歴史のある町にはいい和菓子屋が多い。
古河公方で知られる、茨城・古河で出会ったのが、「御菓子司 はつせ」の「わらび餅」(こしあん入り)だった。
まずその色に心がときめいた。
きな粉がかかっているのが定番だが、ここのは少し違った。
これってチョコレートトリュフではないか?
そう錯覚しそうな、濃い焦がしきな粉がたっぷりかかっていた。
「珍しいですね」
感じのいい女性スタッフに言うと、「よく言われます」とほほ笑んだ。
一箱10個入りが置かれていたが、「1個からでも大丈夫ですよ」。
ここが日本の和菓子屋さんのいいところで、京都の老舗でも同じ対応をしてくれることが多い。敷居が高くない。
添加物ゼロなので、日持ちしない。
まずは6個(税別120円×6)をゲット。
花桃と桜が満開だった古河総合公園帰りだったこともあり、わらび餅の隣に可憐に咲いていた(残り1個だった)「桜まんじゅう」(税別130円)、それにこの店の目玉でもある「しら玉」(同75円×2)、大納言小豆の「さざれ石」(同130円)も買い求めた。
台湾帰りの友人からもらった「凍頂ウーロン茶」で賞味することにした。このマッチングは悪くない、と思う。
焦がしきな粉がたっぷりかかったわらび餅は、フツーのきな粉よりも香ばしさが口の中で立ってくる。ホントです。
本わらび粉を使ったわらび餅の質の高さと、中のこしあんの美味さが半端ではない。ぷるるん感とみずみずしいこしあん。
北海道十勝産小豆のそよ風に舌がしびれる。
こしあんも自家製。
濃い藤色のなめらかな、上質のこしあん。
ほどよい甘さと口どけの素晴らしさ。
焦がしきな粉の風味がしばらくの間、口内にとどまる。
これはたまらん、たまらんのう・・・そうつぶやきたくなる。
店の創業は昭和33年(1958年)で、現在2代目。
食べ終えてから気になって、追加取材すると、2代目は東京・赤坂の御菓子司「塩野」で修業したお方だった。
レベルの高さになるほど、と納得。
高ビーでないことも好感。
古河公方は鎌倉から来たが、ここは赤坂経由で来た、ということになる。
ちなみに以前私が感動した群馬・桐生の「御菓子司 あら木」の店主も「塩野」の出だった。塩野、恐るべし。
残り一個となっていた「桜まんじゅう」は皮につくね芋を使った薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)で、中はきれいなこしあん。
皮の清涼感といい、こしあんの口どけといい、文句のつけようがない。
塩漬けした桜の花びらの香りが余韻を彩る。
「しら玉」はウズラの卵大の小ぶりで、外側をホワイトチョコレートのようなミルクでコーティング、中のあんこは白あんに黄身を練り込んだような、洋菓子の要素も取り入れた逸品だと思う。
口に入れたとたん、スーッと溶けていく感覚にちょっと驚く。クリーミーさ、マックスだよ。
大納言小豆の「さざれ石」も表面の糖化したじゃりじゃり感がイケた。
改めてあんこの神様にかしわ手・・・だからあんこ旅はやめられない。
所在地 茨城・古河市横山町1-14-12