週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

究極か?奥秩父「幻の草もち」

 

編集長「今日はうれしいよ。奥秩父で見つけたとんでもない草餅を紹介できる」

 

あん子「また編集長のオーバー癖が始まった。過剰も過ぎると誰も相手にしなくなるわよ。と言いたいところだけど、今回はホントだった(笑)。私も驚いたから」

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編集長「おばあちゃんがやってる昭和レトロな店で、食べる前は田舎の素朴な草餅だとまあ、軽く考えてた。あんこも渋切りをほとんどしない、野暮ったい粒あんだろうな、と思ってた。ところがどっこい・・・

 

あん子「ああ、じれったい。早く次行きましょ。草餅大好きの変なヘン集長の食レポ、聞いてあげるわよ」 

 

編集長「編の字が違うよ(汗)。今回はそのメーンともう一軒、小鹿野町の別の店の草餅(粒あんこしあん)も取り上げ、秩父の草餅対決にしたい。着地が決まったね」

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あん子「対決好きに付ける薬はないわ。和菓子って対決するもんじゃないのに・・・困ったクセねえ」

 

【今週のメーン】

幻級の草餅、柴崎製菓「草もち」

 

この草餅の存在を知ったのは5年ほど前。知人からの情報。添加物はゼロ、「すべて早朝の手作りで、作る数が限られているので、朝並べるとすぐに売り切れてしまう。幻の草餅って呼ぶ人もいる」というものだった。

 

何とか電話がつながり、今回、ようやくゲットすることができた。田舎のおばあちゃんが作る草餅。食べなくても想像がつく。まあ気が向いたら食べに行こう・・・本音で言うと、かなり遠いので、半分忘れかけていた。

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「天空の神社」三峯神社に行く用があり、なかなかつながらず、3度ほど電話してようやく予約、期待半分でご対面となった。コロナの影響で客足が落ちているのもラッキーだった(?)。

 

「草もち」のノボリがひるがえり、かなりご高齢の女将さんが一人。少し前までは栃餅なども売っていたが、他のものは止め、現在は「草もち」一本勝負とか。

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店内は暗めで、写真撮影は「汚いから」とダメ出しを食らってしまった(遠慮深いが、当然とも言える)。

 

「風邪が流行ってからはお客が減った」

 

とボヤキ節も出たが、創業年などは「昔からやってる」とだけで、教えてくれなかったが、「柴崎製菓」の店名でわかるように、元々はフツーの和菓子屋さんだったようだ。「風邪」がコロナのことだとわかるまで少し時間がかかった。

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「今日中に早めに食べてくださいよ。すぐ固くなるから」

 

賞味期限は本日中。1パック(6個、税込み600円)を買い求め、夕方自宅に戻ってから、いよいよもぐもぐタイムとなった。

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餅粉がかかったお姿はよもぎの色がきれい。重さは手作り感がマックスで、一個ずつ微妙に違う。58グラムから62グラム。

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搗(つ)き立てから約6時間後、手に持つと餅の柔らかい感触がしっくり来た。意外だが、よく見ると、よもぎの鮮度が繊細で美しい。

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中の粒あんがこれまでの想像を超えていた。透明感のある藤色の小倉あん。小豆の形はしっかり見えるのに、羽毛のように柔らかい。

 

しっとりととろみのあるあんこで、小豆の中の呉(中身)の白い透明感が砂糖の愛で、くねくねと身をよじらせているような(表現がヘンかな?)。ありそうであまりないあんこだと思う。それがたっぷり。

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よもぎ餅は表面がほんの少し固くなりつつあったが、羽二重餅のように柔らかい。

 

最初のひと口でやられてしまった。

 

あんこの塩気がストレートに来た。いやな塩気ではない。きれいな、あまりにきれいな塩気。

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すぐ後から、とろみのある粒あんが口中に放射状に広がるのがわかった。

 

えー。

 

