週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

風味圧巻「饅頭界のブスカワ」比べ

 

今回は究極の田舎まんじゅうを取り上げたい。

 

京都の上生菓子織部まんじゅう」の対極とも言える。

 

初めて対面したとき、あまりの容貌魁偉(ようぼうかいい)さに息を飲んでしまった。

 

まるでげんこつ、大きさもげんこつ大。蒸かし立ての表面は旨そうなテカリを発散していて、しかもひび割れまで走っている。

 

なんちゅうお饅頭か。

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表現を変えると、まんじゅう界のブス猫と言いたくなる。

 

愛おしいブス猫。ブスカワこっちのたとえの方が近い。

 

手で割ると、皮のもっちり感、ふかふか感、中にぎっしりと詰まったあんこ。

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このあんこがあまりに素朴で、ほとんど渋抜きをしていないよう。

 

甘さと塩気がほどよい。横綱格の不格好まんじゅうだと思う。

 

「人もまんじゅうも外見で判断しちゃァいけニャーぜ

 

奥からそんなつぶやきが聞こえてきた。

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利根川と江戸川の分岐点、茨城・猿島群境町にある「花家(はなや)」の「小麦まんじゅう」である。昔からこの周辺で作られていた郷土まんじゅう。

 

写真右からこしあん、つぶしあん、みそ(甘味噌)の3種類。それぞれ130円(税込み)。

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地場の小麦粉に沖縄産黒糖が練り込まれていて、蒸し籠の匂いも食欲をそそる。

 

一番気に行ったのはしっとり感のあるこしあんで、塩気が強め。こしあんのはみ出し方(にじみ方)が心つかまれる。

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かぶりつくと、その素朴な美味さに「ん?」となる。

 

続いて「うんめえ」が飛び出してくる。

 

つぶしあん、みそ(地場の甘味噌)も素朴に美味い。

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古民家の店構えが江戸の村を思わせるが、店の創業は昭和44年(1969年)とそう古くはない。現在2代目。おばさんスタッフが3~4人早朝からまんじゅう作りに励んでいる。たくましい。

 

ここでもう一軒、私のお気に入り、小麦まんじゅうの隠れ名店をご紹介したい。

 

お隣の古都・古河市の中心、御茶屋口にひっそりとある「内田茶店(うちだちゃてん)」

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茶園が本業だが、お客にお茶を出して、ついでに手作りの小麦まんじゅうを出したところ、これが評判を呼んで、いつしか販売するようになった、というもの。

 

「花家」よりもデカい。ひび割れも「まんじゅう界のブスカワ猫

 

つぶしあん一種類だけ(税込み 110円)。

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このあんこがたまらなく美味い。

 

花家よりも小豆の風味がぐわんと広がってくる(個人的な感想ですが)。

 

ご高齢の三代目店主によると、茶園としての創業は明治末で、小麦まんじゅうを製造販売し始めたのは12年前から。看板には「小麦まんぢゅう」の表記。「まんじゅう」ではなく「まんぢゅう」(!)。

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隣に板場を造り、女将さんがまんじゅう作り担当。食べるとわかるがあんこ作りの才能はかなりのものだと思う。手の匂いのする自家製あんこ。

 

小豆は契約農家のえりも小豆を使い、砂糖は三温糖。銅鍋でほぼ毎日炊いている。

 

つややかな小倉色のつぶしあんで、塩気のほんのり具合も絶妙。

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つぶつぶ感をわざと残していて、サトウキビのいい香りも残しているような、穏やかな甘さがたまらなく美味い。甘さは強め。

 

皮はやはり地場の小麦粉。沖縄産黒糖を練り込んでいるのも「花家」とほぼ同じ。

 

小麦の素朴とつぶしあんの吹き上がりが口の中で怒涛の風味となる。

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ただ・・・2年前に来た時よりもあんこの量がほんの少し減った感じがしたが、あるいは勘違いかもしれない。

 

コスパの良さは折り紙付き。

 

ファンが多く、作る数も限られているので、午前中に売り切れることも多い。

 

賞味期限は翌日まで(添加物がゼロ)。

 

作り立てが一番美味いが、冷凍して保存してもいい。レンジでチンすると、蒸かし立ての美味さがよみがえる。

 

「花家」 

所在地 茨城・猿島郡境町1888-2

最寄駅 JR古河駅から境車庫行バス(約40分)

「内田茶店

所在地 茨城・古河市中央町3-2-14

最寄駅 JR古河駅から歩いて約15分

 

               

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