめ~」

 

それぞれが魅力的なので、センターにどれを持ってくるか迷ったが、意外性で「実山椒だく」を選んだ(写真上段一番右)。真ん中に白ごまと緑色の実山椒が寄せ合っている。手焼きの素朴感。

想定外の具の中でも、実山椒(サンショウの実)は正直、最大級のミスマッチかも、と思ったが、よく考えたら、東京には「切り山椒」があるし、京都・鞍馬にも「山椒餅」がある。

これが私的には驚くほど美味だった。

 

山椒独特の刺激的な香りが中の主役(自家製つぶあん)をむしろ引き立てている。口の中であんこの化学反応が起きた、ような感じかな。

 

小豆は粒々感を残しながら柔らかく炊かれていて、繋ぎの寒天も出過ぎていない。あんこ曼荼羅(まんだら)・・・。

鞍馬の実山椒をわざわざ使っているのも好感。

 

甘さを抑えたつぶあんと山椒がこんなに合うとはね。

皮は小麦粉に山芋を加えたもの。焼き色のムラも職人さんの手を感じる。

 

重さは約37グラムほどと小ぶりだが、つい「キミ、きんつば小さな巨人だね」とつぶやきたくなってしまった。

 

【サイドは?】

サイドは横一線でご紹介したい。

・金ごま 西谷堂が創業当時から焼いているそうで、いわばベーシックきんつば。江戸期に京都で誕生したきんつばに近いのではないか。つぶあんがストレートに来る。

・黒ごま 東京・日本橋「榮太樓」の「名代金鍔」とほぼ同形で、黒ごまの香りが強め。

・ピスタチオだく ピスタチオとつぶあんのマリアージュがとてもいい。この意外性も1∔1=3の世界に近い。

・焼きくるみだく くるみがぼこぼこ。焼きくるみの風味とつぶあんの相性もすばらしい。見た目からして心がわしづかみされる。

・もっちり干し芋 天日干しの国産干し芋の蜜と甘さ控えめなつぶあんが絶妙に溶け合う。ありそうでそうはない、きんつばの傑作だと思う。

〈後日談です〉

不明な点をいくつか聞こうと思い切って電話したら、偶然、それが5代目だった。ていねいに応対していただき、「ぐーどすえ金つば」は新しいチャレンジかと思っていたが、「創業当時からでっち羊羹ときんつばは作ってたようです。それにぜんざい、飴も作っていましたね」とか。その創業当時のきんつばが「金ごま」で、ここまで種類を増やしていくのはずっと後になってからのようだ。京都は進取の気性に富んだ古都でもあること、思い出した。

 

「菓匠 西谷堂新京極店」

所在地 中京区新京極三条下ル石橋町16

最寄り駅 地下鉄京都市役所前から歩約5~6分

 

             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぶ餡とこしあん😎京老舗の焼き菓子

 

「あん古都」京都の奥深さについて。今回は焼き菓子を取り上げたい。

 

キラ星が多すぎて、選択が容易ではないが、たまたま出会った「本家玉壽軒(ほんけたまじゅけん)」の二品をご紹介したい。

 

つぶあんこしあんの絶妙な焼き菓子。

「くずや」と「茶つう」という老舗らしい菓子名で、上生菓子やまんじゅう、餅菓子とはひと味違う、凝った味わいを楽しめる。

 

●あんポイント

「本家玉壽軒」の創業は慶応元年(1865年)。現在6代目西陣の織屋「井筒屋」から菓子屋に転じた老舗で、明治に入ってから屋号を「玉壽軒」に変え、菓子屋専業になっている。京都の老舗中の老舗でつくる「百味會(ひゃくみかい)」のメンバーでもある。

 

【出会うまで】

京都独自の大徳寺納豆を使った「紫野(むらさきの)」が有名だが、私の興味はむしろ冬期限定の名物、酒まんじゅう高砂饅頭(たかさごまんじゅう)」だった。

今出川通りに面したレトロな表屋造りの暖簾をくぐると、夜空の星のような上生菓子が浮かび上がるように並び、その横辺りに焼き菓子くずや」と「茶つう」が見えた。

6代目がいらして、少しだけお話を伺うことができた。

 