うまく表現できないほどの、質の高い、素朴とはほど遠い、むしろ特別な洗練を感じる粒あん。繊細な柔らかさ。

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甘さも絶妙にほどよい。このあんこの美味さ、京都の上生菓子屋の粒あんを思い出したほど。

 

これは別格の草餅だと思う。

 

秩父にこんな草餅が隠れていたなんて(別に隠れていたわけではない)。

 

これまで食べた草餅の中では浅草・向島の「志”まん草餅」に匹敵する抜けるような味わいだと思った。幸せあんこ。好みの問題だが、あるいはあんこはこちらの方がゼロコンマですごいかも(体調の関係かも)。

 

断片的に取材したこと。

 

小豆は北海道十勝産。砂糖はグラニュー糖。完全自家製。よもぎはひょっとして手摘みかと思ったが「体がもたないよ」でどうやら問屋さんから仕入れているようだ。餅も自家製。

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おばあちゃん女将がまさか一人で作っている?と聞いたら、「この年じゃ無理だよ」で、何人か(ご家族?)で手作業しているようだ。一個一個大きさが微妙に違うのもこれで納得。

 

それにしても凄い草餅で、事前の田舎⇒素朴⇒それなり、の図式が狂った。脱帽いたします。

 

【今週のサブメーン】

「和菓子 かのうや」の草もち

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小鹿野町で戦後創業。現在2代目。饅頭から大福、練り羊羹まで幅広いラインアップ。草餅は粒あん」と「こしあん。どちらも税込み110円。

 

柴崎製菓の草もちよりも平たく大きい。重さも87グラムほど。

 

きな粉がかかっているのが特徴。

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粒あんよりもこしあんの方が個人的には美味かった。こちらもあんこは自家製で、北海道産小豆と上白糖、塩で素朴にまとめている。

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編集長「柴崎製菓が凄すぎて、比べるのが違う気がする。こちらもフツーに美味い。特にこしあんはしっとり感といい、ふくよかさといい上質だな」

 

あん子「柴崎製菓の草もちはひと味違うのは確かね。塩草もち、と言いたいくらい塩気が強いけど、なんて表現したらいいのか、雑味がない、ピュアな美味さ。編集長も最初は小バカにしてたけど、食べたら、目がまん丸になってたわよ(笑)」

 

編集長「小バカにはしてないよ。でもまあ、今回は秩父の和菓子の底力を感じたなあ。かのうやもいいレベルだと思うよ。今回の教訓。思い込みは世界を見間違える」

 

あん子「ダメね、思い込みが強すぎるのよ。ようやく自分の欠点を理解したのね」

 

編集長「編集長を交代したくなってきた・・・」

 

●所在地 

「柴崎製菓」 埼玉・秩父市荒川白久1567-1

「和菓子 かのうや」 秩父郡小鹿野町小鹿野404-11

 

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超絶いちご大福「粒あんvs白あん」

 

編集長「フルーツ大福がすごいことになってるね」

 

あん子「何をいまさらって感じ。大阪の話でしょ?」

 

編集長「知ってた? 堺の一心堂

 

あん子「情報が遅すぎる。季節限定も入れて、この時期は10~14種類よ。マンゴーからマスクメロン、スイカまであるわよ」

 

編集長「クール便で届いて、届いたその日が賞味期限というのもちょっと驚いた」

 

あん子「かったるい。話をすすめましょ。お取り寄せしたんでしょ?」

 

編集長「はい・・・遅まきながら(汗)」

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【今週のメーン】

 完熟いちご大福粒あんvs白あん

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1980年代にすい星のごとく登場した「いちご大福」は今では置かない和菓子屋さんを探すのが難しいくらい。

 

大阪・堺に本店がある「一心堂」のいちご大福はミルクあんも含めると3種類ある。

 

