東京江東区エリアは東京の中でもあんこのダウンタウンだが、実はいい和菓子屋さんが隠れている。
富岡八幡宮の裏手にひっそりと渋い暖簾を提げる「中山堂」(なかやまどう)もその一つ。

特に門前仲町周辺は深川伊勢屋、岡満津、甘味処いり江などあんこのキラ星が知られているが、地元を除いて中山堂を知る人は意外に少ないと思う。
恥ずかしながら私も知らなかった(汗)。
今回久しぶりにこの周辺をあんブラしたら、水色の「水大福」のノボリの向こうに木造建ての渋い店構えが見え、紺地の暖簾と引き戸に吸い込まれるように入ってしまった。

下町の女将さんが明るい声で「いらっしゃい」。いい感じ。
これが百年老舗の、凄腕の店主(3代目?)が奥に控えているクールな和菓子屋さんだった。
★ゲットしたキラ星
水大福(2個)200円
白玉ぜんざい 270円
どら焼き 210円
ふか川(焼き菓子)210円
※すべて税込み価格です。

【センターは?】
水大福:笹に包まれたこし餡の美味さ
水まんじゅうよりもレアだが、店構えと店内の選りすぐられた品揃えの中でも、この一品が私のあんココロにキュンと来た。
外は猛暑。内はオアシス気分。

みずみずしい笹に包まれた白玉のような生地がかぐや姫にも見える。
女将さんによると中はこし餡(自家製)。
生菓子なので早めに食べてください、と。
😀実食タイム
笹のいい香りを鼻腔に受けながら笹を取ると、ゴルフボール大の見るからにつるんとして柔らかそうな本体が現れた。

冷蔵庫で冷やしておいたので、冷たい舌触りがとてもいい。
中は自家製のこし餡で、たっぷりと入っていて、このこし餡が滑るようになめらかで、塩気がほんのりと漂い、「うめえ」が出かかる。

生地のもっちりつるるんの感触との真夏の合体が極上だと思う。
あれこれ女将さんと雑談していると、奥から白衣の店主が出てらっしゃった。
いい職人が放つ実直さを感じる。

小豆は北海道産、砂糖はグラニュー糖にこだわりがあり、ザラメや上白糖は甘ったるいので基本的に使わないそう。
後味にすっきり感があり、この店のあんこの味わいが格別のものと実感。
●あんヒストリー
創業は「100年以上になります」。調べてみたら大正12年(1923年)のようで、途中で先代が亡くなり、しばらく休んでいたそう。店を引き継ぐ形で店主(3代目になるようだ)が再開し、現在に至っている。店主は江東区優秀技能者(和菓子部門)にも選ばれてもいる。地味だがしっかりと素材と製法にこだわった、上質で、ハートフルな和菓子づくりを続けている。

【サイドは?】
白玉ぜんざい:つぶあんの吹き上がりと白玉の絶妙

カップに入っていて、艶やかできれいな白玉が3個。
すぐ下には見事な小倉色のつぶ餡の海。

白玉のもっちりした食感とじっくりと煮詰めた、やや固めのつぶ餡が不思議なマリアージュを醸し出している。
つぶ餡はもっとゆるめ方が好みだが、口に入れてひと噛みした途端、いい小豆の風味の広がりに「これはすごい!」となってしまった。

こし餡といいつぶ餡といい、素晴らしきあんこと感嘆したくなった。
これまでこの店をお知らなかったことが悔やまれる。
どら焼き:グラマラスな容姿でスキのない存在感

直径7センチほどの小ぶりなどら焼きだが、店主の手焼きで、ごらんの通り生地から蜜の気配がにじんでいる。
横から見ると、つぶ餡の厚みがはみ出そうに迫ってくる。

ここでもつぶ餡の美味さが光る。

合体⇒マリアージュの素朴で上品な味わい。
このどら焼きだけでも店主の和菓子職人としての腕前がよくわかる。
ふか川:あんこ×すりごま=焼き菓子

この店のオリジナル焼き菓子で、深川の菓銘が店主のこの地へのこだわりを感じる。
表面の雪状のすり蜜にそそられる。
小麦粉ベースの生地と中の手間暇かけたごまあんの掛け算が素晴らしい。


ゆっくりと崩れるほろほろとした歯触り舌触り。
すりごま×あんこのやさしい香りが隙間からあふれてくる。
食べながら唾液がどんどん出てくる感触。
これはクセになる味わいだと思う。
「中山堂」
所在地 東京・江東区冬木12-4