麹を使う「高砂饅頭」はまだつくっていない、とのこと。

 

手間ひまがかかるため、例年なら11月に入ってから作り始めることが多いが、今年は暑さが続いたため、「少し遅れてます。まだ目途が立っていません。これからです」とか。

 

時期をもっと調べておくべきだったよ😥

方向転換。高砂饅頭はあきらめて、この二品をゲットした。3個ずつ計6個を箱詰めにしてもらう。ていねいな応対は老舗のもの。

 

・くずや 1個税込み152円×3個

・茶つう 1個税込み130円×3個

 

【センターは?】

不思議な形「くずや」の皮とつぶあん

 

「くずや」とは日本古来の屋根、葛屋葺き(くずやぶき)の形を菓子名にしたそう。

 

賞味期限が約1週間なので、自宅に帰ってから賞味した。

焼き色が栗饅頭のようだが、栗は使っていない。

小麦粉と卵を使った皮は絶妙な固さで、歯触りがほっくりしている。

中が大納言小豆(北海道産)を使ったボリューミーなつぶあんで、やや甘め。砂糖は白ザラメを使っている。大納言小豆のいい風味が口の中でどんどん広がる。

焼き菓子なので、水分が少し飛んでいるが、しっとりしていて、思ったよりも柔らかい。その崩れ落ちる小豆の食感が生菓子とは違う、独特の素朴で香ばしい風味を生んでいる。

舌の上でやや硬から軟へ混じり合う。口どけがとてもいい。これがホントのあん楽死?(昇華の意味です)と冗談を言いたくなる。

 

【サイドは茶つう】

こちらは皮に抹茶を使った焼き菓子。

もっちりとした皮で、表面の焼き色とちょこんと付いた黒ごまがいいアクセントになっている。

 

こちらのあんこは北海道産小豆のこしあん。控えめな甘さ。

こちらも口の中で混じり合うと、抹茶のほのかな香りが全体をふんわりと包んで、上品なこしあんがシンプルに生きてくる。

 

黒ごまの風味もそれなりに効いている。茶席の和菓子としても使われている。

 

●あんポイント 西陣にある「千本玉壽軒(せんぼんたまじゅけん)」は「本家玉壽軒」から昭和13年(1938年)に暖簾分け。こちらも「百味會」のメンバーになっている。間違える人も多い。

 

「本家玉壽軒」

所在地 京都・上京区今出川通大宮東入ル

最寄り駅 地下鉄烏丸線今出川駅」から歩約15分

 

                



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都大納言の瓶詰😎塩芳軒の傑作か

 

和菓子界の新しい動きの一つが小豆の美味さをストレートに押し出した老舗の「自家製あんこの瓶詰め」。あんこをジャムのように瓶に詰める。

 

あんこは和菓子の基本なので、よく考えてみれば、これほど理にかなった商品はないかもしれない。

これって和菓子におけるコロンブスの卵、と言えなくもない。

 

前回ご紹介した「御菓子司 亀末廣(かめすえひろ)」の冬季しかつくらない、季節限定の「丹波大納言」(瓶詰めではないが、究極のシンプル)などはその最たるものだと思う。

 

で、今回。

西陣の老舗「御菓子司 塩芳軒(しおよしけん)」の黒染めの長暖簾をくぐったら、宝石のような上生菓子の右側に創業当時からの焼き菓子「聚楽(じゅらく)」があり、さらにあんこの瓶詰めが見えた。ん?