元々は昭和30年(1955年)創業の町の和菓子屋さんだったが、京都で修業した2代目が継いでから、フルーツ大福をメーンに押し出し、阪急うめだ、あべのハルカス近鉄、神戸阪急に支店を出すほどの人気となっている。メディアで取り上げられることも多い。

 

ホントなら全種類お取り寄せしたいが、フトコロ事情とイブクロ事情でどうしようかと迷っていたところに4種類のお取り寄せの存在を知り、注文した。

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4種類は「完熟いちご大福」が2種類。白あんと粒あん。それにパイナップル大福とモンブラン大福。宅急便で届いたら、その日のうちに食べなければならない。

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編集長「やっぱり主役はいちご大福だね。紙箱を開けた瞬間、パステルカラーが4種類。くすぐり方が上手い。いちご大福は朝摘みしたという完熟いちご、本店に直撃したら、この時期はあまおうを使ってます、とか」

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あん子「話が長~い。私が気に入ったのは白あん(右)。北海道産手亡(てぼう)のこしあんで、手にくっつくほどの柔らかな求肥餅、糖度の高いあまおうとのマッチングがばっちし。粒あんもいいけど、余韻のきれいさとみずみずしさが抜けてる」

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編集長「フツーなら粒あん好きのわたくしも四分六分で賛成かな。粒あん丹波大納言を使ってるようだけど、この組み合わせだと北海道の手亡に軍配てとこだね。単に好みの問題だけど」

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あん子「餡作りに使う砂糖はどうなってるの? ちゃんと取材したんでしょ?」

 

編集長「どっちが編集長かわからなくなってきたよ。もちろんだよ。基本はラニュー糖で、それに商品によって数種類使い分けてるとか。餡の甘さがきれいなのはそのせいだよ。ついでに初心を忘れない、フルーツ大福も手包みで、職人気質が生きてるのも評価できるね」

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あん子「価格は安くないけど、フツーなら店に行かないと買えない生菓子を冷凍でお取り寄せできるようにしたこともそれなりに評価できるわね」

 

編集長「エラソーに(笑)。税込みだと1個400円近くなるのはビンボー編集長にはつらい。今回は楽天でお取り寄せしたけど、計算してみたら、そう安くはないかな」

 

あん子「天にも昇るほどうめえーって叫んでたくせに。ぼやかないぼやかない」

 

編集長「名ばかりとはいえ、編集長はつらいよ(ウソです)」

 

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【今週のサブメーン】

 

パイナップル大福。いちご大福よりも一回りデカい。重量は約110グラム。こちらも白あん。パイナップルはフィリピン産のハニーだそうで、ごろっと入っている。みずみずしく甘い。個人的にはパイナップルの存在が目立ち過ぎで、白あんが隠れてしまっているのが少し残念。

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モンブラン大福。渋皮ごと蜜煮した国産栗が丸ごと一個入っていて、その周りを栗あんと生クリームが薄く包んでいる。栗好きにはたまらないが、フルーツ大福の中では地味すぎる。それが長所かもしれないが。

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一心堂本店 大阪・堺市東区日置荘原寺町19-7

 

●今回のお取り寄せ

 

フルーツ大福4種お試しセット(楽天から)

 合計2500円(消費税、送料込み)

 

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トリュフ?絶品「こしあんわらび餅」

 

歴史のある町にはいい和菓子屋が多い。

 

古河公方で知られる、茨城・古河で出会ったのが、「御菓子司 はつせ」の「わらび餅」こしあん入り)だった。

 

まずその色に心がときめいた。

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きな粉がかかっているのが定番だが、ここのは少し違った。

 

これってチョコレートトリュフではないか?

