コロナ自粛で体半分だけお取り寄せにハマっている。
今回ご紹介するのは、個人的な歴史だが、あんこ好きには避けて通れない逸品だと断言してしまおう。
柔らかな求肥餅(ぎゅうひもち)をほろほろとこぼれ落ちそうな丹波大納言あんこで羊羹状に包み込んだ「あも」(1棹)、水ようかん(2個)、栗蒸し羊羹(2個)、梅ゼリー(3個)をセットにした叶匠壽庵(かのうしょうじゅあん)の「銘菓詰合せ 夏」(税込み 3456円)。
主役はもちろん「あも」。御所の女官言葉で「お餅(もち)」のこと。これを商品名にしたのだから、目の付け所が凄すぎ。
つい先日のこと。遠出できないストレスがマックスになりかけたあんこ脳にポッと浮かび上がってきた。あの、奥ゆかしくもなまかしいお姿。
あんこ界のたおやかな女官、ってところかな。
クロネコで届くと、冷蔵庫で30分~1時間ほど冷やしてから、水ようかん⇒栗山家(栗蒸し羊羹の一種)⇒あもの順で賞味することにした(梅のゼリー「標野(しめの)」はあんこではないが、夏の彩りで加えてみた)。
水ようかんは孟宗竹(プラスティック製)の器に収まっていて、こしあんと寒天の配合がなめらかで上質、やや甘めで、塩気もほんのり。個人的な好みでは先日食べた日光「綿半」の水ようかんほどのコクとスーッと抜けていく余韻は気持ち少ない気がするが、いい水ようかんなのは間違いない。
栗山家(くりさんが)は柔らかな、明るいこしあん蒸し羊羹の中に蜜煮した栗が一個入っていて、栗がいい歯ごたえ。こしあんは脇役で、ぷるぷると手にくっつくのが好みの別れるところ。やや甘め。冷たい栗の美味がすべてを救っている気がする。
さて、本命の「あも」。10年以上前、日本橋高島屋でこれを初めて買い求めて、その後賞味した時に「ほおお~、これはすげえ」と脳内がしびれた。皮までとろとろと炊かれた丹波大納言小豆の美味さ。思い出すだけで、唾液がたまる(失礼、はしたない)。
私にとっては一つの甘い事件でもあった。コスパもよかったのもプラス評価。
今回はお取り寄せ。
最初はほとんど冷やさずに賞味した。だが、包丁を入れると、中の求肥餅(ぎゅうひもち)がどろりと流れ出てきて、べたべたとくっつく。
なので、冷蔵庫に30分ほど入れて、少し冷やしてから、再び包丁を入れる(それでも求肥餅は異様に柔らかい)。
口の中に広がる丹波大納言小豆のあんこの秀逸な印象は変わらない。
窓からの光を通すと、大納言小豆の形はくっきりしているのに、口に入れると、皮までとろりと柔らかい。よく見るとが呉(ご=あずきの中の実の部分)と艶やかに溶け込んだ半透明の寒天とコラボして、秘密の清流アートのようで、気を抜くとグイと引き込まれそうになる。蜜の滴り。
危ないアブナイ。
ゆっくりと口に入れる。
なぜか最初に食べたときほどの感動の波は来ないが、美味なのは変わらない。
あんこ炊きのとき、砂糖はグラニュー糖を使っているようで、やや甘めだが、すっきりしたきれいな余韻を生んでいる。大納言小豆の余韻はしばらく舌に残る。
少し冷やした方が美味さが2割増しになる。
丹波大納言小豆をこの価格(単品なら1棹 税込み1296円)で惜しげもなく使っているのが叶匠壽庵の凄いところで、この一品で、「とらや」ほどの歴史のない叶匠壽庵をここまで大きくしたというのもなるほどと納得する。
創業は昭和33年(1952年)と老舗としての歴史は浅い。しかも創業者は滋賀県大津市の元公務員で、和菓子作りとは無縁だった。そのサクセスストーリーは長くなるので、ここでは省略したい。
現在3代目。「とらや」の後を追う、新興勢力の有力候補でもある。
大きくなっても手作りにこだわり、「あも」のあんこは専任のあんこ職人が毎朝、銅釜でじっくり炊いているという。そのこだわりは捨ててほしくない。
冷たい梅の寒天ゼリー「標野(しめの)」は箸休めにもなる。
コロナのおかげで夏のお取り寄せを楽しむ。これもコロナ包囲網の中の新しい生活スタイルかもしれない。
今回のお取り寄せ 通販サイト「叶匠壽庵LOHACOストア」https://lohaco.jp/store/kanou/
※あんこなニュースです。「楽天ソレドコ」最新記事で、私のお取り寄せおすすめの和菓子「西谷堂の京のでっちようかん3種」と「太宰府名物梅が枝餅(やす武)」の記事が掲載されてます。よかったら寄ってみてくださいな。