コロナで明け暮れた令和2年も残すところあとわずか。
「幻のあんこを求めて三千里の旅」も足が制限され、思い通りにはいかなかったが、今回はその中でも「ほお~」となったチャレンジ精神にあふれたあんこスイーツを取り上げたい。
NGにはするのはもったいないので、ご紹介したい。
それが和菓子屋「草津菓匠 清月堂」がプロデュースする群馬・草津温泉の「お豆のお宿 花いんげん」で出された「ウエルカムスイーツ」。
いずれもこの宿のオリジナル。一見地味だが、中身がすごい。
花いんげん豆はインゲン豆の中でも特別なもので、標高1000メートル以上でしか栽培されない希少いんげん豆。主に黒に近い紫色と白の2種類ある。
いんげん豆の女王様みたいなもの。
つまり草津高原で栽培された、地場のインゲン豆で、フツーのインゲン豆よりもさらに大きく、味も風味も濃いのが特徴。
チョコレートとあんこをコラボした創作和菓子はここ数年増えているが、手作りの花いんげん豆のあんこ(こし)を使っているのは、多分ここだけではないか。
丁寧な作りで、意外に合う。小豆のあんこだとチョコの風味が強すぎて、ややもするとうまくいかないケースも多いが、花いんげん豆のあんこは包容力が強いのか、トリュフとなじんでいる。いい意味でぼんやりと調和するあんこ、だと思う。
このぼんやり感が侮れない。
なめらかなあんこはかなり甘い。トリュフのビターのせいか、切ない余韻が残る。
感心したのはむしろ「花いんげん最中」の方。
これも「清月堂」の和菓子職人さんが宿泊客のために手作りした創作最中で、パリッパリの皮種(花いんげん豆の形)に、別盛のクリームチーズと花いんげん豆のあんこをたっぷり詰めてから食べる。うっすらときな粉がかかっている。
これがめっちゃ美味かった。
クリームチーズも自家製。
口に入れた瞬間、絶妙としか表現できない、新感覚の味わい。なめらかで濃いあんこにクリームチーズ独特の酸味がいい合の手を入れるよう。
今回アップするにあたって、電話で女将さんに確認したら、「生ものなので、日持ちしないんですよ。今のところ宿泊客だけにお出ししていて、市販はしていないんです」とのこと。
ちょっと残念だが、隣には本体の花いんげん豆専門店「菓匠 清月堂」が暖簾を下げている。大正12年(1923年)創業の老舗和菓子屋さん。
イートインカフェもあり、花いんげん豆を使った和菓子やスイーツを楽しめる。
翌日、ここで「花あんラテ」(税別 600円)と「花いんげん三笠」(プレーン 同180円)を食べてみた。
「花あんラテ」は抹茶とミルク、それに花いんげん豆のこしあんの3層になっていて、ビジュアル的にもそそられる。
だが、あんこ好きとしては、こしあんにたどり着くまで、時間がかかりすぎるのが何とももどかしい。
花いんげん豆のふくよかな独特の風味、さらっとではなくややザラっとした舌触りがたまらない。二度裏ごししているとか。
甘さと塩気のバランスがよく、できれば花いんげん豆のこしあんだけ、3割増しくらいにしてほしい。
小豆のあんことはまた違う感動もある。
「花いんげん 三笠」はどら焼きで、関西では三笠。それをネーミングにしているのは「清月堂」のスタンスを感じる。
こちらは自家製の北海道産小豆のつぶあんの中に蜜煮した花いんげん豆(白)が一個丸ごと入っている。デカい。
甘めだが塩気もほんのり。
スポンジ状の皮生地も甘め。観光地草津温泉の中で、花いんげん豆に特化した和菓子屋さんが暖簾を守り続けていることが素晴らしい。チャレンジ精神も特筆したい。
Gotoの制限で、キャンセルが増えているようだが、ここはあんこのように、じっくりゆっくりと応援したくなる。
所在地 「お豆の小宿 花いんげん」
「草津菓匠 清月堂」