 

そう錯覚しそうな、濃い焦がしきな粉がたっぷりかかっていた。

 

「珍しいですね」

 

感じのいい女性スタッフに言うと、「よく言われます」とほほ笑んだ。

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一箱10個入りが置かれていたが、「1個からでも大丈夫ですよ」。

 

ここが日本の和菓子屋さんのいいところで、京都の老舗でも同じ対応をしてくれることが多い。敷居が高くない。

 

添加物ゼロなので、日持ちしない

 

まずは6個(税別120円×6)をゲット。

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花桃と桜が満開だった古河総合公園帰りだったこともあり、わらび餅の隣に可憐に咲いていた(残り1個だった)「桜まんじゅう」(税別130円)、それにこの店の目玉でもある「しら玉」(同75円×2)、大納言小豆の「さざれ石」(同130円)も買い求めた。

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台湾帰りの友人からもらった「凍頂ウーロン茶」で賞味することにした。このマッチングは悪くない、と思う。

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焦がしきな粉がたっぷりかかったわらび餅は、フツーのきな粉よりも香ばしさが口の中で立ってくる。ホントです。

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本わらび粉を使ったわらび餅の質の高さと、中のこしあんの美味さが半端ではない。ぷるるん感とみずみずしいこしあん

 

北海道十勝産小豆のそよ風に舌がしびれる。

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こしあんも自家製。

 

濃い藤色のなめらかな、上質のこしあん

 

ほどよい甘さと口どけの素晴らしさ

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焦がしきな粉の風味がしばらくの間、口内にとどまる。

 

これはたまらん、たまらんのう・・・そうつぶやきたくなる。

 

店の創業は昭和33年(1958年)で、現在2代目。

 

食べ終えてから気になって、追加取材すると、2代目は東京・赤坂の御菓子司「塩野」で修業したお方だった。

 

レベルの高さになるほど、と納得。

 

高ビーでないことも好感。

 

古河公方は鎌倉から来たが、ここは赤坂経由で来た、ということになる。

 

ちなみに以前私が感動した群馬・桐生の「御菓子司 あら木」の店主も「塩野」の出だった。塩野、恐るべし。

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残り一個となっていた「桜まんじゅう」は皮につくね芋を使った薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)で、中はきれいなこしあん

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皮の清涼感といい、こしあんの口どけといい、文句のつけようがない。

 

塩漬けした桜の花びらの香りが余韻を彩る。

 

「しら玉」はウズラの卵大の小ぶりで、外側をホワイトチョコレートのようなミルクでコーティング、中のあんこは白あんに黄身を練り込んだような、洋菓子の要素も取り入れた逸品だと思う。

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口に入れたとたん、スーッと溶けていく感覚にちょっと驚く。クリーミーさ、マックスだよ。

 

大納言小豆の「さざれ石」も表面の糖化したじゃりじゃり感がイケた。

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改めてあんこの神様にかしわ手・・・だからあんこ旅はやめられない。

 

所在地 茨城・古河市横山町1-14-12

最寄駅 JR宇都宮線古河駅から歩約6分

 

 

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京都と江戸の遺伝子、大納言小豆のロール

 

あんこ好きにはたまらない逸品と鉄道ファンのメッカ、栃木・真岡(もおか)で出会った。「めっけ!」の気分。

 

これだからあんこ旅は止められない。

 

ぜいたくな丹波大納言をじっくりとブレンドした小倉あんこしあんの時雨(しぐれ)で渦巻き状に巻いたもの。

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菓名は「真岡しぐれ」、1本1520円(税込み)。

 

タネを明かせば、私がずっと追っている江戸幕府の終えんとともに暖簾をたたんだ御菓子司の一つ「紅谷志津摩(べにやしづま)」の流れを汲むかもしれない和菓子屋「紅谷三宅」を訪ねたときに偶然見つけたもの。

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いちご大福や草餅、かわいい動物の煉り切りが目玉の和菓子屋さんで、地元では有名な店だった。

 

正午過ぎに着いて、店内をのぞいてみたら、いちご大福はきれいに売り切れていた。和菓子だけでなく洋菓子も並んでいた。

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いい店構えのセンスのいい店で、感じのいい女性(2代目の奥さんだった)と話すうちに、「真岡しぐれ」の存在に気づいた。

