週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

25代?まさかの抹茶餡ぱふぇ

 

意外なあんこ王国・小田原編。2番バッターは「御菓子 ういろう」の喫茶室で出会った抹茶餡(まっちゃあん)をアレンジした和風ぱふぇ「涼風(すずかぜ)」である。

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正直、創業が室町時代というういろうの元祖(諸説ある)なので、上生菓子や新しい和スイーツと出会えるとは思ってもみなかった。

 

あんことは別種の「ういろう」はどちらかと言うと苦手な世界で、とはいえその歴史に敬意を表して、「ちょっと覗いてみるか」程度の軽い気持ちだった。

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天守閣を思わせる壮大な店構え。入り口をふと見ると、右手に喫茶室があり、そこに栗と白玉、それに抹茶餡などが層になっている「涼風」(税別600円)のメニュー写真が「おいで」をした。ん?

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まさかの流し目。まさかの出会い。クール美女の予感。

 

「老舗の職人が作るこだわりの逸品」とシンプルな説明も、超老舗のこだわりを感じさせる。うーん、悪くない世界。

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これは食べなければ・・・BGMのピアノ曲が流れる中、隅っこのテーブル席に腰を下ろして、いただくことにした。

 

来た。

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ごらんの通り、上から見ると、蜜煮した栗、白玉、甘納豆(大納言小豆)が見事に配置され、横から見ると、きれいな抹茶餡ババロア、抹茶ゼリーが層になっている。

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冷たい夢のような世界(オーバーだって? いやいや)。

 

小さくほおーっが出かかる。

 

スプーンで白玉(柔らかな上質)、栗(キリリとしている)、甘納豆、ババロアの順で口に運び、隠れ主役の抹茶餡へと進んだ。

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これが見事な、京都の老舗に負けない抹茶餡だった。あまりにみずみずしい、粒子を感じる舌触り。

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抹茶と手亡(てぼう)の絶妙な練り具合。餡作りの砂糖は白ザラメか。

 

抹茶の濃い風味が白あんのきれいな風味と融合している。

 

職人の手の存在も確かに感じる。

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甘さもほどよい。

 

その歴史を思う。新しい和の試みに少しウルウルしてしまった。

 

店の人に自家製抹茶餡の詳しい話を聞こうと思ったが、「抹茶は京都から取り寄せています」としか教えてもらえなかった。上生菓子を作る職人さんが苦心して作ったもの、ということはわかったが。

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当主は25代目とか。室町時代に中国から日本に帰化した外郎家(ういろうけ)が、博多⇒京都(外郎本家)と経て、そこからさらに小田原に分家したという歴史のようだ。後北条の時代か。

 

その後、京都の本家は衰退し、小田原の外郎家が生き残り、隆盛し、今日まで暖簾を守り続けているということになる(諸説ある)。これってすごいこと。

 

面白いのはういろう自体はもともとは薬(丸薬)で、京都の2代目が苦い薬を調合する合間に甘い生菓子を出したところ評判を呼んだという。それがいつしか「ういろう」になってしまった、というのが一つの有力な説。この小田原本店の一角にも調剤コーナーがある。室町から連綿と続いている、感動もの。

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今ではういろうと言えば、名古屋が有名だが、歴史的には不明な部分が多い。

 

室町時代から数百年、小田原でその枝が和風ぱふぇにまで進化(?)していたとは、天国の初代が見たらびっくりするに違いない。

 

かってに恐惶謹言。あんこ大好き個人としては、このパフェにあんこバージョンも追加してほしい。特につぶあんこしあん・・・あんコールだってば(オヤジギャグ?)。

 

所在地 神奈川・小田原市本町1-13-17

最寄駅 JR東海道本線小田原駅東口から歩いて約15分

 

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小田原名物「ジャンボおはぎ」食らふ

 

小田原は実はあんこのメッカでもある。

 

戦国時代は北条4代、江戸時代に入ると東海道五十三次の宿場町。

 

いい和菓子屋が多いのもうなずける。

 

明治・大正以降はあんパンの名店もいくつか誕生している。

 

すごいこっちゃ。魚だけじゃない。

 

