コロナ禍で地方の和菓子屋さんが苦境に陥っている。
今年の1月中旬、たまたまネットで熱海の老舗和菓子屋さんが「助けてください」と支援を呼び掛けている記事を見た。
見たことのある店主と娘さん。
熱海の老舗和菓子屋「本家ときわぎ」だった。羊羹(ようかん)の名店でもある。
歴史ある人気の老舗がなぜ?
すぐに電話したが、つながらない。
ようやくつながったのが先月中旬だった。
支援の注文やら励ましやらが殺到したようで、たまたま電話口に出た4代目若女将と少し雑談した。
観光客減などで深刻な状況に陥ったことがわかった。他の真面目な和菓子屋さんも状況は同じではないか。
去年春に訪れて、この老舗の珍しい乾燥羊羹「常盤木(6本入り)」を「週刊あんこ」で取り上げている。
その時はお客がひっきりなしで、わらび餅やうぐいす餅、きび餅などは売り切れていた。歴史的な建物、店内の活気、対面販売のポリシー・・・創業大正7年(1918年)の老舗の風格が滲み出ていた。
まさかのSOS。緊急事態宣言で状況がさらに悪化していることが想像できた。
その場ですぐに注文。前回は買えなかった「百年羊羹」4種。「本煉り」「小倉」「抹茶」「梅」(各1棹 税込み900円)。合計3600円なり。
4代目若女将は思ったよりも明るい声で、コロナに負けない決意みたいなものが電話口から伝わった。
羊羹の賞味期限は一般的に1~2か月が目安だが、ここの羊羹は甘さを押さえ、創業当時からの枠流し製法を続けている。添加物はなし。なので「約2週間です」と短め。
ベースは銅釜で北海道十勝産小豆を炊き、砂糖は上白糖、それに国内産寒天でじっくりと煉り上げていく。昔ながらの職人の手の匂いがする羊羹。
白あんは白いんげん豆(カナダ産)を使用しているようだ。北海道産が手に入りにくくなっているとか。
さて、いよいよ賞味の時間。羊羹にはコーヒーが意外に合うので、ここは気持ちだけでも正座気分で味わうことにした。柏手4つ。
①本煉り 濃い羊羹色で本格的なテカリ。少し糖化しかかっているのが、たまらない。穏やかでやさしい、固めの歯ざわり。口どけがとてもいい。添加物のない、いい小豆の風味が煉り込まれている。正攻法の、甘さを抑えた、昔の羊羹ってこうだったろうな、と思わせる本煉りだと思う。私的には好みの羊羹。
②小倉 「とらや」の夜の梅と同じスタイル。大納言小豆(北海道十勝産)が歯ざわりに変化を付けている。その分、本煉りよりも小豆感が強い。小豆好きにはおすすめ。
③抹茶 白いんげんベースに京都の抹茶を練り込んでいて、濃厚で深い色あい。ハートをギュッとつかまれる。ほどよい抹茶の風味。控えめな甘さ。地味だが、しっかりとした歯触り。香料や着色料の気配はない。
④梅 淡いピンク色。白いんげんと寒天に地場の梅肉がほどよく煉り込まれている。梅の香りがほんのりと口中に広がる感覚は悪くない。これも甘さが控えめ。
この4種の他に栗、柚子(ゆず)があるが、今回は予算の関係で手配できなかった(涙)。
最後に個人的な好みをあえて言うと、①抹茶②本煉り③梅④小倉の順。いずれもしっかりした、古くからのいい羊羹だと思う。余分な自己主張がない。
日を変えて食べると、この順位も変わるかもしれない(笑)。
あんこの未来を考える。熱海の老舗和菓子屋のSOSをしっかり受け止めたい。
【今回のお取り寄せ】
百年羊羹 本煉り 1棹900円
小倉 1棹900円
抹茶 1棹900円
梅 1棹900円
送料(クロネコ便)930円
代引き手数料 330円
合計 4860円