 

京都の老舗、俵屋吉富の「雲龍(うんりゅう)」鶴屋吉信の「京観世(きょうかんぜ)」と同系の凝った和菓子で、信州・松本「開運堂」の「老松(おいまつ)」も連想させた。

 

腕がないととても作れない、これがかなりの感動ものだった。

 

人気だという「栗ふくさ」(税込み280円)と黄身時雨(同200円)も買い求め、店主は仕事中ということで、話を聞くのは断念して、店を後にした。

 

翌日、自宅に帰ってから賞味した。

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一本の重さは539グラムもある。手に持つとズシリと来た。大きさは200ミリ×55ミリ×45ミリ。

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何よりも外側は見事な紫色の時雨(しぐれ)で、丹波大納言小豆を練り込んだ小倉あんが渦巻き状になっていた。ロール状のあんこスイーツと言ってもいいと思う。

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京都の粋の遺伝子が頭の中にぐるぐると回った。真岡でまさかの出会いということになる。

 

コーヒーを淹れ、包丁で切ってから、口に入れる。

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外側の時雨(しぐれ)の口どけの良さ。きれいなこしあんの風味が広がる。

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丹波大納言のふくよかな小倉あんと溶け合うと、何だかここはあるいは極楽か、と思いたくなる。

 

素晴らしきまったり感。

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砂糖は白ザラメを使っているようだ。甘さがほどよく整えられている。

 

あんこはすべて自家製

 

栗ふくさも黄身しぐれも上質な美味さ。

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店の創業は平成2年(1990年)。2代目の奥さんによると、初代が東京の「紅谷」で修業したとか。それが紅谷志津摩の流れを汲む和菓子屋さんのようだ。

 

私がこれまで食べた紅谷系の中で、個人的に最もすごいと思ったのは「青山紅谷」で、創業は大正12年(1923年)。シンプルな上菓子屋さんだった(ちなみにすぐ近くの珠玉の名店「まめ」が3月27日で店をたたむ。すごい店なので、とても残念)。

 

「紅谷三宅」と「青山紅谷」の関係は不明だが、私にとっては「紅谷」の名前が残っていることがうれしい。

 

コロナ禍の夢の時間。

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京都と江戸のあんこ遺伝子が口の中で、くんずほぐれつ、ぶつかり合い、合体し、溶け合いながら昇天していく。

 

脳内エンドルフィン、全開だよ。

 

たまらない。

 

所在地 栃木・真岡市並木町2-20-15

最寄駅 真岡鉄道真岡駅から歩いて約7分

 

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相模原の宝石だよ「栗蒸し」に驚く

 

神奈川・相模原周辺は酒饅頭の町でもある。

 

東京・荻窪の高橋、日光の湯沢屋など、これまで職人の手の匂いのする酒饅頭を食べ、その糀(こうじ)の香りのする皮とあんこに胸が躍った。

 

美味しい酒饅頭は美味しい(このロジック、ヘンだ)。

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酒饅頭の歴史は遠く鎌倉時代までさかのぼるが、ここでは長くなるので省く(書きたいけど残念😂)。

 

たまたま橋本駅ちかくで、地元でも有名な和菓子屋さんをのぞいてみた。

 

「御菓子司 志美津屋(しみずや)」の看板と饅頭をデザイン化した屋号。酒まんじゅうの文字も見えた。

 

大きくはないが、隙のない、いい店構え。

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季節のいちご大福やうぐいす餅、豆大福から上生菓子まで作っている。

 

だが、いちご大福もうぐいす餅も売り切れていた。きれいな女性(3代目若女将だった)が申し訳なさそうな表情をした。

 

「酒饅頭はありますか?」

 

「はい」と言って奥に引っ込んでから、つぶあんとみそあんがありますが」と聞いてきた。「両方ください」と私。

 

