週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

叶匠壽庵「あも」と水菓子

 

コロナ自粛で体半分だけお取り寄せにハマっている。

 

今回ご紹介するのは、個人的な歴史だが、あんこ好きには避けて通れない逸品だと断言してしまおう。

f:id:yskanuma:20200709173458j:plain

 

柔らかな求肥餅(ぎゅうひもち)をほろほろとこぼれ落ちそうな丹波大納言あんこで羊羹状に包み込んだ「あも」(1棹)、水ようかん(2個)、栗蒸し羊羹(2個)、梅ゼリー(3個)をセットにした叶匠壽庵(かのうしょうじゅあん)の「銘菓詰合せ 夏」(税込み 3456円)。

f:id:yskanuma:20200709173654j:plain

 

主役はもちろん「あも」。御所の女官言葉で「お餅(もち)」のこと。これを商品名にしたのだから、目の付け所が凄すぎ。

 

つい先日のこと。遠出できないストレスがマックスになりかけたあんこ脳にポッと浮かび上がってきた。あの、奥ゆかしくもなまかしいお姿。

 

あんこ界のたおやかな女官、ってところかな。

f:id:yskanuma:20200709173734j:plain

 

クロネコで届くと、冷蔵庫で30分~1時間ほど冷やしてから、水ようかん⇒栗山家(栗蒸し羊羹の一種)⇒あもの順で賞味することにした(梅のゼリー「標野(しめの)」はあんこではないが、夏の彩りで加えてみた)。

f:id:yskanuma:20200709173809j:plain

 

水ようかんは孟宗竹(プラスティック製)の器に収まっていて、こしあんと寒天の配合がなめらかで上質、やや甘めで、塩気もほんのり。個人的な好みでは先日食べた日光「綿半」の水ようかんほどのコクとスーッと抜けていく余韻は気持ち少ない気がするが、いい水ようかんなのは間違いない。

f:id:yskanuma:20200709173838j:plain

f:id:yskanuma:20200709173909j:plain

 

栗山家(くりさんが)は柔らかな、明るいこしあん蒸し羊羹の中に蜜煮した栗が一個入っていて、栗がいい歯ごたえ。こしあんは脇役で、ぷるぷると手にくっつくのが好みの別れるところ。やや甘め。冷たい栗の美味がすべてを救っている気がする。

f:id:yskanuma:20200709173958j:plain

f:id:yskanuma:20200709174015j:plain

 

さて、本命の「あも」。10年以上前、日本橋高島屋でこれを初めて買い求めて、その後賞味した時に「ほおお~、これはすげえ」と脳内がしびれた。皮までとろとろと炊かれた丹波大納言小豆の美味さ。思い出すだけで、唾液がたまる(失礼、はしたない)。

 

私にとっては一つの甘い事件でもあった。コスパもよかったのもプラス評価。

 

今回はお取り寄せ。

f:id:yskanuma:20200709174056j:plain

f:id:yskanuma:20200709174200j:plain

 

最初はほとんど冷やさずに賞味した。だが、包丁を入れると、中の求肥餅(ぎゅうひもち)がどろりと流れ出てきて、べたべたとくっつく。

f:id:yskanuma:20200709174359j:plain

 

なので、冷蔵庫に30分ほど入れて、少し冷やしてから、再び包丁を入れる(それでも求肥餅は異様に柔らかい)。

f:id:yskanuma:20200710052134j:plain

f:id:yskanuma:20200709174549j:plain

 

口の中に広がる丹波大納言小豆のあんこの秀逸な印象は変わらない。

f:id:yskanuma:20200709174631j:plain

 

窓からの光を通すと、大納言小豆の形はくっきりしているのに、口に入れると、皮までとろりと柔らかい。よく見るとが呉(ご=あずきの中の実の部分)と艶やかに溶け込んだ半透明の寒天とコラボして、秘密の清流アートのようで、気を抜くとグイと引き込まれそうになる。蜜の滴り。

f:id:yskanuma:20200709175419j:plain

f:id:yskanuma:20200709174710j:plain

 

危ないアブナイ。

 

ゆっくりと口に入れる。

 

なぜか最初に食べたときほどの感動の波は来ないが、美味なのは変わらない。

f:id:yskanuma:20200709175419j:plain

あんこ炊きのとき、砂糖はグラニュー糖を使っているようで、やや甘めだが、すっきりしたきれいな余韻を生んでいる。大納言小豆の余韻はしばらく舌に残る。

 

少し冷やした方が美味さが2割増しになる。

f:id:yskanuma:20200709174735j:plain

 