トップバッターで登場するのは「甘味喫茶 岡西(おかにし)」のジャンボおはぎである。

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トップバッターというより、重量度で見るとクリーンアップの5番打者あたりかもしれない。イメージとしてはデスパイネかな。

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とにかく見ていただきたい。

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大人のこぶし大のデカさ。天地左右8~10センチ大くらいかな。

 

見た瞬間、目が吸い寄せられてしまった。

 

京都・七条通松屋」の名代おはぎ(つぶしあんのみ)に負けない大きさだが、こちらはあん、きなこごまの3種類揃っている(それぞれ税込み 290円)。食感もだいぶ違う。

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岡西の創業は昭和22年(1947年)。昭和な、ノスタルジックな店構え。

 

白地の暖簾におはぎのシルエットが染め抜かれ、入り口の木枠のケースにはこのジャンボおはぎ3種類とだんご(みたらし)が置かれている。

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テイクアウトのお客が2~3人並んでいた。

 

店内で食べることにした。

 

かき氷やあんみつなども美味そうだが、ここはジャンボおはぎで初志あんこ貫徹

 

3種類全部食べようと思ったが、あまりのデカさに2種類で我慢することにした。

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メニューから「おはぎとお煎茶」(税込み 690円)を選び、追加で山のような「きなこ」(プラス290円)を指名した。アンビリーバボーな指名打者。合計980円の出費は仕方がない。

 

お盆に乗ったおはぎ2種のド迫力(写真よりも実物の方が迫力がある)。

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形はデカ丸(あん)と富士山型(きなこ)。

 

あんからいただく。

 

あんこはきれいな、明るい小倉色で、細かい小豆の皮も少し見えるが、ほとんどこしあん

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大きいので、箸で切り分けてから口に運ぶ。食べるというより文語体で「食らふ」という感覚・・・。

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こしあんのきれいな、やさしい食感が最初に来た。

 

京都・松屋の名代おはぎの崩れ落ちそうな柔らかなねっとり感ではない。甘さも濃厚ではなく、むしろさらしあんのような、さらりとした、ほどよいしっとり感。

 

口どけがとてもいい。北海道十勝産小豆の風味がきれい。

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奥から塩気がほんのりと来る。98%こしあん独特のあんこ、だと思う。

 

あんの炊き方が気になったので、店の女性スタッフに聞いてみたら、店主(4代目)が板場から出てきてくれて、こしあんに小豆の皮を少し加えている」とか。砂糖は上白糖のようだ。不思議なこしあん98%の謎が解けた気分。

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作り置きせず、出す前に作るのがこの店のポリシーとか。

 

もち米は半殺し(半分搗く)ではなく、蒸かしたままのようで、もっちり感は京都・松屋や今西軒ほどはない。ほどほどの炊き具合。

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個人的にはもっちり感のある半殺しが好きだが、これはこれで悪くはない。

 

1個だけでそれなりにお腹にズシリと来た。

 

熱い煎茶をがぶっと飲んでから、富士山型きなこへと箸をのばした。

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きな粉(国産)の量が半端ではない。

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中のあんこは同じあんこで、きな粉をかき分けるように箸で切り、口に運ぶと、これが絶妙な美味さだった。

 

きな粉の中に塩が潜んでいて、その塩加減がとてもいい

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たっぷり入ったこしあん(この表現があってると思う)の甘さとそれを包むもち米、それに盛大なきな粉が1+1+1=5のガブリ寄りで、口いっぱいに広がってくる。

 

唾液がどんどん出てくる感じ。

 

普通のきなこのおはぎが眼下に小さく見えるほど。

 

こちらもさわやかな涼風が舌の上で渦巻く。

 

1個で3個分はありそう。

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余裕があれば、ごまも追加したかったが、小田原あんこ旅のこの先もある。むろん財布の中身も気になる。

 

ここは涙でがまん。

 

それにしても・・・とつい思う。

 

ジャンボおはぎの最初の一撃だけで、甘いため息とともに、小田原恐るべし、と食べ終えた口からこぼれ落ちるのだった。

 

所在地 神奈川・小田原市栄町2-9-15

最寄駅 JR東海道線小田原駅下車、歩いて約5分

 

 

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木箱のみやび、京生菓子の小宇宙

 

新幹線で京都に行きたいけどコロナが・・・まんじゅう怖い、とコロナ怖い。似て非なるもの。

 

