週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

青柳正家の「うば玉」と菊最中

 

こしあんのしずくが凝縮すると、こうなるかも?

 

いやいや、こしあんの宝石・・・表現が追いつかない(トホホ)。

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天と地を結ぶ東京スカイツリー周辺をあんこ行脚していたら、「珠玉のあんこ玉」に出会ってしまった、という感じ。

 

浅草・向島の老舗和菓子屋さん「菓匠 青柳正家(あおやぎせいけ)」の暖簾をくぐったときのこと。

 

ここの目玉でもある「栗羊羹」をゲットしようと訪問したつもりが、上生菓子や豆大福などが並ぶ中に、きらりと光るあんこ玉を見つけた。

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「うば玉」と表記してあった。

 

京都の超老舗「亀屋良長」(かめやよしなが)の「烏羽玉(うばたま)」や仙太郎の「老玉(うばたま)」と見た目はほとんど同じ。

 

ひらがな表記にしただけかな、と思ったが、よく見ると黒糖の気配がない。

 

しかも一回りほど大きい。

 

あんこ玉好きとしては、これは見逃せない。

 

浅草・向島まさかの出会いとなった。

 

「青柳正家」の創業は思ったよりも古くはない。

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「正家」を名乗るきっかけは昭和24年(1949年)、第一回全国銘菓奉献結成式典でのこと。明治~昭和にかけて活躍した貴族院議員・一条実孝公爵がこの向島「青柳」の初代が作った和菓子を大変気に入り、「青柳正家」と命名したことからスタートしたようだ。

 

宮家につながるお方が「正家」とお墨付きを与えたことになる。

 

えらいこっちゃ。

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グレーが印象的なモダンで荘厳な店構え。スカイツリーの喧騒もここまでは届かない。

 

現在3代目。店に漂う雰囲気から凄腕の和菓子職人の一人と見た。

 

・今回ゲットしたキラ星

 うば玉 1個(税込み216円)

 菊最中 3個(税込み972円)

 栗羊羹(半棹) 税込み2160円

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【本日のセンター】

賞味期限が本日中「うば玉」vs驚きの菊最中

 

向島には長命寺桜餅」や「言問だんご」「志”満ん草餅」など私の好きな和菓子屋さんが暖簾を下げているが、この「青柳正家」は少々趣が異なる。

 

庶民的というより、むしろ敷居が高そうな店構えと品揃えで、「宮家献上」という文字もどこか別世界の雰囲気がする(勝手な思い込みかもしれない)。

 

実際、一品一品がそう安くはない。

 

だが、自宅に戻ってから賞味したら、こだわり方や技術の高さが舌の奥まで入ってきてくすぐられる・・・そんな感じかな。

 

まず感心したのは「うば玉」

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こしあんがとにかく素晴らしい。

 

賞味期限が「本日中」というのも上生菓子ゆえか。

 

食べるとわかるが、藤紫色のきれいな、雑味のないこしあんで、表面を覆う薄い寒天の膜とケシの実だけのシンプルな構成だが、どこか「塩瀬総本家」の本饅頭を思わせる。

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絶妙なこしあんだと思う。

 

しっとりとした上品なあんこで、色・風味・味わい・余韻・・・が球体となってそこに正座している。そんな感覚は希少だと思う。

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北海道産厳選小豆を使い、砂糖は「企業秘密です」(女将さん)と教えてくれなかった(残念😢)。つまり「門外不出」ということになる。

 

淡白な甘さとかすかな塩気が気品すら感じさせる。

 

さらに驚いたのは「菊最中」

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見た目もあんこもこちらの方がむしろインパクトが強い。

 

菊の形の皮に挟まれたあんこは、こちらも見事な濃い藤色で、しかもだんご状に重なっている。おおお、と声が出かかる。

 

横からの写真を見ていただきたい。

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小ぶりだが、こんなユニークな形の最中は見たことがない。

 

青柳正家のオリジナル。

 

賞味期限は約3日間と短い。

 

水飴と寒天も加えているようで、それが上質なこしあんに独特のねっとり感を与えている。

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二つに割って食べる。「うば玉」より甘さはあるが、甘すぎない

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藤色の濃い深味がどこか儚げ(はかなげ)で、光を当てると透明感すらある。

 

皮は固めだが、時間が経つと少ししっとりしてくる。

 

パリパリ好きには少し物足りないかもしれないが、上品で淡白な味わいが潔い。

 

 

【サブは栗羊羹】

大栗と藤色の煉り羊羹のコラボ

 

宮家献上の文字がプライドを感じさせる。半棹(ハーフ)で2160円(税込み)はそう安くはない。

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だが、包みを取り、銀紙を切り分けると、藤色の濃い煉りと大粒の蜜煮した栗に圧倒されそうになる。

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光を吸い取るように、内側から外側へと、透明度が増してくる感じ。

 

そこにボコボコと大きなお月様が浮かんでいる。

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あん子藤色の夜とお月様、・・・優雅ですねえ」

 

編集長「食感はむしろあっさりしていて、歯にくっつかない。上品な栗羊羹と言えるね」

 

煉り羊羹の賞味期限は約2か月が一般的だが、これは「1か月」とやや短い。

 

編集長「つまり砂糖の量を抑えて、淡く凝縮したような煉りに仕上げている、ということではないかな?」

 

あん子「蜜煮した大栗のほっこりした美味さとのコラボ感がいい感じですね」

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個人的な印象では虎屋より歯切れがいいので、濃厚こってり系好きには少し物足りないかもしれない。

 

それは単に好みの問題だが、この店のルーツが東京なのか、京都なのか、あるいは大阪なのか、時間があったら掘り下げたくなった。

 

菊最中も栗羊羹も初代からのもののようだ。

 

訪ねたとき向島の料亭の手土産としても重宝されている、と女将さんは話してくれたが、昔昔、景気のいいころ、私が仕事で使った料亭では長命寺の桜餅」「徳太楼のきんつば」が多かった。

 

コスパの問題かな? それにしても花街でもある向島奥座敷は奥が深い。

 

「菓匠 青柳正家」

所在地 東京・墨田区向島2-15-9

最寄り駅 東京スカイツリー駅から歩いて約15分

 

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