あんこのこだわりには定評のある老舗だけに、どんな味わいか好奇心がむくむく。

黒いモダンな紙箱には「京都大納言小豆の粒餡」と表記されていて、じっくりと炊いたつぶあんの瓶詰め(200グラム入り)と、そのつぶあんを楽しむための薄い「ふやき煎餅」(8枚)がセットになっていた。

 

ふやき煎餅は今風に「お米のクラッカー」とも説明されていた。

 

ちなみに「麩焼き」はあの千利休が茶席でよく出していたもの(クレープ状に焼いてから甘味噌を塗っていたようだが)。

 

以前来たときはなかったので、コロナ以後の新しいチャレンジだと思う。

 

30秒ほど思案して、ゲットすることにした。

もう一品、塩芳軒の原点とも言える、創業以来(明治15年)の銘菓「聚楽(じゅらく)」も包んでもらう。

ちなみに現在は5代目。ルーツをたどると、あん入り饅頭の元祖「塩瀬」(南北朝時代創業)にまでたどり着くようだ。

 

・ゲットしたキラ星

 京都大納言小豆(セット) 税込み1620円

 聚楽(5個入り) 同1080円

 

【センターは?】

丹波大納言のつぶあんは究極のシンプルか

 

こしあんの入った焼き菓子「聚楽」がセンターにふさわしいかもしれないが、今回は老舗の進取の気性に敬意を表して、「京都大納言小豆の粒餡」(200グラム入り)を置くことにした。

京都大納言とは丹波大納言のことだと思う。店のお方もそうおっしゃっていた。

 

ネーミングとしてはより京都を打ち出していて、クールだと思う。

 

●味わいは?

ごらんの通りの瓶詰めで、蓋を取ると、表面がうっすらと糖化していて、いぶし銀のオーラを放っているよう。

ふやき煎餅を用意して、そこにスプーンで掬った大納言小豆のつぶあんをドンと乗せてみる。

見事に煮詰められた、濃い小倉色の艶やかなつぶあん

 

しばらく見つめてから、口に運ぶ。

 

大納言小豆(皮がやや硬いのが特徴)がねっとりと、皮まで溶け込むように仕上げられている。

 

密度となめらかな舌触り。濃厚な甘さ。いい風味がゆっくりと来る。

 

じっくりと時間をかけて煮込んだことがわかる。

材料は丹波大納言小豆と砂糖のみ。

 

シンプルの極み。

 

渋抜きをしっかりしていて、雑味はきれいに消えている。

 

小豆のいい風味を残したまま。

さすが老舗のあんこだなあ、と素直に舌鼓を打つ。

 

以前食べた「亀末廣」の丹波大納言とは比較できないが、素晴らしいあんこだと思う。

 

ふやき煎餅はサクッとしていて、このねっとりとしたつぶあんを上品に押し上げている。

 

こういう組み合わせの食べ方も面白い。「あん古知新」の楽しみ方。

 

【セカンドは『聚楽』】

塩芳軒の目玉の一つ「聚楽」は、中がこしあんの焼き菓子だが、小麦粉ベースの皮はしっとりしていて、見た目よりも柔らかくて、香ばしい。

こしあんも穏やかな甘さ。糖蜜(水飴、和三盆など)の気配が絶妙で、全体のハーモニーがとてもいい。口どけが素晴らしい。

 

表面の刻印は天正(てんしょう)」の文字。この一帯が豊臣秀吉天正年間に築いた「聚楽第」(じゅらくだい、またはじゅらくてい)を表しているようだ。

 

●ついでに蛇足。

 

「塩芳軒」のある飛騨殿町はかつては秀吉の重臣蒲生氏郷の屋敷があった場所でもある。

私が個人的に好きな戦国武将で、彼の正室は冬姫(織田信長の次女)。つまり信長が見込んだ男でもある。千利休の七哲の筆頭でもあった。町名に今も彼の名前(蒲生飛騨守氏郷)が残っていることに感銘を受ける。意外に知られていないが、茶の湯、千家は彼なくして存続できなかった。

 

39歳で非業の死。辞世の歌は「限りあれば吹かねど花は散るものを心みじかき春の山風」

 

「御菓子司 塩芳軒」

所在地 京都・上京区黒門通中立売上る

最寄り駅 京都駅から市バス「大宮中立売」下車

 

             



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビヨンセか😎京都「亀末廣」の栗蒸し

 

目的の一つだった栗蒸し羊羹をついにゲットすることができた。

京都に来たら、やっぱりここは外せない。

 