なので、今回ご紹介するのは・・・あんこ王国・京都からのお取り寄せ。

 

はんなりとか雅(みやび)という言葉がキラリとこぼれてくる。

 

鶴屋光信(つるやみつのぶ)の季節の5種詰合せ「彩(あや)」(税込み 2808円、送料は別途)である。

 

あんこもここまで来ると、新しいアートだと思わせてくれるような逸品で、まずはその5種類の雅なお姿を見ていただきたい。

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左から「恋桜」、「塩みずようかん」、「せせらぎ」、「葛まんじゅう(小豆)」「葛まんじゅう(抹茶)」。ネーミングも京都らしい。

 

「おこしやす」

 

三つ指つかれて、そんなあいさつをされている気になりそう。(お茶屋じゃあるまいし、かんにんどすえ)

 

今回のお取り寄せはアマゾンから。5種が2個ずつ計10個。冷蔵庫で2時間ほど冷やしていただくことにした。

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きれいな包装紙を取ると、きれいな木箱が現れ、押さえ蓋を外すと、茶巾包みのような5種類の生菓子が現れた。

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首のところをはんなりした紙紐(5色)で丁寧に結んでいて、京都の細やかさに「ほう」となる。一つ一つ手作業で結んでいる。

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鶴屋光信は昭和22年(1947年)創業、屋号でお分かりの通り、老舗「京菓匠 鶴屋吉信」から暖簾分け。現在3代目だが、店舗は持たず、京都の製造所で和菓子職人が腕を振るい、オンライン中心の受注・販売を続けている。

 

この「彩」もオリジナル商品で、京都の進取の気性を新しい形で受け継いでいると思う。

 

さてさて、京生菓子の小宇宙へといざ。

 

恋桜 最初に気に入った一品。きれいなピンク色と底の若葉色の2層がきれい。道明寺と桜葉風味の羊羹で、春の香りが口の中で広がる。目と舌を同時に楽しませてくれる。北海道手亡豆を使用し、紅麹、クチナシなどで着色している。上品で濃い甘さ。さすが京都どすなあ、と唸りたくなる。

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塩みずようかん あんこ好きとしてはこれが一番気に入った。北海道産小豆を炊いて作ったこしあんと寒天のバランスがとてもいい。水ようかんもいいが、塩を多めに加えたこの一品も素晴らしい。濃厚で滑らか、上質の小豆の風味。残暑も消える。シンプルなので、和菓子職人の腕がよくわかると思う。

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せせらぎ これはもはやアートのレベルだと思う。大粒の小豆甘納豆と白小豆甘納豆、それに柚子羊羹を敷き、清流のような寒天で閉じ込めている。寒天が金色にきらめき、口に運ぶと、小豆と白小豆の食感と風味が立ち上がってくる。マッチングがとてもいい。それに柚子羊羹が絡んでくると、4つのメロディーが重なり合って、脳内へと吹いてくるよう。甘さもほどよい。

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葛まんじゅう(小豆) こってりしたこしあんをぷるぷるの吉野葛と寒天が包んでいる。こしあんは濃厚で甘め。上質なあじわいで、冷たくすればするほど美味さが増す気がする。

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葛まんじゅう(抹茶) こちらは手亡豆を使った抹茶あん。個人的には吉野葛と寒天との相性はこちらの方がいいと思う。抹茶の風味が強めだが、ほどよい甘さが上品。

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あくまでも個人的な好みだが、気に入った順からランキングしてみた。

 

1位 塩みずようかん

2位 恋桜

3位 せせらぎ

4位 葛まんじゅう(抹茶)

5位 葛まんじゅう(小豆)

 

比較的日持ちするので、暑さが続いているうちは、冷た~くして食べたいお取り寄せとして、頭の整理棚に置いておきたい。

 

こういう逸品と出会うと、コロナ禍のお取り寄せ生活も悪くはない。

 

「鶴屋光信」製造所 

 京都市西京区南巽町88-1

 

今回のお取り寄せ(アマゾンから)

 

木箱詰合せ「彩」(5種×2個=10個)

       消費税込み 2808円

 

            送料715円

          合計 3523円

 

 

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京都の遺伝子?大納言小豆の傑作

 