丹波大納言小豆をこの価格(単品なら1棹 税込み1296円)で惜しげもなく使っているのが叶匠壽庵の凄いところで、この一品で、「とらや」ほどの歴史のない叶匠壽庵をここまで大きくしたというのもなるほどと納得する。

f:id:yskanuma:20200709175059j:plain

 

創業は昭和33年(1952年)と老舗としての歴史は浅い。しかも創業者は滋賀県大津市の元公務員で、和菓子作りとは無縁だった。そのサクセスストーリーは長くなるので、ここでは省略したい。

 

現在3代目。「とらや」の後を追う、新興勢力の有力候補でもある。

 

大きくなっても手作りにこだわり、「あも」のあんこは専任のあんこ職人が毎朝、銅釜でじっくり炊いているという。そのこだわりは捨ててほしくない。

 

冷たい梅の寒天ゼリー「標野(しめの)」は箸休めにもなる。

f:id:yskanuma:20200709175317j:plain

 

コロナのおかげで夏のお取り寄せを楽しむ。これもコロナ包囲網の中の新しい生活スタイルかもしれない。

 

所在地(長等総本店) 滋賀県大津市長等2-4-2

今回のお取り寄せ 通販サイト「叶匠壽庵LOHACOストア」https://lohaco.jp/store/kanou/

 

 

あんこなニュースです。楽天ソレドコ」最新記事で、私のお取り寄せおすすめの和菓子「西谷堂の京のでっちようかん3種」太宰府名物梅が枝餅(やす武)」の記事が掲載されてます。よかったら寄ってみてくださいな。

srdk.rakuten.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風味圧巻「饅頭界のブスカワ」比べ

 

今回は究極の田舎まんじゅうを取り上げたい。

 

京都の上生菓子織部まんじゅう」の対極とも言える。

 

初めて対面したとき、あまりの容貌魁偉(ようぼうかいい)さに息を飲んでしまった。

 

まるでげんこつ、大きさもげんこつ大。蒸かし立ての表面は旨そうなテカリを発散していて、しかもひび割れまで走っている。

 

なんちゅうお饅頭か。

f:id:yskanuma:20200702181144j:plain

 

表現を変えると、まんじゅう界のブス猫と言いたくなる。

 

愛おしいブス猫。ブスカワこっちのたとえの方が近い。

 

手で割ると、皮のもっちり感、ふかふか感、中にぎっしりと詰まったあんこ。

f:id:yskanuma:20200702181305j:plain

 

このあんこがあまりに素朴で、ほとんど渋抜きをしていないよう。

 

甘さと塩気がほどよい。横綱格の不格好まんじゅうだと思う。

 

「人もまんじゅうも外見で判断しちゃァいけニャーぜ

 

奥からそんなつぶやきが聞こえてきた。

f:id:yskanuma:20200702181505j:plain

 

利根川と江戸川の分岐点、茨城・猿島群境町にある「花家(はなや)」の「小麦まんじゅう」である。昔からこの周辺で作られていた郷土まんじゅう。

 

写真右からこしあん、つぶしあん、みそ(甘味噌)の3種類。それぞれ130円(税込み)。

f:id:yskanuma:20200702181551j:plain

 

地場の小麦粉に沖縄産黒糖が練り込まれていて、蒸し籠の匂いも食欲をそそる。

 

一番気に行ったのはしっとり感のあるこしあんで、塩気が強め。こしあんのはみ出し方(にじみ方)が心つかまれる。

f:id:yskanuma:20200702181818j:plain

f:id:yskanuma:20200702181856j:plain

 

かぶりつくと、その素朴な美味さに「ん?」となる。

 

続いて「うんめえ」が飛び出してくる。

 

つぶしあん、みそ(地場の甘味噌)も素朴に美味い。

f:id:yskanuma:20200702181942j:plain

f:id:yskanuma:20200702182030j:plain

 

古民家の店構えが江戸の村を思わせるが、店の創業は昭和44年(1969年)とそう古くはない。現在2代目。おばさんスタッフが3~4人早朝からまんじゅう作りに励んでいる。たくましい。

 

ここでもう一軒、私のお気に入り、小麦まんじゅうの隠れ名店をご紹介したい。

 

お隣の古都・古河市の中心、御茶屋口にひっそりとある「内田茶店(うちだちゃてん)」

f:id:yskanuma:20200702182309j:plain

 

茶園が本業だが、お客にお茶を出して、ついでに手作りの小麦まんじゅうを出したところ、これが評判を呼んで、いつしか販売するようになった、というもの。

 

「花家」よりもデカい。ひび割れも「まんじゅう界のブスカワ猫

 

