フルーツ大福は新しいトレンドだが、これは・・・と思わず唸ってしまったのが「フルーツあんみつ大福」。
百聞は一見に如かず。まずはその断面を見ていただきたい。
どないどす?(なぜか京都弁で言いたくなる)
茨城・筑西市の老舗和洋菓子屋さんの独創的な生菓子で、あんこ好きの友人から情報をもらって、コロナ禍のなか、思い立って訪問し、ゲットしたもの。
「あんみつ」が柔らかな求肥餅(ぎゅうひもち)で包まれていて、中は粒あんと生クリーム、それにドレンチェリーやみかん、黒蜜寒天などが星雲のように収まっている。
京都のはんなり文化にも通底しているような、和スイーツの小宇宙に一瞬、胸がときめいた。キラキラお星さまの気分・・・。
あん子「ホントびっくりですね。去年、『麻布昇月堂』の一枚流しあんみつ羊羹にも驚かされたけど、これもすごいわねえ」
編集長「ふふふふ。生ものなので冷凍で置かれていて、解凍したら、その日中に食べなければならない。善は急げ、ではなくあんこは急げ(笑)。とにかく食べてみよう」
・今回食べたキラ星たち
フルーツあんみつ大福 1個324円(税込み)
豆大福 同140円
百歳満寿(黒糖まんじゅう) 同108円
【今週のセンター】
まさかの甘い衝撃「フルーツあんみつ大福」
このあまりに独創的な一品を作っているのは、「菓子處 たちかわ本店」。
創業が大正12年(1923年)。現在4代目。
建物も文化遺産的なもので、1階がモダンな和洋菓子屋さん。2階より上が創業当時のままの木造建築で、見ようによっては「千と千尋の神隠し」の湯殿のよう、と表現する人もいる。これって屋上屋?
ごらんの通りの不思議な構造になっている。
「フルーツあんみつ大福」ともども、あんこ行脚中の私にとっても初めて見る光景。
初代から続く老舗和菓子屋だが、平成11年(1999年)からは洋菓子も作っている。4代目は洋菓子修業(パティシエ)もしているようだ。
「フルーツあんみつ大福」は野心的で、和と洋の見事な結実と思う。
自宅に持ち帰ってから、常温で解凍し、シャレた包みを解くと、本体が現れた。
求肥餅でやや長方形に折りたたむように包まれ、餅粉が雪のようにうっすらとかかっていて、中のあんこが透けて見える。
た・ま・ら・な・い。
重さは約95グラム。サイズは大きめで65ミリ×55ミリ×厚み45ミリほど。
包丁で切ると、あまりの柔らかさに、少々苦労する。
艶やかな粒あんが上部と下部に広がり、中央部には大きめの黒蜜寒天、チェリー、ミカン、パインなどが配置され、それをたっぷりの生クリームが包み込んでいる。
口に入れると、ピュアな生クリームの存在感が広がる。
粒あんはもちろん自家製で、小豆は希少な朱鞠小豆(しゅまりしょうず)を使用している。
小豆のふくよかな風味も遅れて広がるが、どうしても生クリームの影に隠れている。
あんこマニアとしてはそこが少々残念だが、全体が独創的なので、その技術力とともに出会った感動の方が先に立つ。
フルーツと黒糖寒天も味わいに彩りをつけていて、「これはフルーツ大福の傑作では?」と位置付けたくなる。
【セカンドは百歳万寿(黒糖饅頭)】
豆大福もおいしいが、黒糖饅頭の方が私的には好みだった。
小麦粉に葛粉(餅粉?)を加えたような、しっとりとした黒糖の皮の食感がいい。
中はなめらかなこしあんで、みずみずしさすら感じた。甘さは控えめ。塩気もほんのり。ホントにこれを食べれば、コロナも乗り越え、百歳まで生きられそう(笑)。
豆大福は赤えんどうが固めで、それがちょっと残念。餅はしっかり搗かれていて、粒あんの風味もほどよい。塩気も効いている。
あん子「フルーツあんみつ大福がすごすぎて、その分、他が損してるかもね」
編集長「渋好みとしてはちょっと困る展開だけど、この独創性には脱帽だね。とにかく口の中でいろんな味が混じり合い、溶け合い、生クリームの新鮮な余韻がしばらく舌に残る。表現を変えると、和洋スイーツのオーケストラを味わった気分。個人的にはあんこの量をもっと増やしてほしいけどね(笑)」
あん子「こういう店がローカルに存在していることが大事よね。今回は私もうれしくなっちゃった。今度行くときは編集長に付いていきたいでーす(笑)」
「菓子處 たちかわ本店」
所在地 茨城・筑西市丙274