コロナ以後、お取り寄せにもハマっているが、今回は大納言小豆ファンにはたまらない逸品をご紹介したい。

 

素朴と洗練が見事に融合したそのお姿を見ていただきたい。

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半透明の小豆羹の中には求肥餅(ぎゅうひもち)が潜んでいて、私の好きな叶匠寿庵(本店=市が・大津市)の「あも」と似ているが、店としてはこちらの方が歴史がはるかに古い。

 

光を通すと、奥ゆかしい美しさが際立っていると思う。

 

寒天と水飴を加えたこしあんの白濁した層とそこにボコボコと咲く大粒の小豆が迫ってくる。

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ヘンな表現だが、あんこ美女に「おいで」とささやかれている、一瞬そんな妄想が起きるほど。まずは目の幸福感。

 

たまらない予感。

 

その奥の求肥餅にはまだたどり着けない。焦ってはいけないと言い聞かせる。

 

創業が文政5年(1822年)、現在7代目。関東でも超老舗の「鹿島菓匠 丸三老舗(まるさんしにせ)」の常陸風土記(ひたちふどき)」である。

 

今回は楽天市場でお取り寄せ。しゃれたコバルトブルーの紙箱に金文字で「常陸風土記」の金文字。中に小箱6個が収められていて、消費税込み2530円。1個当たり400円弱。手書きの手紙が添えられていた。細やかな気遣い。

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猛暑なので、冷蔵庫で1時間ほど冷やしてから、温かいコーヒーでいただく。エアコンは28度に設定。

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プラスティックの器から、デリケートに揺れる本体を取り出し、しばしうっとりと眺めてから、菓子楊枝で切る。

 

中からようやく真っ白い求肥が現れる。

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口に運ぶと、ほろほろと崩れ落ちそうな、柔らかく炊かれた大納言小豆の濃縮感のある風味がふわりと広がってくるのがわかる。

 

ちょっと驚くのは、小豆の形がくっきりとあるのに、柔らかさが凄い。

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甘さは抑えられていて、小豆の美味さが極限まで引き上げられている。

 

餡作り職人の技術の高さが伝わってくる。

 

柔らかな求肥餅との絶妙な結婚が、食べるこちら側にもストレートに伝わってくる。

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とろけるような余韻が舌の上にしばらく残る。

 

置いてきぼりにされた気分。

 

あっという間に2個食べてしまった。

 

「あも」と確かに似ているが、一棹作りではなく、一個作り。個人的な評価では「あも」よりも洗練されていると思う。圧倒感は「あも」の方があるが。

 

気になってつい電話取材してしまう。

 

「あずきは北海道産きたろまんを使ってます。砂糖は上白糖とグラニュー糖を季節によって使い分けてます」

 

たまたま電話口に出た感じのいい女性スタッフは、7代目の女将さんだった。失礼しました。あんこの神様の存在を感じる。

 

きたろまんは大粒の小豆で、ふくよかな風味が特徴。

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常陸風土記」は7代目のお父さん(6代目)が考案したようだ。

 

先代6代目は若い時に京都の老舗和菓子屋で修業し、鹿島に戻って、6代目を継いだとか。

 

京都の美味の遺伝子が鹿島の土壌に見事に根付いているということになる。京都に負けない上生菓子も作っていて、常陸一宮・鹿島神宮の神様も喜んでいるに違いない。

 

目をつぶると、この一個で、和菓子のロマンが時空を超えて頭上で行き交いする。

 

京都と鹿島の点と線。あんこのきらめき。

 

コロナでストレスが溜まっているが、お取り寄せもそう悪くはない。

 

 

「丸三老舗」本店所在地 茨城・鹿嶋市宮中1-9-22

 

〈今回のお取り寄せ(楽天市場から)〉

 「常陸風土記」(6個入り) 消費税込み

               2530円

             

       代引き手数料   450円

          合計   2950円

 

 

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あんず大福と餡入りみたらしだって?

