かき氷は宇治金時かあずきに限る。
ここ数年のかき氷ブームは異常だと思う。
かき氷のビッグバンってとこか。
ワンダーなかき氷がどんどん誕生している。これは悪い話ではない。東京・谷中の「ひみつ堂」がフツーに見えてきたりする。
このかき氷を初めて見たとき、口が開いたまま、しばし呆然としてしまった。
東京・目白「志むら」の「氷あずき」(900円)。
南アルプス・八ヶ岳の天然水で作った、ふわふわのかき氷の高さは優に25センチほど。
それが断崖絶壁のようにそそり立っていた。まるでアイガー北壁だよ。
それに輪をかけて驚いたのは、そこからあんこが滝のように流れ落ちていたこと。
なんじゃ、これは? 反則すれすれ。
茹であずきのような緩いあんこで、それが滝壺のように麓に広がっていた。
頂上からあんこの滝壺に飛び込みたい。
それからはある種、夢の時間。
甘さはかなり抑えられていて、小豆の素朴な風味が全開していた。ややもすると、物足りないほど。
不思議だが、氷が歯に滲みない。
愛ある氷、とでも表現したくなった。愛のない氷もある。
あずき好きにはたまらない、大人のかき氷だと思う。
客のほとんどは女性。
「生いちご」がここの人気ナンバー1だが、個人的には「あずき」には敵わない。
北海道十勝産の小豆とグラニュー糖で、じっくりと炊いた素朴で品のいいあんこ。
それをゆる~く、ゆる~く。
美味いスイーツを見つける才能は男よりも女の方が勝っている、と思う。
昭和14年、青山で創業。東京大空襲後、終戦と同時に昭和20年、目白に移転。
女性のいるところ甘い蜜あり、は多分本当だ。
今では、東京でも指折りの和菓子屋兼かき氷カフェとなっている。
所在地 東京・豊島区目白3-13-3
最寄駅 JR山手線目白駅下車