御菓子司 亀末廣(かめすえひろ)。

創業が文化元年(1804年)。現在7代目(8代目も修業中)。

 

敷居が高そうな外観だが、実際はむしろ敷居が低い、と思う。

 

京都でも今では数少ない、ほとんど江戸・明治のまま、一対一の対面販売にこだわり、お客とのやりとりを大事にする。

 

表屋造りの建物も時間が止まったままのよう。

 

フツーならありえない世界がここにもある。

〈タイムスリップ〉

長暖簾をくぐり、照明を落としたレトロな店内に足を踏み入れると、自分が一体いつの時代のどこにいるのか、わからなくなる(ホントです)。

ここは江戸時代の京か?

 

店員さんの対応も腰が低く、気さくで、しかも無駄がない。

 

次第に目が慣れてくる。あった! 栗蒸し羊羹のスーパースターのお姿が・・・いや横綱格と言った方がいいかもしれない(個人的な思い入れですが)。

 

予約せずに、運試しとばかりに開店と同時に敷居をまたいだので、ゲットできるかどうか不安だった。

私にとっては、ある種、幻の栗蒸し羊羹だった。

 

季節限定で、毎年丹波新栗のシーズン約1か月間しかつくらない。

 

菓名も「竹裡(ちくり)」。渋すぎる。

 

京菓子本流の伝統に正座したくなる(勝手にしてください)。

 

・ゲットしたキラ星

 竹裡 1棹 3800円(税込み)

 季節の上生菓子二品(日持ちしない)

 紅葉きんとん 430円(同)

 山里     490円(同)

 

【センターは?】

究極の素朴、野蛮と紙一重、京都のスゴ技

 

ごらんの通りの重厚な容姿。

厚みのある竹皮と土(竹林)の香りが立ち上ってきそうな、一見すると、洗練とはほど遠くさえ見える。

 

全体のサイズは約210ミリ×50ミリ。厚みは35ミリほど。重量は竹皮込みで約320グラム。

すぐに竹皮を取ろうとしてはいけない。

 

説明書きに「竹皮のまま2センチ位に切ってから皮をむきお召し上がりください」とある。

 

なので、包丁をしっかり持って、作法に従って竹皮をザクリと切る(ホントに音がする)。

本体が現れる。断面を見る。すごい。

丹波のデカい新栗が密集するように合わさっている。

 

蒸し羊羹が月夜の闇のようにも見える。主役と脇役のディープな関係。

新栗は妙に黄色すぎず、ネイチャーのままのよう。

 

栗蒸しはそれなりに食べている方だと思うが、この野生感は想像を超えている。

 

菓子楊枝(ようじ)でひと口。

蒸し羊羹部分は深い小倉色で、竹皮の筋が美しい。

 

小麦粉と本葛も使っているのに、相対的にこしあん力の強さが印象的食べた瞬間、竹皮の香りとともにいい小豆の風味がふわりと広がる。

 

ザラメを使った上品な甘さ。甘すぎない。

何よりも驚かされるのは丹波の新栗

 

柔らかさを期待すると裏切られる。

 

これまで食べたものとは食感が違う。この固めの食感は何だ?

 

ひと噛み、二噛み・・・旬の丹波栗の風味が押し寄せてくる。

 

それでいて、余韻がほっくり。

蜜煮した柔らかな栗に慣れた舌にはむしろ違和感さえ感じる・・・それが周到に計算された、亀末廣の伝統のワザだとわかるまで数秒ほど要する(私は反応が遅いので)。

蒸し羊羹部分の柔らかさ×対極の食感、その歯触りと舌触り。

 

しばらくその絶妙を楽しむ。

 

高貴と野性の晩秋におけるマッチング。

 

横綱というより、勝手な妄想だが、ソロデビュー時のビヨンセが近いかもしれない(ハズしたかも)。

 

大胆にして細心・・・「亀末廣」は干菓子も有名だが、素材をここまで生かした栗蒸しはそうはない、と思う。やっぱりすごいと言わざるを得ない。

 

