今回は茨城の古都・古河市で出会った素晴らしき和菓子屋さんについて書きたい。
「プロフェショナル」と呼びたくなる和菓子職人さんはそう多くはないが、ここは首都圏でもいぶし銀のオーラを放つ店の一つだと思う。隠れた名店。
蔵造りの店構え。
「和心 いちえ」の看板と暖簾。「わらび餅」のノボリ。
上生菓子から酒まんじゅう、どら焼きまで、作っている和菓子がいずれも珠玉のようで、菓銘も京菓子の伝統を引き継いでいて、一品一品が凝っている。
志の高さを感じる店。
★ゲットしたキラ星
わらび餅 1個130円
冬の便り(上生菓子) 280円
大納言甘納豆めぐみ 一袋700円
夢咲まんじゅう(酒饅頭)120円
栗薯蕷(上生菓子)180円
鮒焼(半生焼き菓子)130円
※価格はすべて税別です。
【センターは?】
ゲットした和菓子は量よりも質にこだわったものであることが、見た目から食感まで一貫している。
なので、どれをセンターに持ってきても耐えられるレベルだが、私の個人的な好みから、「わらび餅」を選んだ。
わらび餅:まずはお姿を見ていただきたい。
ほぼ球形で、直径45ミリほど。ほどよい大きさ。重さは約50グラム。
焦がしきな粉のかかり具合、本わらび粉を使った柔らかなわらび餅、かすかに透けて見えるこしあん。
秘すれば花の小世界。
ひと目でこれは美味い、と確信した。
〈味は?〉わらび餅は薄い膜のようで、ぷにゅりとした柔らかな歯ざわり。焦がしきな粉の香ばしさがふわりと来た。
驚くべきはたっぷりと詰まった自家製こしあん。
きれいな藤紫色。
しっとりと舌に絡みついてきた。
甘さが控えめで、むしろあっさりしている。
小豆は十勝産「ふじむらさき」を使用、この一点だけでも店主のこだわりがわかる。
砂糖も基本的に白ザラメ。
雑味のない、きめ細やかなこしあんで、舌に残る余韻もとてもいい。
●あんヒストリー 創業は2003年(平成15年)。古河市の老舗和菓子店「はつせ」の次男で、長男が「はつせ」を受け継ぎ、次男がこの「いちえ」を創業している。 店名は一期一会から取っているようだ。和菓子専門学校を出てから東京の老舗で修業し、父親の「はつせ」に入り、そこから独立している。達人が腕を競う「TVチャンピオン」(テレビ東京)にも出場している。
【サイドは?】
上生菓子「冬便り」:羊羹と浮島(蒸し生地)、3層の美しい生菓子で、雪の結晶のアクセントも効いている。
すっきりとした練り羊羹と儚い甘さの浮島のコラボが素晴らしい。上生菓子は3種類ほど置いてあったが、菓銘も含めて、店名通り「和心」を感じさせてくれる。後味がきれい。
大納言かのこ「めぐみ」:高級な丹波大納言をじっくりと蜜煮した上質な甘納豆。ふっくらと煮詰められていて、個人的にはとても気に入った。
小豆の凝縮した風味を楽しみたい人にはおすすめ。皮まで柔らかい。
夢咲まんじゅう:小ぶりな酒饅頭で、酒種のいい香りと中のこしあんがいい具合に広がる。地場の酒蔵の酒粕を使用。ここにも手抜きがない。
栗薯蕷(くりじょうよ):凝った薯蕷饅頭で、中は栗あん。栗は熊本産。小ぶりだが、甘さを抑えた栗あんと薯蕷皮(米粉と大和芋の皮)のマリアージュが素晴らしい。
鮒焼:古河名物「鮒(ふな)の甘露煮」を形どった一品。黒糖を使ったしっとりした半生焼き菓子で、中のつぶあんとよく合っている。ねっとりとした食感がクセになりそう。
《小豆のつぶやき》
▼ローカルでこれだけの和菓子をつくり続けるのは凄いことと思う▼店主と女将さんの二人三脚ぶりが伝わってくる▼東京ならこの価格の倍くらいの内容ではないかな▼ベースの小豆に希少な「ふじむらさき」を使っていることもあんこ好きの心がくすぐられてしまった。
「和心 いちえ」
所在地 茨城・古河市東1-3-10