令和4年も残すところあとわずか。
今年は楽天のサイトで「47都道府県あんこ菓子」(完全保存版)を書き上げ、東京FM(全国ネット)にゲスト出演するなど、餡ハッピーな年となった(テレビ数局からも声がかかったが、いくつかの理由で見送った。もったいなかった?)。
で、今回は特別編。倉庫にしまっておいたキラ星たちをステージに上げたい。
東京・目白の老舗「志むら」の3品。暖簾をくぐったのは先月で、「亥の子餅(いのこもち)」の季節だった。
上生菓子なので「日持ちしない」。なので、2階の喫茶室で賞味した。
亥の子餅を抹茶セット(税込み990円)にして、残りを同時に味わったが、だんご好きゆえに、もっとも心がときめいたのが「日吉団子(ひよしだんご)」だった。
●ゲットしたキラ星
亥の子餅 単品390円(税込み)
日吉団子 ひと串180円(同)
月かげ(あんドーナツ) 180円(同)
【センターは?】
本来なら質の高い「亥の子餅」だが、竹串のよもぎだんご(2個)があまりに美味そうだったので、こちらを選んだ。
ごらんの通り、舌触りのよさそうなこしあんとよもぎ餅のコラボ。
「志むら」のあんこの美味さはよく知られているが、このしっとりしたこしあんは思ったよりも塩気があり、甘さをしっかりコントロールしている。
北海道産小豆×ザラメ。それに塩、絶妙な塩梅だと思う。
よもぎ餅の柔らかさと風味が「春」を感じさせて、ひと串では足りないので、2串をペロリ(と表現したくなる)と味わった。
竹串の香りもほんのり。
「つらい日常(?)」を忘れさせてくれる、余韻の良さ。たまらないね。
【サイドは?】
やはりここは亥の子餅。江戸時代から続く特別な餅菓子で、子孫繁栄を願って、旧暦の亥の月(現在の11月)に食べる。イノシシの子供のような外観。茶席でも重宝されている。
「志むら」のものは焼き線を付けていないのが特徴。
片栗粉がきれいにかかった柔らかな求肥餅(ぎゅうひもち)と中のこしあんのバランスがとてもいい。
日吉団子のこしあんは塩気が強めだが、こちらのこしあんは塩気がない。
それがこしあんのきれいな風味をストレートに運んでくる。
甘さが上生菓子のもの。
こしあんだけでも数種類つくっているようで、そのこだわり方が「目白に志むらあり」というにふさわしい、と納得した。
「志むら」の懐の深さを表している一つが「月かげ」。
「月かげ」という菓名が面白い。小さなあんドーナツだが、中はつぶあんで、塩気が効いている。
上生菓子と庶民的なあんドーナツをほとんど同時並列的に置いているのが、敷居の低さと志の高さをよく表していると思う。
●あんポイント
昭和14年(1939年)青山で創業、戦後に目白に移転している。現在3代目。「九十九餅」が有名だが、2階の喫茶室では天然水のかき氷が人気。約5年前の初夏、ここで氷あずきを食べたが、絶壁から雪崩れ落ちるようなあんこのド迫力に驚かされた。
「志むら」
所在地 東京・豊島区目白3-13-3
最寄り駅 JR目白駅 歩約2~3分