みちのくあんこ旅で見つけた朝ナマの原石たちをご紹介したい。
今回は盛岡「手づくりだんごの店 ふるさとや」の暖簾をくぐる。
東京下町の和菓子屋さんのような、敷居の低さ。
私の大好きなセピア色の小世界でもある。
早朝から地元客でにぎわう、人気店でもある。
だんご類からおはぎ、豆大福まで基本的に地元の素材を使い、昔ながらの無添加の餅菓子をつくり続けている、筋金入りのお店。
今年で創業31年目。なので、逆算すると1992年(平成4年)にこの場所でオープンしていることになる。
午前中で売り切れることも多いと聞いていたので、あらかじめいくつかを予約しておいた。これが功を奏した。
首都圏から東北道を北上したので、到着したのが午後3時過ぎだった。
ぎりぎりセーフ、かな。
木枠の古いショーケースにはだんご類やおはぎ、豆大福がかろうじて残っていた。
お茶餅(うちわ餅が訛ってお茶餅になったとか)という青森・弘前にも存在する平べったいみたらし団子も残っていた。ラッキー。
★今回ゲットしたキラ星たち
あずきだんご 1串130円(税込み)
草だんご 1串130円(同)
豆大福 1個160円(同)
おはぎ 1個120円(同)
お茶もち 1串108円(同)
【センターは?】
あずきだんごと豆大福の素朴なあんこ
掛け値なしにすべてのあんこが好みだった。
なので、一つだけ取り上げるのはむずかしい。
無理を承知で。
北海道産小豆と上白糖で炊いたあんこは、塩気が強めなのが特徴。
その素朴な洗練において、今回は豆大福とあずきだんごを両横綱に置きたい。
豆大福:一個のデカさと赤えんどう豆(黒豆かも)の押し出し感があんココロにずしりと来た。佇まいが素晴らしい。
賞味期限が「本日中」がベストなので、まっすぐホテルに戻って、味わうことに。
胴搗粉を使った柔らかな餅と中のつぶあんのたっぷり感。
表面がほんの少し固くなりつつあるのがわかった。
なので、朝ナマの王道ということになる。
つぶあんのボリュームと控えめな甘さ、しっとりと広がる素朴なあずきの風味、塩気のほんのり感。
赤えんどう豆は大きさからみて、黒豆ではないか。ふっくらと炊かれていて、塩気もある。
食べながら、東京の名店「群林堂」や「松島屋」の豆大福に劣らない、豆大福の親分を見つけた思い。
あずきだんご:ひと串4個。それも柔らかな上新粉の餅を一つひとつ丁寧につぶあんで包んでいる。
渋抜きを抑えた、北海道産小豆の素朴な風味。
塩気が強め。これが口中に広がると、忘れかけていた懐かしさに襲われる。
小豆の皮まで柔らかく炊かれたつぶあんの素朴が、食べ進むにつれて、「洗練とは違うあんこ自体の美味さ」を粘膜のセンサーにささやきかけてくる。
南部の風が吹き上がるよう。
草だんご:小豆だんごのあんことは違う、どこか東京の串だんごに近い。
草だんごは4個。上からべったりとつぶあんが乗っている。
つぶあんはテカリがあり、あずきだんごのような恐るべき素朴がない。
なので、最初食べたときに「これが一番うまい」と思ったほど。
東京下町のような、きれいなあんこ。
よもぎの風味。
これも実に美味だが、盛岡という風土を感じるのは、こちらではない。
ここは好みの問題だが。
おはぎ:これも一個が大きい。見事な小豆色のつぶあんが全体を覆っていて、真ん中から割ると、つぶあんの厚みがすごい。
このつぶあん、あずきだんごと同じあんこだと思う。
つまり素朴なあんこ。
塩気の効き方が絶妙で、食べ進むうちに「素朴な洗練」さえ感じる。
中は地場(紫波産ヒメノモチ)のもち米で、半殺しではなく、そのまま粒々感を感じるもち米。
食べながら、金沢「戸水屋」の素朴の極みのようなおはぎを思い出した。
甘すぎないあんこで、塩の絶妙な加減がたまらない。
おまけ「お茶もち」:うちわのような平べったい餅と醤油だれ(くるみ入り)が癖になる美味さだと思う。店の奥で炙っている。その香ばしさも伝わっている。
※2日後、弘前の老舗だんご屋「戸田うちわ餅店」ではゲットできなかったので、ここで食べれたことはラッキーだった。
《編集長のつぶやき》
▼朝ナマの人気店はタイミングが難しい。予約できない店も多い▼なので、空振りを承知で出たとこ勝負するしかない▼その意味でこの「ふるさとや」は対応がとても丁寧だった▼たまたま女将さんは午前中の仕事を終え不在だった▼あんこ旅の醍醐味の一つは朝ナマとの出会いだと思う。
「手づくりだんごの店 ふるさとや」
所在地 岩手・盛岡市天昌寺町3-31