もう少し安いとありがたいのだが、それは野暮というものだろう。

 

【セカンドは?】

●紅葉きんとん(写真右) 

これも季節の上生菓子で、表面のあんこ(もみじ餡)は白小豆を炊き、クチナシなどで着色している。中が大納言小豆のつぶあん。甘さは控えめ。上品で深いコクがスーッと融けていく。

●山里(写真左)

これもこの季節だけ。見た目は真っ黒。包丁で切ってみたら、核の部分が黄色っぽい餅(粟餅)で、それを上質なこしあんが包み込んでいる。さらに栗も丸ごと。さらにさらに表面には黒糖羊羹がコーティングされている。すごワザ。食べながら食べるのがもったいない、そんな気分になった。



「御菓子司 亀末廣(かめすえひろ)」

所在地  京都・中京区姉小路通烏丸東入ル

最寄り駅 地下鉄烏丸御池駅下車 歩約3分

 

            

 

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孤高のあんこ🤩「川端道喜」食べる

 

【ここから始まった 発端】

今年5月、東京FMにゲスト出演したとき、パーソナリティーホラン千秋さんから「これから食べてみたい一品は?」と聞かれ、「川端道喜のあんこの入った粽(ちまき)ですね」と答えてしまった。

 

想定外の質問だったのと、ホランさんのきらめくオーラにドギマギ、京都和菓子界の頂上の一つに位置する「川端道喜(かわばたどうき)」の名前を出してしまった。冷や汗。

手に入りにくいのと、そう安くはない、さらに歴史がスゴすぎる、その三つでこれまで二の足を踏んできた。

 

7~8年前になるが、ようやく訪ねたら、運がないのか休みだったこともある。「予約が必要」ということさえ知らなかった。

 

なので、今回。

 

予約のために電話すると、敷居が高いという噂とは違って、応対がとてもよかった。

 

★あんポイント 川端道喜の創業は驚くほど古い。応仁の乱後、文亀・永正(はっきりしない)までさかのぼるようだ。戦国⇒江戸時代にかけて「餅屋」と自己規定している。現在が16代目。「とらや」に並ぶ禁裏御用の菓子司。明治維新後「とらや」は東京に進出しているが、川端道喜は京都から一歩も出ていない。ミラクルな孤高の店。

 

【たどり着く 展開】

コロナで3年ぶりの京都あんこ旅となったが、その目的の一つが川端道喜だった。

 

約500年間、一子相伝で粽(ちまき)をつくり続け、その中身がユニーク。材料が他の店とは違う。京都でもうるち米を蒸かしたものが一般的だが、川端道喜は吉野の本葛(ほんくず)を使って、「湯がく」という独特の製法を守っている。

 

なので、「御粽司(おんちまきし) 川端道喜」が正式な店名でもある。

何だかちょっと近づきがたい気もするが、予約した3日後、北山のお店に行くと、あまりにシンプルな店構えで、拍子抜けする。7~8年前と同じはずだが、入り口が少しだけ開いていて、人がいるのかどうかもわからない。「どうき」と染め抜かれた渋い長暖簾がどこか隠者のようで、ひょっとして今日も休みか?と不安になってしまった。

恐るおそる狭い店内に入って、名前を告げると、仕切り暖簾の向こうから店の方(女性)が出てきて「お待ちしてました」。如才ないほっこりする対応で、予約しておいた「羊羹粽(ようかんちまき)」(1束5本 税込み3900円)を受け取った。第2段階クリア。

 

店内に置いてあった赤鍋(銅鍋)があまりにきれいで、了解を取ってから、シャッターを押した。今使っているものとか。

ちまきは2種類水仙ちまき」と「羊羹ちまきのみ。

 

賞味期限が「翌日まで」ということもあり、今回はあんこが練り込まれている「羊羹ちまき」だけをゲットした(フトコロ事情もあるが)。

 

【賞味タイム 舌の時間】

翌日の自宅。ぎりぎりの賞味となった。

 

