あんこ旅越後編で「黒い金星」と出会った。
まずは見ていただきたい。
表面をびっしりと覆っているのは黒ごまで、香ばしさをより出すために炒っていると聞いて、驚きは広がったが、創業当時(明治23年=1890年)からの作り方をほとんどそのまま引き継いでいると聞いて、驚きはさらに広がった。
和菓子の隠れたメッカ、新発田市「和泉屋(いづみや)」の恐るべき一品。
人口10万人弱の旧城下町。いい和菓子屋さんが潜んでいる条件が揃っているが、街は閑散としていた。全国的にローカルの和菓子屋さんの苦境が痛い。
店の表記は「ごま饅頭」だが、このあたりでは大福を饅頭と呼んでいるので、私の中では「ごま大福」と言わせていただきたい。
大きくはない店構え。庶民的な老舗和菓子屋さんで、敷居も低い。
地元でも愛されているのがわかる。
私が話を聞いている間も常連さんがポツリポツリとやって来る。
「ごま大福」は東京・神田須田町「庄之助」(ここは白ごま)など、いくつか名店が頭に浮かぶが、明治23年創業当時からつくっているというのは多分ここだけだと思う(間違っていたらごめんなさい)。元祖ごま大福だと思う。
見た目も中身もワンダー、としか言いようがない。
★ゲットしたキラ星
ごま饅頭 130円×2個
餅屋が作ったどら焼き 160円
福招きねこモナカ 150円
六方焼き 160円
※価格はすべて税込みです。
この一品:ごま饅頭(大福)
見た目 サイズは約50ミリ×50ミリ。薄べったい円形。最初にご紹介したように香ばしい黒ごま(摺りごま)がびっしりと全体を覆っていて、「黒く小さな巨人」を予感させる。
見事なまでに真っ黒なので、外見からは中がわからない。
手で持つと、餅の柔らかさがわかる。
「昔のままの無添加づくりなので、今日中に食べてくださいね」と雰囲気のある女性スタッフ(5代目修業中だった)。
実食タイム 宿泊先で賞味することにした。包みを解いた瞬間、黒ごまのいい香りが鼻腔に来た。
あんこ脳が「この刺激はなんだ?」と反応した。
包丁で切ったら、柔らかくて真っ白い餅としっとりとしたこしあんが現れた。きれいな赤紫色のあんこ。おおっ、と声が出かかる。深み。
この餅とあんこのこだわりがまずすごい。
地場の最高級もち米みやこがねを蒸かした杵つき餅。
深夜から仕込みに入り、あんこも銅釜でじっくりと煮る。
それが味わいにも表れる。
北海道産あずき×上白糖。
黒ごまの香ばしさが口の中で立ってくる。炒り加減が絶妙と言いたくなる。
餅のピュアな食感とみずみずしさ。
こしあんのふくよかな風味が追い打ちをかけるように広がる。
塩気がほんのり。
2個しか買わなかったことをちょっぴり後悔したが、悲しいかな胃袋は一つしかない。ここが苦しいところ(できれば胃袋は10個くらいほしいな)。
他に上記の和菓子も堪能したが、それは別の機会にご紹介したい。
●あんヒストリー
創業は明治23年(1890年)。もともとは農家だったようだ。初代がごま饅頭を考案し人気を呼び、それが2代目、3代目と受け継がれ、現在4代目。「餅屋が作ったどら焼き」「福招きモナカ」「六方焼き」など和菓子のラインナップも揃っている。
「和泉屋」
所在地 新潟・新発田市中央町2-1-17