コロナも収まりそうにないので、今回はレアな季節限定生菓子を取り上げたい。
生活クラブ生協からお取り寄せしたもの。
これがちょっと驚きだった。
夏季限定の「笹餅」と「麩(ふ)まんじゅう」。
無添加冷凍和菓子を初めて世に送り出した「芽吹き屋(めぶきや=阿部製粉)」の二品。
未だ感染者ゼロという奇跡の県、岩手・花巻市に本店がある、ユニークな和菓子屋さん。
何がすごいかって?
まだ無添加の生菓子を冷凍して販売するという発想がなかった昭和51年(1976年)、研究に研究を重ね「世界で初めて冷凍大福」をデビューさせている。フロンティア精神。
ある種コロンブスの卵かもしれない。今ではみたらし団子からおはぎまで冷凍生菓子の種類も多い(オンラインショップでも買える)。
中でも作家の林真理子さんもファンだという「くるみ大福」や「三色だんご」が目玉商品だが、私も以前、このくるみ大福を東銀座「いわて銀河プラザ」で買い求め、冷凍とは思えない美味さに舌つづみを打ったものだ。
今回はレアな「笹餅」(生活クラブ価格 4個入り税込み378円)と「麩まんじゅう」(同3個入り 税込み490円)。
まずは笹餅から賞味する。自然解凍で待つこと2時間。すると、みずみずしい熊笹の上でこしあん入りよもぎ餅が正座していた(比喩です)。
魔法のような変身、と言いたくなる。自然できれいなよもぎ色。1個が50グラム。
頬張ると、よもぎ(若芽)の香りと新鮮な笹の香りが、そのもちっとした食感とともに、口の中で新花巻音頭を踊り始めるよう。心が躍る。
中のこしあんはしっとりとしていて、甘さが抑え気味。塩気とのバランスがとてもいい。いいあんこの粒子を感じる。
あんこは芽吹き屋のレシピで製餡所に依頼しているようだが、小豆は北海道産を使用している。
製粉業が母体なので、地場のうるち米を搗いた餅の美味さは折り紙付きだが、あんこへのこだわりも食べてみるとよくわかる。組み合わせに試行錯誤した末の上質のあんこ。
よもぎよりも笹の香りがやや強め。それが冷たい美味を押し上げている。
とりあえず2個ぺろりと平らげ、麩まんじゅうへと手が伸びる。
青々とした熊笹で三角巻きにされた重厚なお姿。いいね。冷たい麦茶をひと口、心を静めてがら指先でそっと脱がしていく(この表現、エロティックすぎるかな)。
こちらは1個150グラムと笹餅よりも重い。
生麩に青のりを練り込んだ、ぷるるんとした手触り。指先の冷たい感触が心地よい。
中はなめらかなこしあんで、笹餅と同じこしあんだが、口の中で溶け合う感覚がより鮮烈に感じる。これも組み合わせの妙で、青のりのほのかな香りが京都の上菓子屋の麩まんじゅうとそう変わらない印象を演出していると思う。
冷凍(マイナス40度)でここまで作り立ての感触を舌に残すのだから、やはりすごい技術だと思う。
現在2代目。製粉業として昭和29年(1954年)に創業、そこから和菓子を冷凍にして製造販売するという挑戦力が並ではない。
物流の発達で今では老舗和菓子屋も餅菓子や生菓子を冷凍して宅配に応じるのが珍しくなくなりつつある。
コロナが終息しそうにない中、元祖冷凍和菓子屋さんの目の付け所とチャレンジ精神に敬意を表したい。
※今回の商品は生活クラブ仕様です。