ごらんの通り、円錐形の見事なちまきで、雑誌やネット写真で見たのと同じだが、笹の香りとイグサ(店の方は『いがら』とおっしゃってた)のきちっとした巻き方など、目の前の実物はスキがない。完ぺきなお姿。

店の方に教えてもらった解き方で、イグサを外し、5枚の笹をゆっくりと外す。

半透明の、藤紫色に近い本体が現れた。

 

吉野葛こしあんが融合して、奥に光のしずくがあるよう。

 

あんこ界のかぐや姫みたい(妄想)。

約500年間、ほとんど変わらないはず(うるうる)。

 

はがした笹をお皿代わりにして、黒文字で切り、ゆっくりと口に運ぶ。

ぷるんとした吉野葛と練り込まれたこしあんが絶妙という言葉にくるまれてふわりと広がる(表現がおかしい)。

 

甘さはほのか。

 

材料は吉野の本葛、砂糖、餡だけ。

添加物などはない。

 

上質のこしあんがギリギリのところで本葛と一体になっている感覚。

 

これが一子相伝の秘伝のすごみ、かな。舌が追いつかない(汗)。

 

以前15代目が書いた「和菓子の京都」岩波新書)で苦労話を読んだ記憶があるが、生半可な世界ではないのは確か。

 

舌触りがどこかみずみずしい。

笹のいい香りが伴走してくる。

 

淡い、どこかはかない、夢のような時間が舌の上にとどまっている。やがて余韻を残しながら、すーっと融けていく・・・。

おめえ、こんな贅沢してていいのか?

 

ここはやっぱりあんこの神様にかしわ手を打つほかはない。

 

●あん子の感想 プルプルしていて、見た目も美しい。しかもおいしい。やっぱりすごいわね。本来は端午の節句に食べるものでしょ? それが予約すればちゃんと食べれる。安くはないけど(笑い)。以前、編集長の京都の友人が日持ちする「葛湯・おしるこ詰め合わせ」を送ってくれたことがあったでしょ? あれもおいしかったけど、こちらは朝ナマの本物。ようやく本丸にたどり着いたってわけね。最初で最後かもね(笑)。

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「御ちまき司 川端道喜」

所在地 京都市左京区下鴨南野々神町2-12

最寄り駅 地下鉄烏丸線北山駅下車歩いて約10分

 

             

 

 

 

 

 

 

 

京都おはぎの底力😎ついに巴屋へ

 

京都のおはぎ、と言えば「今西軒」が真っ先に浮かぶ。

 

つぶあんこしあんきなこ。基本的にこの3種類しか売られていないが、早朝から行列が出来、京都おはぎ界の頂上に位置する名店と言っても過言ではない、と思う。

 

だが、約4年前のこと。私のあん友でもあり、骨の髄まで京都人のKさんが口を開いた。

 

「もう一軒、すごい店があるよ。口のうるさい老舗料理屋の女将が『今は巴屋(ともえや)やで。あそこは代替わりして味が落ちた』と言ってる。ま、あなたも一度行って食べてみるといい」。

 

京都人の陰口はほとんどビョーキ(?)だと思うが、舌は確かなので、これは行かねば、と私は秘密のあんこノートにメモしておいた。

 

で、今回。4年越しの、私にとっては幻だった「巴屋」へ。

今西軒ほどの行列はないはず、と思いながらも、「午前中、それも早い時間に売り切れもある」との情報もある。

 

数を多くつくらないので、売り切れごめんのおはぎ屋はん。

 

店は東寺の近くで、店が開くのは午前10時と比較的遅い(早朝からつくっているため)。

 

なので、早めにホテルを出て、午前10時50分に到着した。

路地に入ったところに地味系の町家があり、そこが目指す店だった。

 

「手造り おはぎ 巴屋」。小豆色の日除け暖簾が小さな店構えに似合っていた。

 

たまたまなのか、行列はない。ラッキーか?

 

そこだけ陽だまりの気配。

 

ポイントポイントに手書きの文字。ひょっとして初代からのもの?

