「せんべろの街」東京・赤羽で出会った意外な老舗和菓子屋さんを書きたい。
赤羽駅東口を出て北側を見ると、都内でも有数のせんべろの飲み屋街が見えてくる。
そっちの誘惑も抗しがたい(笑)が、たまたま「伊勢屋」が休みだったので、周辺をあんブラすると、京浜東北線沿いに赤いオーラが見えた。

「和菓子 喜屋」(きや)の看板。せんべろのイメージとは遠い、瀟洒な店構え。
ここが当たりだった。
派手なバッカスと地味系のあんこ神が背中合わせに存在していたとは、ね。
スマホで検索したら、昭和12年(1937年)創業の和菓子屋さんで、店内に足を踏み入れたら、年季の入った木製のガラスケースに上生菓子から饅頭類まで整然と置かれていた。

かような和菓子屋さんが赤羽に存在していたことに、ちょっと驚いた(いつもは伊勢屋で足が止まっていたので。他意はありません)。
★ゲットしたキラ星
ときわ木(一本) 800円
唐焼き虞美人 280円
赤いダイヤ(最中)
200円×3種類600円
※すべて税込みです

【センターは】
ときわ木:時雨(しぐれ)とつぶ餡の巻物のあんこ力
サブタイトルに「古木の風格」と表記してあったが、まずはそのお姿にあんココロが動かされた。ホオーッが出かかる。


松の古木を連想させる、あんこの巻物で、長さは186ミリほど。重さを量ったら約340グラムほど。

和菓子の世界では時雨(あるいは村雨)と呼ばれる製法で、米粉(あるいはもち米)とこし餡を混ぜ合わせてから蒸し上げたもの。
ごらんの通り、外側の時雨には松の古木のようにヒビが入っていて、松の実が点々としている。
藤紫色の誘惑?

長野・松本市の老舗「開運堂」の「老松」とほぼ同じ一本もので、包丁で切ったら、外側から時雨、こし餡、つぶ餡の三層構造になっている。

あんこ好きにはたまらないお姿。
〈いざ実食〉隠し味にシナモン(桂皮)が練り込まれていて、こし餡のいい風味とともに、しっとりと柔らかい時雨が私の舌にまずノックするように入ってくる。

続いて二層目のこし餡と中央部のつぶ餡(北海道産小豆×白ザラメ)が小豆の濃厚な風味を口いっぱいに広げてくる。
塩気が強めで、それがむしろ絶妙と言いたくなる効果を生んでいる。
たまらないあんこの三段攻撃。


その塩味のマリアージュが口から鼻腔に広がり、柔らかくとどまり、「別れたくないよー」と叫びながらスーッと溶けていく(妙な表現になってしまった)。
長めの余韻もとてもいい。
京都「俵屋吉富」の「雲龍」も同じジャンルの巻物で、私にとってはこの「ときわ木」はコスパの良さも指摘したい。
●あんヒストリー
創業が昭和12年で、現在2代目。店の応対は2代目の美人女将さんが担っているようで、応対がとてもいい。初代が長かったとか。あんこは自家炊きで北海道産小豆を使用、もち米は新潟産、黒糖は波照間産、栗は熊本産を使用と素材へのこだわりもしっかりと守り続けている。店内の置物や絵などもいい歴史を感じさせる。これ見よがしに表記していないのも好感。「せんべろの街」の宝石と言いたくなる、いぶし銀の和菓子屋さんだと思う。
【サイドは?】
唐焼き虞美人:中が栗餡の半生焼き菓子
外側の生地は小麦粉ベースのカステラ生地で、中には栗餡(熊本産)が詰められている。

サイズは約68ミリ×68ミリの円形で、重さは73グラムほど。
どら焼きに近い印象だが、どら焼きよりも口がピタッとしていて、手で割ってからがぶりと行くと、栗(栗餡)の風味がわっと広がる。

むしろねっとりした食感で、薄めの生地から卵と蜂蜜の気配がにじみ出てきて、それが栗餡といい関係をつくっている。

菓銘の「唐菓子 虞美人」は店主によると、唐から来た焼き菓子、という意味のようだ。
わかりにくい凝り方だが、どら焼きなども「唐焼きの一種です」とか。
赤いダイヤ:小粒の最中で、つぶ餡とこし餡、白豆餡3種類
これも面白いネーミングだが、左右45ミリほどの六角形の小粒な最中。それが2個ずつ入っている。

種(最中皮)が薄茶=小倉餡で、ねっとりと濃厚なつぶ餡がぎっしり詰まっている。

やはり塩気が強めのあんこ。
これはハマる人にはハマる。
私はハマった。種がしっかりしていて、崩れがない。
白はこし餡。


しっとりと濃厚なこし餡で、やはり塩気が強い。その馴染み方がとてもいい。
ピンクは白豆餡で、琥珀色のあんこに仕上がっている。


白豆の歯触りがいいアクセントになっている。
これも塩気が濃く、かなり甘い。
この3種類を交互に味わうと、そこに曼陀羅の世界が現れてくるよう。
不思議な小粒最中、確かにダイヤかもしれない。
「和菓子 喜屋」
所在地 東京・北区赤羽1-19-3
最寄り駅 JR赤羽駅東口から歩約1分