つぶしあん一種類だけ(税込み 110円)。

f:id:yskanuma:20200702182446j:plain

 

このあんこがたまらなく美味い。

 

花家よりも小豆の風味がぐわんと広がってくる(個人的な感想ですが)。

 

ご高齢の三代目店主によると、茶園としての創業は明治末で、小麦まんじゅうを製造販売し始めたのは12年前から。看板には「小麦まんぢゅう」の表記。「まんじゅう」ではなく「まんぢゅう」(!)。

f:id:yskanuma:20200702182557j:plain

 

隣に板場を造り、女将さんがまんじゅう作り担当。食べるとわかるがあんこ作りの才能はかなりのものだと思う。手の匂いのする自家製あんこ。

 

小豆は契約農家のえりも小豆を使い、砂糖は三温糖。銅鍋でほぼ毎日炊いている。

 

つややかな小倉色のつぶしあんで、塩気のほんのり具合も絶妙。

f:id:yskanuma:20200702182716j:plain

f:id:yskanuma:20200702182750j:plain

f:id:yskanuma:20200702182821j:plain

 

つぶつぶ感をわざと残していて、サトウキビのいい香りも残しているような、穏やかな甘さがたまらなく美味い。甘さは強め。

 

皮はやはり地場の小麦粉。沖縄産黒糖を練り込んでいるのも「花家」とほぼ同じ。

 

小麦の素朴とつぶしあんの吹き上がりが口の中で怒涛の風味となる。

f:id:yskanuma:20200702182859j:plain

 

ただ・・・2年前に来た時よりもあんこの量がほんの少し減った感じがしたが、あるいは勘違いかもしれない。

 

コスパの良さは折り紙付き。

 

ファンが多く、作る数も限られているので、午前中に売り切れることも多い。

 

賞味期限は翌日まで(添加物がゼロ)。

 

作り立てが一番美味いが、冷凍して保存してもいい。レンジでチンすると、蒸かし立ての美味さがよみがえる。

 

「花家」 

所在地 茨城・猿島郡境町1888-2

最寄駅 JR古河駅から境車庫行バス(約40分)

「内田茶店

所在地 茨城・古河市中央町3-2-14

最寄駅 JR古河駅から歩いて約15分

 

               

        f:id:yskanuma:20200702183331j:plain

               f:id:yskanuma:20200702183110j:plain

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梅雨払い「こしあん入り本わらび餅」

 

コロナと梅雨。気分的には青空が欲しい

 

こういうときにぴったしの生菓子で気分転換を図るのも悪くない。

 

首都圏の和菓子の穴場、東松山市の老舗和菓子屋さんで見つけた「本わらび餅」(8個入り 税別850円)が青空の一つになることもある。

 

ただのわらび餅ではない。こしあん入り。

f:id:yskanuma:20200625120827j:plain

 

この分野の頂上、京都にいくつかある上生菓子だが、まさか埼玉で本わらび粉を使い、しかもこしあんの入った、上質の本わらび餅に出会えるとは、正直、思ってもみなかった(埼玉に他意はありません)。

 

あんこ旅の道草で、東松山市をブラ歩きする。歴史のある街だが、コロナの影響もあるのか、人通りは少ない。猫の影もない。

 

いい和菓子屋がポツリポツリある。ローカルの隠れた実力。

 

かつて中心街だった本町通りに海老茶の渋い暖簾が下がっていた。「生菓子司 清晨庵(せいしんあん)」の屋号も渋い。

f:id:yskanuma:20200625121026j:plain

 

創業が大正あたりで、現在5代目という情報をつかんだ。本わらび餅は売り切れることも多いという。

 

たまたまなのか、ひと箱だけ残っていた。ゲットラッキー

 

あんこの神様が微笑んだってことかな。

 

それを買い求め、ついでに「くず桜」(税別140円)とこの季節だけの水無月(みなづき)」(同140円)もゲットした。

f:id:yskanuma:20200625121213j:plain

 

いずれも日持ちしないので、急いで帰宅、その5時間後に賞味した。

 

主役はもちろん本わらび餅。

f:id:yskanuma:20200625121416j:plain

f:id:yskanuma:20200625121524j:plain

 

冷たい麦茶を用意し、きな粉のかかったこしあん入り本わらび餅をじっと見つめる。直径40ミリほど。愛の視線?