 

・ゲットしたキラ星

 つぶあん 1個150円(税込み)×2個

 きなこ  同150円×1個

 

【センターは?】

あまりに素朴、あまりに丁寧、圧倒的なつぶあん

 

〈店の歴史〉

京都にはいい上菓子屋が多いが、いいおまん屋はん、餅屋はんも多い。

 

「巴屋(ともえや)」の創業は、思ったほど古くはない。

 

狭い入口(受け渡し場所)の向こう側が広めの板場になっていて、清潔そうな羽釜が3台。そこで2代目女将さんと息子さんの3代目がおはぎづくりの真っ最中だった。

熟練の手で美味そうなおはぎが次々に並べられていく。

 

なかなか見れない光景。

 

3代目は若く、如才ない、京都のいい部分を受け継いでいる印象で、来店した私に気づくと、いろいろと教えてくれた。

店はかれこれ40年になります。もともとは私のおばあちゃんがたまたまあんこを造っていて、おはぎも売り始めた。最初はつぶあんだけでしたが、2代目の母がきな粉も始めたんですよ。なので、今はこの2種類だけです」

 

たった2種類だが、その手づくりおはぎ一筋の貫徹度がすごい。

 

〈賞味タイム〉

「朝ナマ」なので、賞味期限は本日中。

 

あちこち和菓子屋巡りをして、夕方4時にホテルに戻り、お茶を淹れてから、じっくりと味わうことにした。

センターをどちらにするか迷った。こういう時は無理に決めない。

まずはつぶあん

 

今西軒より楕円形で、少し大きめ。

 

濃いあずき色。つぶと呉(小豆の中身)が絶妙に入り混じっている。

いい小豆の香りがゆるゆると立ち上ってくるようで、2代目の手の感触とともに、ある種のなつかしさを蘇らせるような。

 

3代目によると、あんこ炊きはほぼ半日がかりで、約10時間かけているそう。手造りあんこに懸ける熱が半端ではないことがわかる。

 

一見素朴な、よく見ると、つぶあんの陰にこだわりが透けて見える。

あんこももち米も羽釜で炊いているようだ。

 

小豆は北海道産、もち米は滋賀産の羽二重を使用。砂糖は?と聞くと「上白糖です」。塩もほんの少し使っているとか。「材料はそれだけです」(3代目)。

 

口に入れたとたん、つぶあんの鮮度と吹き上がる風味に圧倒されてしまった。

 

甘さのほどよさ、ふくよかさ、しっとり感。塩気はほとんど感じないほど。

羽二重もち米のピュアな風。

 

素朴だが、これはすごいね。

 

今西軒の洗練とはひと味違う、京都の底力を思い知らされる味わい・・・。

 

続いてきなこ

甲乙つけがたいが、どちらが好みと問われたら、タッチの差で「きなこ」かな(たまたまフィットしたかも)。

 

きなこの色が薄め。「特別なきな粉だから」とか。大豆の皮を取ってからきな粉に仕上げているそう。特注品(専門店から)のようだ。

 

きなこの風味がきれい。

 

驚くべきは中にぎっしりと詰まったつぶあん

同じ自家製つぶあんだが、その厚みと淡いきなことのハーモニーがとてもいい。

 

あんこの粒々感が絶妙で、小豆の形がギリギリのところで柔らかく残っていて、舌の上でゆっくりと舞い踊る。そんな感じ。

1∔1=3の味わいを作り上げている、と言いたくなる。

 

大店の上菓子屋の陰(路地裏)に、こういうおはぎ専門店がこじんまりと暖簾を下げている。

 

あくまで個人的な感想だが、どこかの女将のように「今西軒を超える」とまでは言い切れないが、私のあんこハートがときめいたのは確か。

 

洗練と素朴。好みもある。

 

これでこしあんがあればなあ、と贅沢な願いもある。

 

それにしても、とため息まじりにつぶやくしかない。

 

京都は奥が深すぎる。

 

「おはぎ巴屋(ともえや)」

所在地 京都市南区八条内田町76

最寄り駅 近鉄東寺駅下車 歩いて約10分