たい焼きが心にまで沁みる季節。
なので、久しぶりに人形町「柳屋」のたい焼きを食べたくなった。
甘酒横丁で昔ながらの一丁焼きを守っている、私の好きなたい焼き屋さんの一つ。
大正5年(1916年)創業。現在3代目。
景気のいいころは「玉ひで」で親子丼を食べた後、口直しに行列に並んで2匹ほど買い、ふうふうしながらよく食べたものだ。
今回も行列に並んで、焼き立てを何とかゲットした。
昔よりも行列が長くなった気がする。17~8人くらいが狭い店内で押しくらまんじゅうに近い状態。人間たい焼き?(ジョークです) これが意外に心地よい。
麻布十番浪花屋、四谷わかばとともに東京たい焼き御三家と称される、一丁焼きのたい焼き。
だが、たい焼き一本勝負はここだけ(夏場は小倉アイスもある)。
ただ食べるだけでは面白みがないので、時間差で味わいがどう変化するか、試してみたくなった。
①焼き立て⇒②翌日朝⇒③レンジとトースター
三つのパターンで賞味することにした。
冷凍保存も考えたが、「翌日までにお召し上がりください」というのが基本なので、ぎりぎりの楽しみ方。
・今回のゲット
6個入り(ひと箱) 税込み1200円(箱代含む)
※単品だと1匹180円(同)
賞味1R:午後3時半、焼き立て
焼き立ては皮がパリパリなのは承知しているが、食べる場所がない。約30分後、某所で賞味することにした。
しっかりした包装の箱を開けると、経木で包まれた状態で、木の香りとたい焼きの香りが交錯しながら鼻腔に来た。た・ま・ら・な・い、ね。
これぞあんこの聖地・人形町、さすが柳屋。ひとりつぶやく。
薄い皮はまだパリパリ感が残っていて、もっちり感が少し勝っている。
外側から透けて見えるあんこの存在感とほんの少しの焦げ目に胸が躍る。
手で割ると、ふくよかな自家製あんこがぎっしり。
昔のまま。
きれいな小豆色で、甘さも昔のまま、かなり抑えている。
北海道産の厳選あずきの風味を生かしたあんこ。
四谷「わかば」のあんこは塩気が強いが、この柳屋は塩をほとんど使わない。
そこは好みの分かれるところだが、困ったことに、私はどちらも大好きと来る。
無添加なので賞味期限が短い。
あんこはつぶあんだが、小豆の皮まで柔らかく炊かれている。
小麦粉ベースの皮とのバランスがとてもいい。
主役はあんこと決めているよう。
賞味2R:翌日午前8時(約17時間後)
箱入りのまま常温で保存。経木の香りが落ちていず、たい焼き自体はすっかり冷めている。
だが、全体的に空気になじんでいて、薄めの皮もぎゅっと詰まったつぶあんも美味さがほとんど落ちていない。重さは95グラム。
それどころか、むしろ落ち着いた、いい味わいすら感じる。
尻尾の先まであんこ、をさらに実感する。
使用している砂糖は多分上白糖だと思うが、つぶあんのふくよかな風味が夜気の中でゆっくりと熟成したような・・・ピュアなあずきをより感じる。
賞味3R:午後3時過ぎ(約24時間後)
電子レンジ(500W)で30秒、さらにオーブンで1分。
皮が焼き立てのようにパリパリに近くなる。中のあんこも温かい。
手で割ると、甘い湯気がいいね。
甘さが薄い。少し物足りないとも思えるが、つぶあん自体の美味さがじんわりと来る。
雑味のない、このつぶあんの美味さを思わない手はない。
一丁焼きのたい焼きの中で、柳屋のこだわりはやはり素晴らしいと思う。
混みあった店内でも店のスタッフの対応はけれん味がない。好感。
江戸の野暮ではなく、江戸の粋・・・その甘い遺伝子がここに残っている気がする。
「鯛焼 柳屋」