 

本わらび粉を使っているのがわかる、やや黒みがかった、半透明のわらび餅。

f:id:yskanuma:20200625121813j:plain

 

うっすらとこしあんが透けている。包丁で切ってみる。

f:id:yskanuma:20200625121851j:plain

 

口に入れたとたん、本わらび餅のぷるるん感と柔らかな感触、かすかにきな粉のやさしい香ばしさが、同時に押し寄せてきた。

 

そこになめらかな、しっとりとしたこしあん「あたしを忘れないで」とメーンに出てきた。小豆は北海道産、砂糖はたぶんグラニュー糖。かすかに塩気も感じた。

f:id:yskanuma:20200625122115j:plain

 

三位一体の絶妙な、京都に負けない上質の味わいだと思う。

 

口どけもとてもいい。

 

この後、冷蔵庫に30分ほど冷やして、再賞味してみた。

 

本わらび餅は冷やすと固くなる。なので30分。より歯ごたえが出て、冷たさが別の味わいを運んできた。これはこれで悪くない。

f:id:yskanuma:20200625122202j:plain

 

店によると、本わらび粉は京都からわざわざ取り寄せているそう。

 

素材へのこだわりが京都流、ということになる。京都で同じものを食べたら、もっと舌代は高くなると思う。埼玉の優位ってことかな。

f:id:yskanuma:20200625122327j:plain

 

「くず桜」もこしあんで、きれいな風味。桜の葉がビニールなのが、やや興ざめだが、この価格なので、そう文句は言えない。

f:id:yskanuma:20200625122428j:plain

 

水無月(みなづき)」は京都の6月の定番生菓子で、「半年の穢れを祓い、残り半年の健康を祈る」という意味がある。コロナ禍もこの穢れに入ると思う。小豆には魔除けの意味もある。

 

ういろうに蜜煮した大納言小豆を乗せ、寒天でコーティングしている。

f:id:yskanuma:20200625122520j:plain

 

もっちりした歯ごたえときれいな食感、小豆の風味を舌の上で楽しむ。

 

目を閉じると、なんだか京都にいる気分になってきた。

 

所在地 埼玉・東松山市本町1-9

最寄駅 東武東上線東松山駅から歩約10分

 

 

             f:id:yskanuma:20200625122720j:plain

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日光水ようかん」食べ比べてみた

 

待ってました!と、裏声で掛け声をかけたくなる。

 

冷た~い水ようかんの美味しい季節である。

 

コロナで外出制限があるが、県またぎも明日解除される。

 

なので、前祝い

f:id:yskanuma:20200618170350j:plain

 

福井や小城市など羊羹や水ようかんの町は全国にいくつかあるが、水ようかんのレベルや質を考えると、私のイチオシは日光である。

 

日光東照宮への参道をブラ歩きすると、水ようかんの古い看板が7~8軒ほど見えてくる。歴史的に見ても、一か所にこれだけのようかん屋さんが密集している場所は多分、ここだけだと思う。

 

片っ端から食べ歩きしたいが、水ようかんは日持ちがせいぜい3~5日なので、そうもいかない。悲しいかな、予算もある。

f:id:yskanuma:20200618163139j:plain

f:id:yskanuma:20200618163250j:plain

 

なので、今回は中でも一番古い歴史をもつ「綿半(わたはん)」(創業天明7年=1787年、写真上)と人気上位の「鬼平(きびら)」(創業大正末、写真下)を買い求めて、自宅で賞味することにした。

 

究極の二択、と決め打ちした。「ひしや」も入れたかったが、10年ほど前に休業してしまった(こんなに悲しいことはない)。

 

「綿半」のものは5本入り(税込み760円)、「鬼平」も5本入り(同750円)。

f:id:yskanuma:20200618163527j:plain

 

綿半はモスグリーンの包装としっかりした紙箱、鬼平は明るいブルーと簡易な紙箱の違いはあるが、それ以上に見た目の色と食感が明らかに違う。

f:id:yskanuma:20200618163624j:plain

f:id:yskanuma:20200618163659j:plain

 

比較すると、違いがよくわかる。

 

まず綿半から。きれいな、深みのある小倉色で、重さも少し重い。

f:id:yskanuma:20200618163934j:plain

 

日光で最初に練り羊羹を作った店でもあり、技術がしっかりしている印象。

 

こしあんと寒天の割合が絶妙で、むしろこしあんに比重があると思う。

f:id:yskanuma:20200618164115j:plain

f:id:yskanuma:20200618165056j:plain

 

上品なほどよい甘さで、舌触りはなめらか。こしあんの粒子も感じる。塩気のほんのり具合も穏やかで、深く長めの余韻がしばらく舌の上に残る。

f:id:yskanuma:20200618164243j:plain

 

こしあん好き派には「うめえ」と吐息が漏れる味わいだと思う。

 