 

「老舗なのに新しいチャレンジに成功している面白い和菓子屋さんがあるんですよ」

 

あんこネットワークの情報で、埼玉・東松山市までクルマを飛ばした。

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あん入りみたらしやごまだれ、あんず大福、わらび饅頭などなど。ありそうでなかなかない名前がどんどん出てきた。

 

甘い好奇心がむくむく。

 

それが市の中心部、松葉町「富久屋本店(ふくやほんてん)」だった。

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引き戸の古い店構えだが、猛暑にもめげず「あんず大福」のノボリが青空に翻り、創作和菓子のメニューボードなどとともに町の和菓子屋さんのいい雰囲気をかもし出していた。かき氷の文字まで見える。

 

まずは珍しい「あんず大福」(税込み260円)を見ていただきたい。

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小ぶりだが、包丁で切ると、中が2層になっていて、上が1個分のあんず、下が見るからにふくよかな粒あん。おもろ。

 

それが柔らかな餅で包まれている。

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私にとって初めて見る、絵画のような光景。

 

あんずは干しあんずを戻したもの。粒あん北海道の契約農家から仕入れた小豆(多分えりも小豆)を職人がじっくりと炊き、白ザラメで仕上げている。

 

ベースとなっているのは粒あんだが、片栗粉のかかった餅は柔らかく、口に入れると、甘さもほどよく、メリハリの利いた風味が口の中に広がる。

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あんずは自己主張が強いが、その甘酸っぱい酸味が艶やかな粒あんとよく合う。粒あんをむしろ引き立ててくる。柔らかな餅も上質。下手をするとミスマッチにもなりかねないが、「ミスマッチどころか、これってイケる!」に変化してくる。

 

着眼点がクール、だと思う。

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あん入りみたらしは「牡丹だんご」(一串 同182円)の名称で、この店の目玉でもある。

 

立派な青竹串に刺さった、平べったい、実に魅力的なみたらしが一串に二個。一個が大きくて、上新粉餅だが、羽二重のように柔らかい。この中にあんが・・・と考えただけで、よだれが出かかる(失礼)。

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竹串を外してから包丁で切ると、餅の柔らかさが半端ではない。

 

中のあんこはこしあんだった。

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甘いみたらしと油断するとだらりと垂れそうな餅、しっとりとした甘めのこしあん

 

それが絶妙に口の中で融合する。

 

うめえ。言葉が自然にこぼれてくる。

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ごまだれも中はこしあんで、ごまだれの風味との相性もいい。私はみたらしの方が気に入ったが、店のスタッフによると、「確かにみたらしの方がファンが多い」とか。

 

最後になったが、今回の4品の中で最も気に入ったのは、実は「わらび饅頭」(同 160円)である。大トリの一品。

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国産きなこがたっぷりかかった半透明のわらび餅と中の藤紫色のこしあんがとにかく絶品だった。

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京都の茶会に出してもおかしくないレベルだと思う。

 

特に中のあんこ。湧水を感じさせる、しっとりとしたみずみずしさ、小豆のきれいな風味、控えめな甘さ、そのボリューム感。すべてが上質で、あんこ作りの職人芸を感じる。

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生きてるあんこ、と表現したくなる。

 

牡丹だんごと同じこしあんかどうか、気になって電話したら、「違う作り方をしてます」とのお返事。白ザラメの量を少なくしているようだ。

 

きな粉と膜のように薄いわらび餅、その中の上質なこしあん

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それらが絡み合って、舌の奥へと消えていく。いい踊りを見たような舞台の余韻がしばらく残る。そんな感じかな。

 

店の創業は明治45年(1912年)。現在3代目。初代のルーツは長州・萩で、明治維新後、文明開化の東京に出てきて鉄道の仕事に就き、そのご子息が和菓子好きで、老舗和菓子屋で修業し、東松山の地で「富久屋」の屋号を掲げた。

 

松山藩の城下町だった東松山。宿場町としても栄えた歴史がある。埼玉のローカル・東松山にいい和菓子屋があるのも偶然ではない。

 

人が少なくても、歴史のある町にはいい和菓子屋がある。

 

これは私的にはあんこの法則だと思う。

 

所在地 埼玉・東松山市松葉町1-11-15

最寄駅 東武東上線東松山駅下車 歩約15分

 

 

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奇跡のようかん2種、栗と大納言

 

もし2百年単位の和スイーツ番付があったら、横綱の一角は煉り羊羹(ようかん)だと思う。今回はとんでもない隠れ名店の栗羊羹と大納言羊羹を取り上げたい。くりとだいなごん。

