週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

京風炙りだんご&甘夏どら焼き

 

編集長「熊谷で面白い店見つけたよ。京都で11年間修業してから、ふるさとの熊谷で和菓子屋さんを始めたそうだよ。シンプルな店構えで、中に入ったら、きれいな和菓子が並んでた。小ぶりなどら焼きから上生菓子まで。じっくり見たら、一つひとつがすごいんだ。豆大福は売り切れてたけどね」

 

あん子コロナで京都に行けないストレスが吹っ飛んだってわけね。でも本場の京都で11年はすごいわねえ。編集長だったらひと月も持たない(笑)」

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編集長「多分1日で天国行きだ。店内に小さなテーブル席があったので『ここで食べれますか?』と聞いたら『どうぞ』と言うので、看板の一つでもある炙りだんごと上生菓子(薯蕷きんとん)を食べたよ。さり気なくお茶をサービスしてくれてね、いい時間だった。まさか熊谷でこういう店に出会えるとは」

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あん子「ふん、よかったわね。でも熊谷に失礼よ・・・で、お味はどうだったのよ。早く言ってよ」

 

編集長「京都の粋(すい)を感じた。頭の中で蝶々が飛んだよ。上生菓子のレベルは北関東ではあまりお目に掛かれないレベル(失礼)。へえ~となったのは炙りだんご。珍しい松葉竹串の炙りだんごで、5種類あるうち、こしあんと京風白みそだれ、それに黒ゴマだれを食べた。目、鼻、舌・・・五感で堪能できたよ。小ぶりだけど繊細、京都のはんなりが見事に詰まってた。店主の腕がわかった」

 

あん子「関東で松葉竹串の炙りだんごなんて、聞いたことないわ。フツーの一本竹串とは違うんでしょ? で今週のメーンはそれ?」

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編集長「写真で判断してほしい。本音で言うと迷った。その他にも上質を感じさせる和菓子が並んでいたからね。ていねいな餡作り、アイデア力、地元愛・・・アラ探ししたけど欠点が見当たらない。ま、あえて言うと、全体的に商品が小ぶりなことくらいかな」

 

あん子「それだって京都の粋でしょ? 編集長みたいなガサツなお方にはわからないかもね(笑)。内容に比べて値段もリーズナブルだし、ある意味、熊谷を舞台にすごいチャレンジをしてる和菓子屋さん、と言えなくもない」

 

編集長「エラソーに(笑)。そのひと言で本日のラインアップが決まった。では、しゃなりと行ってみよう」

 

【今週のメーン】

「和菓子処 かんだ和彩」

京わらびvs甘夏どら焼き

 

この店の実力を計るにはこの2品を取り上げるのがわかりやすいと思う。

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「京わらび」(税別 180円)は本わらび粉の練り方がひと味違った。「絹練り」と冠を付けているだけあって、糸を引くようなねっとり感が上質。中のこしあんはなめらかでみずみずしい。青紫色の、いいあんこの粒子が脳内できらめくよう。

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ほどよい甘さ。舌の上でスーッととろける感覚は本場の京都を感じさせる。11年の修業はダテではないことがわかる。

 

「甘夏どら焼き」(同 160円)は粒あんと甘夏のピールを挟み、一見ミスマッチかも、と思ったが、これが絶妙にマッチングしていた。

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つややかな粒あんはふくよかな、噛んだ瞬間、そよ風が吹き上がるような、いい小豆の風味が閉じ込められていた。京都の、塩気を感じさせない、雑味のない甘さ。

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それが甘夏のピールと愛し合い、1+1=3の世界を現出させている。

 

粒あんほのかな苦みがこんなに合うとは。

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大きさは日本橋うさぎやなどより一回り以上小さい。手のひらに載るほどのサイズ。

 

1枚1枚手焼きしているのがわかる、香ばしさとしっとりした歯ごたえ。ムラのない焼き色。

 

私の大好きな京都・松原通「松壽軒」の「みかさ」を思い出した。

 

小麦粉は評価の高い熊谷産あやひかりを使っているのも好感。

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あんこの基本、小豆は北海道産。砂糖はグラニュー糖。和菓子の種類によって素材も炊き方も変えているようだ。いい店の条件の一つ。

 

上生菓子と創作どら焼き。

 

ここにもあんこの神様に魅入られた、凄腕の和菓子職人がいる、と実感した。

 

あっ、忘れていた。この「かんだ和彩」の由来が泣かせる。父母の代まで熊谷で代々続く和服の仕立て屋だった。「神田和裁」の屋号をほとんどそのまま引き継いでいる。仕立て屋を継がなかったことが店名を残した理由のようだ。

 

和菓子の専門学校を卒業後、千葉・船橋の「菓匠 白妙」で5年間修業、そこから京都「京菓匠 游月(ゆうづき)」に移り、そこでさらに11年間、腕を磨いた後、故郷の熊谷に戻り、2015年11月にこの地でオープンしている。

 

【今週のサブメーン】

炙りだんご3種こしあん、京風白みそ、黒ゴマ)

 

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松葉の竹串を使った炙りだんごは関東では珍しい。最初見たとき、京都・今宮神社門前の炙り餅を連想してしまった。

 

あちらは1000年ほどの歴史があり、白みそ1種類だけだが、こちらは平成⇒令和で5年ほどの歴史。しかも種類は5種類ほど。歴史の点と線が面白い。

 

今回食べたのはこしあん(1串 税込み90円)、京風白みそ(同 90円)、黒ゴマ(同 100円)の3種類。

 

二股の細い竹串に5個の小さな炙りだんごが刺さり、そこにこしあん、京風白みそ、頃ゴマがそれぞれほどよくたっぷり乗っている。

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こしあんはなめらかな自家製で、きれいな余韻が広がる。なによりもだんごが美味。手焼きの加減、しかも餅粉のように柔らかい。米粉に餅粉を加えているかもしれない。

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京風白みそは上品な甘辛具合が舌をリセットさせてくれる。

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黒ゴマはごまの風味が濃厚。黒ゴマ好きにはたまらない味わい。

 

京都の粋(すい)が熊谷と言う関東の気風に根付くか、注目したい。江戸時代、京からの下りものが和菓子屋番付の上位に並んでいたことを思うと、令和のこの時代に、新しい番付表ができてもおかしくはない。

 

京都✖熊谷、つまり京熊の新しい和菓子の世界に注目したい。

 

●所在地

「和菓子処 かんだ和彩」 埼玉・熊谷市鎌倉町2 星渓園そば

 

 

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