たまたまいらっしゃったご高齢の7代目女将によると、小豆は北海道産、砂糖は上白糖を使用、「寒天を多くし過ぎないようにしてます」とか。

 

隣の鬼平(下の写真)は、色がまず綿半より黒っぽい。寒天の存在がより前面に出ていて、光が当たると白っぽく透き通って見える。こしあんの存在がその分薄くなり、味わいはみずみずしくなる。清流の水ようかん、といった感じ。

f:id:yskanuma:20200618164353j:plain

 

甘さがかなり抑えてあり、口どけがとてもいい。

 

あっさり系の水ようかん、とも言える。福井の水ようかんにも近い感じで、より寒天を感じたい人には「たまらない」水ようかんだと思う。

f:id:yskanuma:20200618164448j:plain

 

「日光周辺では昔から水ようかんが各家庭で作られていて、冬の楽しみだったんです。それを商品として売り出したのはウチが最初です。煉り羊羹はもっと昔からありましたけど」(鬼平3代目女将さん)

f:id:yskanuma:20200618164550j:plain

f:id:yskanuma:20200618164820j:plain

 

鬼平も小豆は北海道産、砂糖は上白糖を使用。それに塩。綿半とほとんど同じ材料を使って毎朝早くから水ようかんを作っているのに、仕上がりはそれぞれの特徴が出てくる。ライバルとしての自負も出てくる。

 

蒸し羊羹から派生した、寒天を使った煉り羊羹が登場したのは江戸時代寛政年間(1789~1801年)といわれる(諸説ある)。

 

幕府の菓子司「大久保主水」で修業した喜太郎(「紅谷志津摩」初代という説もある)が江戸日本橋に店を出し、それが話題を呼び、人気を集めていった。

f:id:yskanuma:20200618170646j:plain

 

寒天を使った水ようかんも同じくらいの歴史があるようだ。煉り羊羹ほど日持ちしないのと比較的簡単に作れるので、冬のスイーツとして、徐々に広がっていったようだ。

 

全国的な人気になったのは明治に入ってからではないか。開国で砂糖の解禁が進み、和洋菓子屋さんの数が急激に増えて、同時に水ようかんの地位も高まっていった。

 

日光の水ようかんが東照大権現徳川家康)の足元で生き残り、和スイーツの聖地化しているのは偶然ではない、と思う。

 

家康も実は和菓子好き、大のまんじゅう好きだった。

 

あんこ好きにとっても大権現なのである。

 

所在地 「綿半大通り店」栃木・日光市下鉢石町799

    「鬼平の羊羹本舗」栃木・日光市中鉢石町898

最寄駅 東武日光駅から歩約10~15分

 

 

              f:id:yskanuma:20200618165616j:plain



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秩父の「グレイトあんこ」5種

 

コロナで外出自粛のはずが、スチール(盗塁)してしまった。

 

ひょっとして夢の中の出来事かもしれない(笑)。

f:id:yskanuma:20200611144723j:plain

 

埼玉・秩父老舗和菓子屋「江原本店」の白い暖簾をくぐる。

 

「大正11年創業」(1922年)の文字がさり気ない。

f:id:yskanuma:20200611144831j:plain

 

入った瞬間、自家製の生菓子がシンプルに並べられていて、いい店だとわかった。2年ほど前に建て替えたようで、平屋建てで新しい。

 

単なる和菓子屋ではない。製餡業も営んでいて、私がかつて感動した水ようかんもここのあんこを使っているようだ。

 

秩父地方の郷土まんじゅう「すまんじゅう」(つぶ、こし 税込み100円)、「茶まんじゅう」(同70円)、「草もち」(同100円)、「栗どら焼き」(同150円)を買い求め、3代目ご夫妻とご子息の4代目とあれこれ雑談しながら、その翌日、自宅で冷たい麦茶を用意して、賞味となった。

f:id:yskanuma:20200611145952j:plain

 

あんこ旅みょうりに尽きる。コロナもどこかに消えている。

 

まずは「すまんじゅう」。「す」の意味は諸説あるが「酢」ではなく「素」のようだ。

f:id:yskanuma:20200611150110j:plain

 

糀(こうじ)を使った酒饅頭で、店によって形が違う。「江原本店」のものは平べったくて大きめ。

 

皮からいい糀の香りがする。

f:id:yskanuma:20200611150152j:plain

f:id:yskanuma:20200611150230j:plain

f:id:yskanuma:20200611150301j:plain

 

蒸かし立て作り立てが一番美味い。だが、個人的な事情で賞味が翌日午前になってしまった。添加物類は一切使っていないので、皮が少しパサついていた。

 