 

あんこ旅では思いがけない出会いがいくつかあるが、これもその一つ。

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タイムスリップしたような店構えにまず驚かされ、中に入ると、6代目だというややご高齢の店主の存在感に頭が混乱した。創業が弘化元年(1844年)とは。

 

栃木・佐野市「御菓子司 大坂屋」。歴史のある街だが、時代に取り残されたような、あまりの人の少なさにローカルで和菓子屋を続ける苦労を考えてしまう(佐野プレミアムアウトレットは混み合っているが、街なかは閑散)。

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百聞は一見に如かず。まずは栗羊羹(1棹 税別1500円)を見ていただきたい。

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普通なら抹茶だが、意外にコーヒーも合う。猛暑なので、エアコンをかけてから、アイスコーヒー(シロップ抜き)に氷を入れ、菓子楊枝(かしようじ)でいただく。

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羊羹は30分ほど冷蔵庫で冷やしておく。真夏の食べ方。

 

表面の蜜のテカリ、小倉色のきれいな煉り、ぼこぼこと入ったお見事な大栗。

 

歯にくっつきそうな羊羹独特のねっとり感だが、不思議にくっつかない

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口の中で絶妙に溶けていく。口どけがとてもいい。

 

蜜煮された大栗のきりっとした歯ごたえと煉り羊羹とのバランス。熟練の技、職人芸としか言いようがない。余韻のきれいな長さ。幸せホルモン全開。

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羊羹といえば「とらや」があまりに有名だが、個人的な感想ではここの羊羹は勝るとも劣らないと思う。もし東京に店があったら、この価格の倍近い価値はあるのではないか。

 

なので、ローカルでこのレベルを長年維持していることに脱帽したくなる。

 

グレーのしゃれた包装紙⇒しっかりした紙箱⇒金文字⇒すだれ包み⇒銀紙⇒本体。すべてに店主のこだわりと矜持(きょうじ)がさり気なく隠れている。

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1棹の重さは427グラム。タテ200ミリ、幅55ミリ、厚さ28ミリほど。これで採算が合うのか余計な心配までしてしまう。後継者がいるのかもわからない。

 

もう一品、「大納言」(1棹 税別1200円)をいただく。「とらや」の「夜の梅」とほとんど同じ小豆羊羹だが、あえて言うとコスパはこちらの方が上だと思う。

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丹波系の大納言小豆が「闇夜の梅」のように、煉り羊羹の中にぽつりぽつりと咲いて(煉り込まれて)いる。

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サイズは栗羊羹と同じだが、重さは419グラムと気持ち軽め。

 

なめらかな羊羹の粒子を舌に感じる。蜜煮した大納言小豆の風味がやや強め。上質で柔らかな、深いねっとり感。甘すぎず、ほどよい甘さ。

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6代目は多くを語らないが、エンマ棒で羊羹を練り上げていく作業は根気と集中力がかなりいる。砂糖焼けしないように手を動かし続け、銅釜から一瞬たりとも目が離せない。それを長年黙々と続けている。すごいこと。

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最中やどら焼き、饅頭、水ようかんなども作っているが、添加物などは使わず、それらのレベルも高い。

 

素材は国産。それも地場の小豆にこだわっているようだ。

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3年ほど前、たまたま佐野市内をブラ歩きしていて、この店に出会った。以来、折に触れて訪れている。

 

市内の閑散はどこかうら寂しく、過日の面影はないが、こういうとんでもない名店がひょいと隠れている。メディアにもあまり出ないようだ。

 

あんこの神様はどこにいる?

