週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

京都のすごみ😎神馬堂「やきもち」

 

秋は京都に行きたくなる。コロナで約3年ぶりの訪問となった。

 

まずはあんこ山脈の頂点の一つに草鞋(わらじ)を脱ぐことにした(江戸時代か?)。

 

これまで行けなかった、上賀茂神社門前にある「神馬堂(じんばどう)」

 

ここの名物「やきもち」(葵餅)は東京・深川不動尊前「清水屋」(今はない)のきんつばとともに、私にとっては特別な朝生のあんこ菓子(個人的な思い入れです)。

どちらも、左党であんこ好き、池波正太郎さんのエッセイで知り、いつか行って食べてみたいな、と思っていたもの。清水屋はとっくの昔に廃業しているので、私にとっては神馬堂のやきもちが「夢の残り」的な存在となっていた。

 

行列店で早朝に行かないと手に入りにくい。

 

「売り切れです。すんまへんなあ」でこれまで二度ほど討ち死に。予約もできることを知ったのは後のこと。たまたまなのか電話してもつながらないことも多い。

 

で、今回。電話してもお出にならなかったので、行列覚悟で早起きして、早朝8時半に到着した(基本的に午前7時から営業しているようだが、アバウトのようだ)。

 

だが、古い、立派な、いい店構えの前に人の気配はない。

あれっ、今日は休みではないはずだが。

 

またも縁がないか。あきらめかけたが、ふと見ると、板戸に手書きの紙が下がっていた。

 

読むと、「誠に勝手ながら、本日は前日までの予約分のみとさせて頂きます」うんぬん。

げっ。ため息が束になって足元に落ちた(意味不明)。

 

「おめえが悪いんだよ」と誰かに肩をたたかれるような徒労感にも襲われた。

 

と愚痴っぽく書いてしまったが、捨てる神あれば拾う神あり、ということもある。ここは上賀茂神社前なのだ。あんこの神様だっておいでになるかもしれない。

大鳥居をくぐって参拝することに。しばらく周辺を散策。

 

その約1時間後、奇跡が起きた

 

行列ができていた。

店が開いていた。何という展開か。愚痴もため息も文句もフトコロにしまい込んで、並ぶことにした。

 

で、ついにゲットとなった。長かったア~。

 

・今週のキラ星

 やきもち5個入り 650円(税込み)

 別に焼き立てを1個 130円(同)

 

【今回のセンターは?】

焼き立て後、餅もあんこも別格だった

 

神馬堂のやきもちは賞味期限が「本日中」

 

焼き立てをまずは食べる。別枠の一個。

 

ちょうど市をやっていたので、上賀茂神社敷地内で賞味することにした。

写真でおわかりのように、円状に見事な焼き色

 

粗めの餅粉が表面にかかり、目測だが、大きさは左右5~6センチくらい。厚みも2センチはある。

 

夜が明ける前からドスンドスンと餅を搗(つ)き、搗いた餅に手作業で自家製あんこ(つぶあん)を包み、形を整え、それを鉄板状の上(炭火?)で焼く。

明治5年(1872年)創業時からほとんど同じ製法。

 

メニューは「やきもち」一品だけ。約150年間やきもち一筋。これはすごいこと、だと思う。

 

〈賞味第1R 焼き立て後〉

焼き立てを食べてみたかったが、包む前に熱さを冷ましているのか、すでに熱くはないが、ほとんど焼き立てに近い。

 

パリパリ感も少し残っている。うっすらとあんこも見える。

手で割ろうとすると、餅の伸びが十分にある。

 

しっかりと搗(つ)かれているのに、伸びる。伸び方に歴史がある。

その奥から見事なつぶあん「ようおいではりましたなあ」(そんな感じ)と姿を現した。

 

つややかで濃いあずき色。ひと目でピュアなあんこだとわかる。

柔らかな餅とつぶあんが口に入れたとたん、極上の風味とともに吹き上がってくる(そんな感じ)。

 

これはすごいね。

つぶあんはほどよい甘さ、雑味のないあんこで、小豆の皮まで柔らかく炊かれていて、歯にかすかに引っかかる感触が絶妙と表現するほかはない。

 

私が食べたあん入り焼き餅(焼き大福)の中では別格の味わい、と思う。

 

〈賞味第2R  約8時間後〉

ホテルに戻って、午後6時過ぎ。最初の賞味から約8時間後。

 

包み紙(馬のイラストがシャレている)を取ると、5個のやきもちが整列していた。

 

よく見ると手包みなので一個一個微妙に違う。

焼き加減がいぶし銀のアートに近い、いい光景。

 

早朝の時よりも餅がほんの少し硬くなっていて、表現を変えると、より落ち着きが出ていて、よりなじんだ食感となっている、と思う。

焼き立てよりも、むしろ数時間置いた方がうまい、というファンも多い。

 

私自身はどちらも美味、というほかはない。

 

ほんの微妙な違いだが、この辺りは好みもあるので、立ち入らない(笑)。

オーブンがあったら、さらにあぶって食べるのも、また別の味わいが出ると思う。

 

「餅よし 餡更によし 焼き加減又良い」

 

これは店先に置いてあった店主の言葉だが、近江商人の「三方よし」のあんこ版とも言えなくもない、店主はユーモアもあるようだ。

 

神馬堂のやきもちにやきもちを焼きたくなってしまった(着地がダジャレとはね)。

 

「神馬堂」

所在地 京都市北区上賀茂御薗口町4

最寄り駅 京都駅から市バス