後悔先に立たず。

 

店主に教えれた通り、レンジでチンしたら、絶妙な美味さに変わった。

 

あんこは少なめ。こしあんよりつぶあんの方が塩気がやや強めで、いい小豆の風味が口中でふわりと開花してきた。あんこの量がもっとあれば、文句のつけようがない美味さだと思う。

 

一個100円がコスパの凄さを醸し出している。

f:id:yskanuma:20200611150442j:plain

 

「茶まんじゅう」が気に入った。こしあんのボリューム、しっとりとした美味さが際立っている。70円が信じられない。

 

「草もち」はきな粉が表面にかかっていて、本物感を漂わせていた。

f:id:yskanuma:20200611150528j:plain

 

悲しいことにこちらもはや固くなり始めていた。レンジでチンしたら、草もちの柔らかさと中のつぶしあんが絶妙に変わった。甘さを抑えていて、ほんわか感が立ってくる。

f:id:yskanuma:20200611150605j:plain

 

繰り返すが、生菓子は翌日に持ち越してはいけない。反省あんこ。

 

「江原本店」はあんこ屋さんでもあるので、あんこのこだわりと種類が多い。

 

3代目によると、建て替える前は薪(まき)であんこを炊いていたという。驚き。

 

北海道産、神奈川産など国産小豆を使用、砂糖も中ザラ、グラニュー糖を使い分けているという。あんこ職人のこだわりがわかる。

f:id:yskanuma:20200611150727j:plain



締めの「栗どら焼き」に手が伸びる。

 

これが予想を超えた味わいだった。「日本橋うさぎや」ほど大きくはないが、皮の濃い目の焼き色、甘い香り、ふくよかなしっとり感が上質。

f:id:yskanuma:20200611150758j:plain

f:id:yskanuma:20200611150835j:plain

 

何よりも中のつぶあんが艶やかに炊かれてて、抑えられた甘さ、きれいな風味、ほのかな塩気が三位一体の味わいで、栗どら焼き番付で行ったら、コスパ的にも三役以上はゆうに行くと思う。

 

秩父にはいい和菓子屋が多い。コロナで人通りの少ない街中を歩きながら、この地方の総鎮守・秩父神社まで足を運ぶ。

 

茅の輪くぐりをして、コロナ疫病除けをお祈りした。

 

遠くであんこの神様も微笑んだ気がするのだった。早く食べなさい、と。

 

所在地 埼玉・秩父市大畑町8-9

最寄駅 秩父本線大野原駅から歩約5分

 

 

               f:id:yskanuma:20200611144947j:plain

 

 

 

 

 

 

 

 

涼!金沢の「生麩まんじゅう」

 

コロナと暑さでときどき「わあー」と叫びたくなる。

 

ゴジラ一歩手前状態(笑)。危ないアブナイ。

 

なので、今回取り上げるのは、頭を静めるのに適した涼やかな生菓子です。

f:id:yskanuma:20200604124352j:plain

 

まだ遠出できないので、お取り寄せ。

 

慶応元年(1965年)創業、加賀麩の老舗「不室屋(ふむろや)」の「生麩まんじゅう」がターゲットです。

 

オンラインで注文、自宅に届いたのは2日後。

f:id:yskanuma:20200604124534j:plain

 

実物を見ただけで、涼風が脳内を通り抜けていく。生菓子一つで世界が変わることだってある・・・まさか?

f:id:yskanuma:20200604124648j:plain

 

10ケ入り(税込み2376円)。クール便(冷凍)なので、送料がプラス1045円かかる。

 

すぐに冷蔵庫に入れ、約4時間かけて、ゆっくりと解凍する。

 

みずみずしいクマ笹で三角形に包まれていて、それをていねいに取ると、主役が現れた。

f:id:yskanuma:20200604124729j:plain

f:id:yskanuma:20200604124759j:plain

 

笹の香りとともに、うっすらと若草色の麩まんじゅうは、宝石のようにつややかで、しかもみずみずしい。清流から抜け出てきたような印象。

f:id:yskanuma:20200604124842j:plain

 

のりを練り込んでいる? 