「本日中にお召し上がりください」

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その二品(税込み 各120円)と「栗むし羊羹」(同 260円)、「栗どら焼き」(同 170円)を買い求めた。

 

最も驚いたのが、たいして期待せずに買った「栗むし羊羹」だった。

 

夕方自宅に戻り、賞味の時間。

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小ぶりだが、きれいな栗(国産)が多分1個分以上、どかどかと入っていて、上品な藤紫色の蒸し羊羹とのコラボが絶妙の予感。

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口に入れた瞬間、蜜煮した栗と蒸し羊羹がスーッと溶けていくのがわかった。

 

このスーッに舌先がびっくり(舌にだって感情がある)。

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夢の名残りのような、羽衣のような、湧水のような。そんな表現を超える絶妙な美味さとしか言いようがない。

 

感覚的には栗と蒸し羊羹の境界線がない! 不思議な食感。

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これは、すごい。オーバーではなく、これまで食べた栗蒸し羊羹の中でもベスト3に入る、あまりに繊細な味わい。塩加減がとてもいい。相模原の宝石を見つけた思い。

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ほどよい、雑味のない甘さ。素材を見ると、吉野葛を加えている。

 

翌日、電話してしまった。

 

店の創業は昭和29年(1954年)。初代は酒饅頭屋さんで、現在3代目。この3代目が腕利きの若手和菓子職人だとわかった。都内の老舗和菓子屋で8年間修業、実家の跡を継いだ。すぐれた和菓子職人「選・和菓子職」にも選ばれている。

 

そこから酒饅頭専門から、和菓子屋に変身したようだ。

 

想像通り、基本のあんこへのこだわりが半端ではない。つぶあんはもちろん、こしあんまで自家製。その日出す和菓子はその日の朝に作る、を基本にしていることもわかった。

 

こしあんは作業が面倒なので、製餡所から生餡を仕入れる和菓子屋さんが多い中で、呉(ご=小豆の中身)からこしあんを手作りしている和菓子屋さんはそう多くはない。

 

小豆は北海道産、砂糖は白ザラメを基本にしている。

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酒饅頭はつややかな皮の素朴なもっちり感と口の中に広がる糀(こうじ)の香りがとてもいい。皮自体が美味い。中のつぶあんも美味い。

 

味噌あんは味噌が強めで、白あんをわき役にしている。この地方で昔から作られている素朴な酒饅頭だと思う。

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歌人俵万智さんがこの酒饅頭のファンだったらしい。

 

ちなみにこの酒饅頭だけは先代が担当しているようだ。

 

栗どら焼きはフツーの美味さ。中のつぶあんはいいテカリで、やや甘めで濃厚。栗の風味が効いている。

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期待していなかった「栗蒸し羊羹」のあまりのレベルの高さに驚いた分、他はやや辛口になってしまったが、次回は何としてもいちご大福やうぐいす餅をゲットせねば、そう思うのだった。

 

所在地 神奈川・緑区橋本6-39-8

最寄駅 JR横浜線橋本駅北口から歩約7分

 

 

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「あも」を超える?博多の塩小豆羊羹

今日は3.11から10年。何もできないので、せめて黙とうしてから今日のあんこ菓子を取り上げようと思う。10秒間の沈黙の時間。双葉町で和菓子屋を営んでいた森さん、お元気でしょうか? 

 

話は戻る。友人の編集者が「博多の鈴懸(すずかけ)、知ってますか? 豆大福が絶品ですよ」と私に教えてくれたのは数年前。

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博多に行ったら訪ねようと思いながら、いまだその機会はない。半分忘れかけていた。

 

たまたまテレビでこの鈴懸の「いちご大福」を取り上げていた。よだれが出かかった(下品な表現で申し訳ありません)。

 

冷凍でもいいから何とかお取り寄せできないものか、すぐに電話した。

 

答えは「ノー」。豆大福も含めて生菓子類は対応しておりません、とのこと。そうだろうな、と納得。

 

