城下町・会津若松には歴史のある和菓子屋が多い。
創業は明治時代末期。
「餅、赤飯、和菓子」と染め抜かれた日除けがどこか懐かしい。
餅菓子を中心に饅頭類も手づくり。下町感。
会津若松市内でも知る人ぞ知る隠れた「いぶし銀」でもある。
私の狙いは串あんだんご。
ひと昔前はいいだんご屋さんが多かったが、時代の流れか、ちゃんとした串あんだんごを作り続けている店が少なくなった。
もう一つの狙いはあわ饅頭。
江戸時代末期に「災難にあわないように」という願いを込めて作られた、会津地方独特の饅頭。
粟(あわ)ともち米を混ぜた柔らかな生地の饅頭で、中はこしあんが一般的。
円蔵寺のある柳津町が本場だが、日本一本店の「あわまんじゅう」はお世辞抜きに柳津に負けていない。
高くて美味いは当たり前、安くて美味いは店主のポリシーがなければ、とても維持できない。
ゆえに、コスパを大事にするこの店は私の好きな和菓子屋さんでもある。
★本日のキラ星たち
串あんだんご 1本110円(税込み)
あわまんじゅう 1個100円(同)
おはぎ(つぶあん)1個110円(同)
【センターは?】
串あんだんごvsあわまんじゅう
私にとっては究極の選択となった。
どちらも思いの強いあんこ菓子。
なので、センターにはこの二品を置いた。二者択二(笑)。
〈串あんだんご〉
ごらんの通り、しっとりとした自家製こしあんが上新粉餅をしっかりと包み込んでいる。
昔からこしあん一種類だけ。
ひと串3個。昔より少し小ぶりになったが、この時代に手間暇のかかる作業を続け、しかも安く提供する。頭が下がる。
小豆は北海道産を使用(製餡所から生餡を仕入れて、直焚きしている)。砂糖は上白糖。塩も少し加えているようだ。
京都のおまん屋に負けない、会津の庶民的なだんご。
●味わい
こしあんのしっとりとした、甘さを抑えた、湧き水のようなピュアな味わいにホッとする。
ひと口で持っていかれそうになる。
私にとっては東京・日暮里「羽二重団子」に負けない、コスパを考えると、こちらの方がよりシンパシーを感じる。
上新粉のだんごも柔らかい。
添加物などは使っていないので、賞味期限が「今日明日中」。
なので、ホテルに戻ってからゆっくり味わった。
今ではひょっとしてシーラカンス並みの希少な串あんだんご。
3代目が板場で作業中だったのでお話は聞けなかったが、女将さんの物腰もキュンとくるものがある。
素晴らしき、会津の串あんだんご文化。
そう心の中で叫びたくなった(あんこバカの叫び?)。
〈あわまんじゅう〉
皮はクチナシで黄色く着色していて、これが柳津系あわ饅頭の特徴でもある。
「日本一本店」のものは形がやや俵型。
大きさも気持ち大き目。
うっすらとあんこが透けて見える。そそられる。
●味わい
粟餅(あわもち)の柔らかさともっちり感がすごい。それに粒々感。
菓子楊枝で切るのもむずかしい。手にくっつく。
中はこしあんで、しっとりと仕上げられていて、甘さが控えめ。
粟餅との相性が絶妙で、ひと口でふわりと昇天したくなる(表現がヘンかな?)
日持ちしないのが難点といえば難点で、それゆえに個人的な好みで言えば、饅頭界の隠れ横綱ではないかと思う。
浅草「梅園」の「あわぜんざい」をそのまま饅頭にしたような、極上の美味さだと表現したくなる(ほめすぎ? いやいやとつぶやきたくなる)。
あわ独特の食感とえぐみが絶妙にとろけ合う。
ほんのりといい塩気が余韻として残る。
【サイドはおはぎ(つぶあん)】
おはぎはこの時期のみの販売。
つぶあん一種類しか作っていないので売り切れも早い。
円形で大きさは5センチ強くらいだが、つぶあんがいい小倉色で、半殺しのもち米とよく合っている。
渋抜きを抑えた素朴なつぶあん。やや甘め。
塩気もほんのり。
賞味期限が「できれば今日中」だったので、夜、ホテルで味わう。
夜のおはぎも悪くない。
田舎の素朴な、しかし、しっかり作られたおはぎ。
こういうお店が時代悪に染まらずに、未来へとつながって行ってほしい。
正座して、ごちそうさま。
「日本一本店」
所在地 福島・会津若松市栄町7-21