 

「いいえヨモギなんですよ」(不室屋)

 

口当たりの食感はつるりとしていて、ぷにゅりとした、柔らかな歯触りと上質の生麩の香りが広がってくる。ヨモギの香りはかすかにする程度。

f:id:yskanuma:20200604124927j:plain

 

中のあんこはこしあん。濃い藤紫色に吸い寄せられる。

f:id:yskanuma:20200604125112j:plain

f:id:yskanuma:20200604125151j:plain

 

麩まんじゅうの元祖・京都「麩嘉(ふうき)」こしあんなので、これはいわば麩まんじゅうの本流の形と言えそうだ。

 

こしあんはなめらかな舌触りといい、芳醇できれいな小豆の風味(大納言小豆?)といい、控えめな甘さといい、京都に次ぐ和菓子の街・金沢の奥行きを感じさせるものだと思う。

f:id:yskanuma:20200604125248j:plain

 

砂糖はグラニュー糖を使用している。

 

冷たい麦茶で舌を洗いながら、2個ゆっくりと味わう。

 

コロナ包囲網の中で、小さな黄金の時間が過ぎていく。

 

皮には餅粉も加えているので、もっちり感も十分にあるが、思ったほど手にも歯にもくっつかない。

f:id:yskanuma:20200604125537j:plain

 

笹の香り、生麩、こしあん・・・絶妙な上質の交錯だと思う。

 

すーっと抜けていく余韻がきれい。

 

あんこの恋愛に例えると、「後朝(きぬぎぬ)の別れ」という言葉をつい連想してしまう。

f:id:yskanuma:20200604125632j:plain

 

生麩の歴史は古く、精進料理として、中国から入ってきたようだ。それが日本で洗練され、千利休も茶会では麩料理を使っている。

 

だが、生麩にこしあんを入れたのは、歴史的にはそう古くはない。

f:id:yskanuma:20200604125730j:plain

 

スイーツ好きだった明治天皇のたっての依頼で、「麩嘉」が作ったのが最初と言われている。

 

明治天皇山岡鉄舟を通じて、銀座木村屋のあんぱんもよく所望したというエピソードも残っている。大のあんこ好きだったようだ。

 

約2年前、あんこ旅で金沢を訪れた時、「加賀麩 不室屋」(尾張町店)の黒暖簾と蔵造りの佇まいがとても印象に残った。

f:id:yskanuma:20200604125940j:plain

 

その時はたまたま都合がつかず、中で麩まんじゅうを食べそこねてしまった。

 

写真だけ撮り、次の機会に来ようと立ち去ったが、その後コロナなどで行くことがかなわず、その恨み(?)が今回のお取り寄せとなった。

 

つまり、2年越しの甘いご対面となったわけである。

 

所在地尾張町店) 石川・金沢市尾張町2-3-1

 

〈お取り寄せ〉

生麩まんじゅう(10ケ入り)税込み2376円

(別途送料 1045円)

合計 3421円なり

 

 

                                                  f:id:yskanuma:20200604130413j:plain

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新型!五色のあんこ玉とテリーヌ

 

アベノマスクはいらない、ドラえもんどこでもドアが欲しい!

 

と喚いても始まらない。

 

コロナがなければ旅する予定だった岡山にも行けず、松山、松江もしばらくは虹の彼方。

 

なので、「新しいあんこ生活」に切り替え、お取り寄せにハマることにした。

 

目を付けたのがこれ。

f:id:yskanuma:20200528181943j:plain

 

おそらく、今、もっとも挑戦的なポジションにいる老舗の一つ、愛媛・松山市「石田製餡所」(創業大正13年)が始めた実験店「アン・パティスリー七日」伊予市)の逸品を二つお取り寄せした。

 

「七日のひと口餡子」(左)「餡とチョコのテリーヌ」(右)である。

f:id:yskanuma:20200528180735j:plain

 

あんこの最前線という意味で取り上げることにした。

 

「餡とチョコのテリーヌ」は物珍しさからテレビでも紹介され、あんこ好きを驚かせた逸品だが、「七日のひと口餡子(あんこ)」はデビューしたのが3か月ほど前でもっとも新しい。

 

店名の「七日」の意味は、「あんこが一番おいしい期間が七日間」から来ているとか(異論もあるかもしれないが)。

f:id:yskanuma:20200528181005j:plain

 

パッケージも凝っていて、グレーの厚手の包装紙を取ると、木箱が現れ、その中に5種類のあんこ玉×2が収まっていた。

f:id:yskanuma:20200528181039j:plain

 

これって和菓子? 洋菓子? ジャンル分けなどどちらでもいい?

