令和4年もどん詰まり。
今年は特別編、で締めることにした。
たまたまBS日テレで「にっぽん和菓子探訪」(27日放送)を見てしまった。
高橋克典さんがスイーツ好きということで、ナビゲーターをつとめていて、私は彼の別番組「ワタシが日本に住む理由」(BSテレ東)のファンなので、興味深く和菓子探訪を楽しませていただいた。
京都と金沢の、敷居の高い上菓子を中心に、歴史を織り交ぜながら案内していたが、見ているうちに、ほとんど今年行った店だったことに気づいた。
特に金沢(上の写真は森八本店の「千歳(ちとせ)」。
朝生の「戸水屋」はこのブログでも書いたが、そのほかは蔵に入れたまま。これはいかん(汗)。どうしようか、迷っているうちに、蔵出しのタイミングを見失っていたことを思い出した。
後悔先に立たずだが、後出しじゃんけん、だってあるかもしれない(強引だなあ)。
なので、今年の締めくくりに蔵出しすることにした。
とはいえ、私が味わったのは番組とは少々違っていた。もっと敷居が低い。
●蔵出しのキラ星たち
森八本店:千歳(紅白のあん入り求肥餅)
落雁諸江屋:加賀宝生(羊羹を挟んだ生らくがん)
吉はし:本練ようかん
【センターは?】
いずれも素晴らしい、茶席にも使っている上菓子で、豆大福など朝生好きの私の手に余るもの。
とはいえ、個人的にもっとも衝撃を受けたのは諸江屋(もろえや)の「加賀宝生(かがほうしょう)」だった。
創業が嘉永7年(1855年)、店主は7代目という老舗だが、「らくがん」をメーンにしているのが希少だと思う。
店の女性スタッフとやり取りして、特に気になったのが「加賀宝生」だった。
「生らくがんなので、歯ざわりもお味もひと味違います。塩気が強くて、ようかんをサンドしてるんですよ」
その説明に好奇心がむくむく。
6個入り税込み713円。手ごろな価格。
ザクザクとした歯触りで、湿り気もある。干菓子のイメージとは違った。
砂糖と米粉と塩のバランスが絶妙。
しかもサンドされた練り羊羹が上質で、塩気たっぷりの生らくがんとのマリアージュが素晴らしい。
個人的な感想だが、これは男性的な、海の香りのする和菓子だと思う。
菓銘の「宝生」は金沢の無形文化財・宝生流(能楽)から取ったもののようだ。
【サイドは?】
番組の中で高橋克典さんが「金沢菓子木型美術館」に驚いていたが、創業が金沢で一番古い寛永年間(1625年)で、加賀藩御用菓子司を務めていたという歴史が「森八」を日本でも有数の老舗に押し上げていると思う。
その森八の中で私が気に入ったのが「千歳(ちとせ)」。
美人スタッフに「あんこ好き」を伝えたら、すすめてくれたのがこの紅白2色の求肥餅だった。
2種類(10個入り)税込み2106円。
日持ちするので、自宅に帰ってから賞味。
ごらんの通り、紅白2色で、見た目もあでやか。
表面を和三盆が粉雪状に覆っていて、口に入れた瞬間、求肥餅のもっちり感と中のこしあんが絶妙に絡み合う。
かなり甘い。そして、どこかなまめかしい(いい感じです)。
驚くことに、こしあんは金沢の老舗飴屋「俵屋」の水飴で炊いているそう。
珍しい、あん古都・金沢ならではのこだわり(連係プレー)だと思う。
ちなみに赤というより桃色に近い。ベニバナで色付けしているとか。
【おまけです】
おまけというのは失礼かもしれない。
番組でも強調していたが、「吉はし」は予約注文主体で、店構えも小さい。
歴史は金沢の中では浅い。創業が昭和22年(1947年)。現在2代目。
京都「嘯月(しょうげつ)」のような、狭い受け渡し場所で、予約客とやり取りする。
ここでようやくゲットできたのが「本練ようかん」だった。
もちろん予約してから、二日がかりでたどり着いた。
小サイズ10本入り 税込み2080円。
こちらも自宅に帰ってから賞味となった。
北海道産小豆と和三盆を使った練り羊羹だが、思ったよりも色味が淡い。
和三盆ゆえか、色味同様やさしい味わいで、歯がすっすっと入る。
期待が大きかった分、特筆するほどの感動は来なかったが、品のいい上質の羊羹ではある。
今回の特別蔵出し編で今年はおしまい、です。
今年一年間、時に脱線して、自分でもこれはちょっとなあ、と反省することも多かった年ですが、「あんこころ」で読んでいただき、深くふかく感謝いたします。
●森八本店 金沢市大手町10-15
●吉はし 金沢市東山2-2-2
よいお年を!