 

所在地 栃木・佐野市万町2770

最寄駅 JR両毛線佐野駅東武佐野線佐野市駅から歩約10~15分

 

 

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炎天下のくず桜、コロナ帰省の涼

 

かつて「西の西陣、東の桐生」とうたわれた、群馬・桐生市の和菓子屋さんで見つけた絶品「くず桜」を取り上げたい。

 

ローカルの奇跡というとちょっとオーバーかな。でもそのくらい。

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コロナと酷暑をまとめて吹っ飛ばしたい。あんこ好きとしてはこういう時こそ一息つける水菓子と出会いたい。

 

水菓子。みずがし。本来は果物を指すが、和菓子好きにとっては「水ようかん」や「くず桜」など夏に冷やして食べと美味しい生菓子も水菓子なのである。

 

その水菓子の逸品を桐生市の中心部で見つけた。

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本町通りに小さく店を構える「御菓子司 辰見屋(たつみや)」。セピア色が似合う古い和菓子屋さんで、歴史のある街にはこうした時間の大波に流されずに踏ん張っている古い杭のような店がある。

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「辰見屋」もその一つで、タネを明かすと、たまたま妻の実家が桐生市で、お盆なのでお墓参りに来たついでに市内をブラ歩き中に、私のあんこセンサーにヒットした。

 

創業が明治20年(1888年)で現在4代目。たまたまいらっしゃった女性が4代目女将さんだった。常連客がおはぎを買いに来ていて、「ああまだ残ってた。ツイてるわ。5個ちょうだい」などと軽口をたたいていた。いい感じ。

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おはぎの他に水羊かん、くず桜、田舎まんじゅう、上用饅頭などが並んでいて、それらが残り少なくなっていた。

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いずれも基本的に110円(税込み)というのも驚きだが、一つ一つが和菓子職人の気配が詰まっているような、清楚な佇み方に惹かれた。桐生名物花パンも置かれていた。

 

少量しか作らない、売り切りごめんの店とわかった。

 

おはぎ(こしとつぶ)を買い、「冷えてます」と表記されていた水ようかん、くず桜、田舎まんじゅう(蒸しきんつば)を買い求めた。

 

すべて小ぶりだが、あんこからすべて自家製で、「昔と同じ製法です」(4代目女将さん)という徹底ぶり。期待し過ぎず期待して(この表現ヘンかな?)、敬意を込めながら、自宅に持ち帰って、早めに賞味することにした。

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女将さんが「くず桜が一番足が速いです。あまり時間を置くと白っぽくなります。なのでお早めに」と教えてくれた。無添加なので、そこは注意が必要。

 

くず桜と水ようかんを30分ほど冷蔵庫で冷やしてから、氷を入れた生茶でいただく。

 

おはぎ、田舎まんじゅうは想像通りの素朴な、濃いあんこがそのまま口の中にとどまり続けるような、懐かしい味わい。昭和の生菓子。塩加減も効いていて、妙に洗練されていないのが、むしろ清々しい。

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何よりも「これは傑作では?」と唸りたくなったのが、くず桜だった。

 

桜の葉がビニールなのは110円ということを考えると仕方ないが、半透明の本体が素晴らしいと思う。中のこしあんが秘め事のように横たわっている。胸のときめき。

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菓子楊枝で切ると、くずのぷるぷる感がお見事。さらにこしあんの色とみずみずしさ。

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こしあんの上質は例えば、しっとりとした舌触り。なめらかだが、きれいな粒子すら感じる。北海道産小豆とグラニュー糖で炊いているそうで、甘さが控えめで、しかも小豆のいい風味もしっかり生かしている。

 

この一品と出会えたことが今回のあんラッキーだった(アンラッキーではありません)。

 

水ようかんはカップ入りで、寒天が気持ち強め。甘さも強め。

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田舎まんじゅうはつぶしあんがストレートに伝わってくる。

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おはぎも書いておきたい。小ぶりで、少し時間がたったせいか、半殺しの糯米が気持ち固めに変化していた。こしあんは濃厚、つぶしあんの方が風味が柔らかく、好みが別れるところ。

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とはいえ、くず桜の上質と安さにウルッと来た。この一品だけで、桐生が「西の西陣、東の桐生」と呼ばれた、江戸⇒明治⇒大正⇒昭和⇒平成⇒令和とつづく線の歴史の末端にいることを実感した。

 

かつての繁栄は確かに消えている。

 

太宰治と並ぶ破滅型作家・坂口安吾がこの桐生を終の棲家にしたこと。夢の跡があちこちに残っていること。そこにこのくず桜を重ね合わせると、私もこの街を終の棲家の候補にしたくなった。

 

あんこには時空を超える力がある。なんてね。

 

所在地 群馬・桐生市本町6-388

最寄駅 JR両毛線桐生駅から歩約5~6分

 

 

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