次善の策で、お取り寄せできるものを尋ねたら、いくつか教えてくれた。ややこしいお客に丁寧な対応だった。

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選んだのが「香海(こうみ)」求肥餅を塩羊羹で包んだもの)、「心葉(とろろ)」かるかん饅頭?)、それに「鈴乃最中 おてづめ」の3品。

 

賞味期限が1週間以上が条件だった。

 

「鈴懸(すずかけ)」は博多を拠点とした和菓子屋さんで、創業は大正12年(1923年)。現在3代目

 

初代は「現代の名工」にも選ばれた和菓子職人。3代目はやり手のようで、初代が作った伝統の生菓子を受け継ぎつつ、世界を視野に新しい和菓子の世界を提案し続けている、ま、表現を変えると、和菓子界のスティーブ・ジョブスみたいなお方(だと思う)。ちょっとオーバーかもしれないが、大化けの可能性はある。

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さて、3品の中で個人的に最も感動したのは「香海(こうみ)」だった。一本756円(税込み)。重さは237グラムほど。サイズは縦100ミリ×幅45ミリ×厚さ38ミリ。

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ごらんのとおり。見た目は小豆羊羹そのもの。

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よく見ると、小豆のつぶつぶ感が凄い。ずっしり感と只者ではない気配が妖気のように漂っていた。

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包丁で切ると、中が求肥餅で、あの叶匠寿庵(かのうしょうじゅあん)の「あも」とよく似ている。

 

お供はハンドドリップコーヒー(あんこ菓子とコーヒーはよく合うと思う)。

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口に入れたとたん、まず塩気が来た。絶妙な甘さと塩気。小豆の柔らかなつぶつぶ感が美味の波となって押し寄せてきた。

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この美味さ、「あも」を超えるかも。凝縮したいいあんこの風味が口の中で小爆発するよう。オーバーではなく、そんな感じ。塩加減がたまらない。

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素材へのこだわりも凄く、塩は五島列島の一番塩を使用、小豆は北海道の契約農家から直接仕入れているようだ。素材だけではない、職人さんによる手作りのこだわり、すべてが高いレベルを目指しているのがわかった。

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「心葉(とろろ)」は皮が厚めで鹿児島産つくね芋入り。中はさらしあんのようなサラッとしたこしあん。軽羹饅頭(かるかんまんじゅう)のよう。4個入りひと箱564円(同)。伝統的な逸品で、私的にはフツーの美味さ。

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最後の「鈴乃最中 おてづめ」は同店の目玉の一つだが、別盛のつぶあんを鈴の形の皮だねに自分で詰めるのがミソ。1箱4組1577円(同)。

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なので、皮だねの香ばしいパリパリ感が凄い。新潟産の糯米(もちごめ)「こがねもち」を使用している。

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何よりもつぶあんの美味さが一線を超えている、と思う。

 

しっかりと形はあるのに、小豆の旨みを最大限に引き出しているよう。甘めで塩気もある。ふくよかな広がりがいいね。

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この店の基本があんこにあることを実感させてくれる味わい、だと思う。

 

この店のファンは多く、博多をベースに名古屋や東京にも店舗を増やしている。

 

3.11から10年。双葉町の和菓子職人・森さんにあんこ作りを少しだけ教えてもらったことを思い出しながら、博多のあんこ菓子を堪能した。午後2時46分が近づいている。

 

あんこの神様にも手を合わせることにしよう。

 

【今回のお取り寄せ】

香海(こうみ)    1本756円

心葉(とろろ)    4個564円

鈴乃最中おてづめ(4組)1577円

送料(クロネコ便)    990円

代引き手数料       330円

    合計      4217円

 

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SOS! 熱海「百年羊羹」お取り寄せ

 

コロナ禍で地方の和菓子屋さんが苦境に陥っている。

 

今年の1月中旬、たまたまネットで熱海の老舗和菓子屋さんが「助けてください」と支援を呼び掛けている記事を見た。

 

見たことのある店主と娘さん。

 

熱海の老舗和菓子屋「本家ときわぎ」だった。羊羹(ようかん)の名店でもある。

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歴史ある人気の老舗がなぜ?

