今日はお盆帰省ラッシュのピーク。なので、蔵出し特別バージョン。
あんこ旅で金沢に舞い降りた(?)ときに、ホテルのフロント女子が教えてくれた、ユニークなあんこの焼き菓子をご紹介したい。
これぞあんラッキーな、出会い系あんこ菓子。正確には餡ラッキー(笑)。
その名も「こもかぶり」。
蜜煮した栗1個をつぶあんで包み、鉄板の上で、溶いた小麦粉(蜂蜜入り)の上に乗せてから、くるくると器用に巻いたものだが、海苔をあしらった上に、ひも状の巻き上げ方が職人芸でもある。
それがこれ。
加賀藩武家屋敷の雪対策「こも(菰)をイメージした「板屋本店」のオリジナル和菓子だが、フロント女子が「本店でしか焼き立ては買えないんですよ。実演販売していて、これは特におすすめです」。
好奇心がむくむく。翌日、足を延ばしてみた。
和モダンな店構え。店内は狭いが、確かに奥で若い店主(4代目だった)が熟練の手つきで器用に焼いていた。感動もの。
テレビで放送されたとかで、「お客さんが急増したんですよ」と若女将さん(奥さん)。
・ゲットしたキラ星
「焼き立て こもかぶり」 218円(税込み)
「能登大納言どら焼き」 218円(同)
【センターは焼き立てだが】
焼き立てを3個と能登大納言どら焼き1個をホテルに持ち帰って、すぐに食べてみた。
いい焼き色とある種アートな形で、ごま油(焼くときに敷いていた)のほのかな香りがあんこ中枢を刺激する。
真ん中から切ると、蜜煮した栗が丸ごと一個、艶やかなつぶあんの層、そして小麦ベースの薄いきれいな皮・・・しばし見入る。
見ようによっては、どら焼きのアートな進化系、と言えなくもない。
あるいは六方焼きの進化系?
つぶあんはもちろん自家製で、北海道産小豆(砂糖は上白糖)を使用、粒々感が柔らかく残るいい風味のあんこだと思う。
甘さを抑えていて、塩気もほんのり。
海苔の香りとかすかに醤油の気配も混じる。何というマリアージュか。
4代目は「焼き立てが一番おいしいと思います」と話すが、賞味期限は3日間なので、少し我慢して、翌日、一日経ったものを賞味してみた。
焼き立てよりも味がしっとりと馴染んでいて、個人的にはこちらの方が好みに近い。
つぶあんときれいな栗と皮がさらに愛し合っている?
どら焼き好きの中にも「焼き立てより翌日の方が味が馴染んでおいしい」という人も意外に多い。もちろん、焼き立ての味わいはまた格別。
店には日持ちする「こもかぶり」(見た目は同じ=1か月持つ)が隣に並んでいたが、店主のワザを見ながら、焼き立てをその後に味わう・・・これこそぜいたくの極みだと思う。
「板屋」の創業は金沢の中では思ったほど古くなく、戦後昭和21年(1946年)で、この「こもかぶり」は若女将の祖父が考案したもののようだ。
終戦後すぐに立ち上がる。進取の気性に富んだ、かなりの腕の和菓子職人だったことがわかる。
【セカンドは能登大納言どら焼き】
能登大納言あずきは丹波大納言あずきの次に位置するブランドあずき。
京都に次ぐ「あん都」金沢に来たら、これは外せない。
ごらんの通り、焼き色は濃い。板屋の家紋(?)の焼き印。
上野うさぎやのどら焼きよりも一回り小ぶりだが、厚みは十分にある。
皮のふっくら感、かすかに醤油の風味も悪くない。
中のあんこはつぶあんだが、蜜煮した能登大納言が「夜の梅」のようにぽつりぽつりと咲いている。
やや甘めのあんこで、能登大納言のふくよかな風味も感じる。十分に美味しいが、感動とまでは行かなかった(個人的な感想です)。
それでも珍しい「焼き立て こもかぶり」を目で楽しみ、2日間にわたって味わえたこと、これはレアな体験だった。
金沢あんこ文化の底力、やっぱりすごいな。
「風土菓 板屋本店」
所在地 石川・金沢市尾山町10-18
最寄り駅 JR金沢駅から歩くと約20分