 

パステルカラーが5つ。それが2列。う・つ・く・し・い。

 

写真左からラムネ餡いよかん桃餡朱鞠(しゅまり)餡ミルクとコーヒー餡の5種類。

f:id:yskanuma:20200528180413j:plain



 

形は直径35ミリほどのあんこ玉だが、イメージが追いつかない。

 

表面には透明な寒天が膜のようにテカっていて、中のきれいな創作あんこを包み込んでいる。朱鞠餡以外は白いんげんをベースにしたこしあんで、それぞれの風味をクチナシなどで淡く着色している。

f:id:yskanuma:20200528181743j:plain

 

自粛疲れの目がきゅーっと持っていかれそうになる(危ないアブナイ)。

 

あんこ原理主義の私にとっては、評価に戸惑う世界だが、むくむくと沸き起こる好奇心が抑えられない。

 

点数を付けるのは失礼だが、意外という意味で、個人的にもっとも気に入ったのは空色のラムネ餡。90点くらい。

f:id:yskanuma:20200528182148j:plain

 

しっとりとなめらかな、さわやかささえ感じる舌触り。白あんのほどよい甘さ。

 

白いんげんとラムネの風味がミスマッチではないのが不思議。頂上にレモンがチョコンと乗っている。青空に抜けていくような、詩的な余韻がしばらく舌の上に残ったまま。そんな感じかな。

 

使用している砂糖はグラニュー糖で、上品な淡い味わいだと思う。

 

製餡所の技術とパティシエの技術がうまく溶け合っているようだ。

f:id:yskanuma:20200528182304j:plain

 

桃の香りが広がる桃餡、いよかん餡のみずみずしい果実味、ミルクとコーヒー餡の深みも楽しめるいいレベルだと思う。

 

最もベーシックな朱鞠餡(しゅまりあん)は、この製餡所の力がよくわかる。

f:id:yskanuma:20200528182439j:plain

 

えりも小豆ではなく、朱鞠小豆(おそらく北海道・美瑛産)を使っているのがこだわりの強さを感じる。紫がかった色と上品でふくよかな風味が特徴で、さらに渋抜きをしっかりしているので、雑味がない。上生菓子こしあん

 

私は渋抜きをある程度抑えた、雑味のある素朴なあんこも大好きなので、少し物足りない感もあるが、この上品さは悪くはない。

 

「餡とチョコのテリーヌ」も書いておきたい。

f:id:yskanuma:20200528182719j:plain

 

石田製餡所4代目が創業百年を前に「新しいあんこの可能性」を追求して、2017年11月に伊予市に「アン・パティスリー七日」をオープンさせた。

 

その際にパティシエを迎え入れ、試行錯誤の末に目玉として作ったのがこの「餡とチョコのテリーヌ」。

 

むしろ新しい和スイーツと言った方がいいかもしれない。

f:id:yskanuma:20200528182531j:plain

 

一本の重さは293グラム。長さは127ミリ、幅53ミリ、厚さは36ミリほど。

 

パッケージを取ると、生チョコそのもののようで、上質の国産チョコレートの香りが強烈に吹き上がってくる。

f:id:yskanuma:20200528182851j:plain

f:id:yskanuma:20200528183008j:plain

 

包丁で切るのに苦労するほどチョコテリーヌがべたっとくっついてくる。

 

どこにあんこがあるのか一瞬わからなくなるほど、食感も味わいも重厚なチョコレートのテリーヌそのもの。

 

だが、よく見ると、真ん中に直径2センチほどのこしあんが筒状に詰まっている。

f:id:yskanuma:20200528183123j:plain

 

これも朱鞠小豆のこしあんで、注意深く舌先で探らないと、チョコテリーヌの濃厚に押しつぶされてしまう。こしあんがんばれ、と声をかけたくなった。

 

「岩塩をつけて食べると美味しい」と書いてあったので、その通りにしてみると、確かに美味さにインパクトが出てきた。

f:id:yskanuma:20200528183324j:plain

 

イケる! これってアイデアものだと思う。

 

とはいえ。

 

チョコレート好きにはたまらない味わいだが、あんこの存在が薄すぎると感じるのはあんこ原理主義者ゆえかもしれない。

f:id:yskanuma:20200528183432j:plain

 

個人的にはあんこの量を2倍くらいにして、チョコレートの量をもう少し減らせば、あんことチョコの大恋愛も「あんビリーバボー!」と拍手したくなるのだが(あくまでも個人的には、です)。

 

ここであん考。あんこが世界に出ていく。新しいファンを開拓する・・・この新しい、ビビッドなあんこのチャレンジ精神と可能性に注目していきたい。

 

所在地(アン・パティスリー七日) 

愛媛・伊予市米湊710-1

〈お取り寄せ) 

七日のひと口餡子 税込み1188円

餡とチョコのテリーヌ 同2160円

(別途送料 クール便1320円、代引き手数料330円)

今回の総合計支出 4998円なり

 

 

               f:id:yskanuma:20200528183822j:plain