 

すぐに電話したが、つながらない。

 

ようやくつながったのが先月中旬だった。

 

支援の注文やら励ましやらが殺到したようで、たまたま電話口に出た4代目若女将と少し雑談した。

 

観光客減などで深刻な状況に陥ったことがわかった。他の真面目な和菓子屋さんも状況は同じではないか。

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去年春に訪れて、この老舗の珍しい乾燥羊羹「常盤木(6本入り)」を「週刊あんこ」で取り上げている。

 

その時はお客がひっきりなしで、わらび餅やうぐいす餅、きび餅などは売り切れていた。歴史的な建物、店内の活気、対面販売のポリシー・・・創業大正7年(1918年)の老舗の風格が滲み出ていた。

 

まさかのSOS。緊急事態宣言で状況がさらに悪化していることが想像できた。

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その場ですぐに注文。前回は買えなかった「百年羊羹」4種「本煉り」「小倉」「抹茶」「梅」(各1棹 税込み900円)。合計3600円なり。

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4代目若女将は思ったよりも明るい声で、コロナに負けない決意みたいなものが電話口から伝わった。

 

羊羹の賞味期限は一般的に1~2か月が目安だが、ここの羊羹は甘さを押さえ、創業当時からの枠流し製法を続けている。添加物はなし。なので「約2週間です」と短め。

 

ベースは銅釜で北海道十勝産小豆を炊き、砂糖は上白糖、それに国内産寒天でじっくりと煉り上げていく。昔ながらの職人の手の匂いがする羊羹。

 

白あんは白いんげん(カナダ産)を使用しているようだ。北海道産が手に入りにくくなっているとか。

 

さて、いよいよ賞味の時間。羊羹にはコーヒーが意外に合うので、ここは気持ちだけでも正座気分で味わうことにした。柏手4つ。

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①本煉り 濃い羊羹色で本格的なテカリ。少し糖化しかかっているのが、たまらない。穏やかでやさしい、固めの歯ざわり。口どけがとてもいい。添加物のない、いい小豆の風味が煉り込まれている。正攻法の、甘さを抑えた、昔の羊羹ってこうだったろうな、と思わせる本煉りだと思う。私的には好みの羊羹。

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②小倉 「とらや」の夜の梅と同じスタイル。大納言小豆(北海道十勝産)が歯ざわりに変化を付けている。その分、本煉りよりも小豆感が強い。小豆好きにはおすすめ。

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③抹茶 白いんげんベースに京都の抹茶を練り込んでいて、濃厚で深い色あい。ハートをギュッとつかまれる。ほどよい抹茶の風味。控えめな甘さ。地味だが、しっかりとした歯触り。香料や着色料の気配はない。

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④梅 淡いピンク色。白いんげんと寒天に地場の梅肉がほどよく煉り込まれている。梅の香りがほんのりと口中に広がる感覚は悪くない。これも甘さが控えめ。

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この4種の他に栗、柚子(ゆず)があるが、今回は予算の関係で手配できなかった(涙)。

 

最後に個人的な好みをあえて言うと、①抹茶②本煉り③梅④小倉の順。いずれもしっかりした、古くからのいい羊羹だと思う。余分な自己主張がない。

 

日を変えて食べると、この順位も変わるかもしれない(笑)。

 

あんこの未来を考える。熱海の老舗和菓子屋のSOSをしっかり受け止めたい。

 

所在地 熱海市銀座町14-1

 

【今回のお取り寄せ】

百年羊羹 本煉り 1棹900円

     小倉  1棹900円

     抹茶  1棹900円

     梅   1棹900円

  送料(クロネコ便)930円

   代引き手数料  330円

    合計    4860円

 

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