意外かもしれないが、中央線沿線にはいい和菓子屋が多い。
かつて三鷹に住んでいたので、私的にはなつかしい「スイートあんこライン」(笑)。
今回ご紹介するのは阿佐ヶ谷の和菓子処&喫茶室「とらや椿山」。
ここで食べたあんこの雪崩れ(と表現したくなる)「小倉ホットケーキ」に度肝を抜かれ、「大栗まんじゅう」(つい手土産にしてしまった)のデカさにタメ息が出てしまった。
創業が大正14年(1925年)。現在3代目。
京都にルーツを持つ御所御用だった「赤坂とらや」とはおそらく別系統の虎屋で、江戸⇒東京の和菓子屋の系譜の一つだと思う。関東には別系統の「虎屋」や「とらや」がいくつかある(ひょっとして伊勢屋などと同じようにある種の人気の屋号だったかもしれない)。
まずはあんこ好きにはたまらない、和菓子屋の小倉ホットケーキをちらりとご覧いただきたい。
ではではゆるりと行ってみよう。
・本日のラインアップ
〈店内〉小倉ホットケーキ 単品800円(税込み)
〈持ち帰り〉大栗まんじゅう 1個400円(税込み)
【センターは?】
まるであんこの温泉「小倉ホットケーキ」
コロナ下、甘味処を備えている和菓子屋さんは少なくなっている。
阿佐ヶ谷南口アーケード商店街(パールセンター商店街)中ほどにある「和菓子処 とらや椿山」はその希少な一つ。
老舗の立派な店構えに見入ってからふと見ると、昭和なメニューケースに「小倉ホットケーキ」の文字と写真が見えた。
3~4年ほど前、吉祥寺サンロードをブラ歩き中に「甘味処 吉祥庵」で食べた小倉ホットケーキを思い出した(驚きのあんこの海だった)。そこも吉祥寺虎屋だった。
ひょっとしてここも同じ系列かな?
どら焼きや栗饅頭、豆大福、上生菓子などが並ぶ奥が喫茶室になっていて、お客が少ない(時間帯のせいか)。
たまたまややご高齢の3代目が忙しく働いていて、メニューを見てから、小倉ホットケーキにプラス紅茶(計1150円=税込み)で注文した。
吉祥寺虎屋との関係を聞くと、「あっ、あそこは昔、ウチで修業していた和菓子職人が開いた店です」とのこと。つまりルーツということになる。
注文してから奥の板場で作り始めるのがわかった。
なので待ち時間は約20分ほど。長いが、期待感がある。
2枚の焼き立てホットケーキにつぶあん(ゆるめ)が湯気を立てながらたっぷりかかっていた。
温暖化であんこの雪崩れ?
というより、つぶあんの温かい海にホットケーキ島が浮かんでいる?
いやいや、これはつぶあんの温泉にホットケーキが入浴しているの図?
小倉ホットケーキをメニューにする店は珍しくはないが、ここまであんこがドドドと前面に出て来るホットケーキは珍しい。
このゆるめのつぶあんは店主によると「北海道十勝産大納言小豆」で、上白糖でじっくりと炊いている。
ホットケーキ自体は普通にホカホカで、特筆するものは感じないが、つぶあんは甘さがかなり抑えられていて、ほんのり塩気も漂い、確かに大納言小豆のいい風味が口の中に広がる。
小豆は皮まで柔らかい。
ふかふかのホットケーキにあんこがじわじわと滲んでいく。
ほっくり感がとてもいい。
不思議なのは黒蜜やバターなど余分なものがないこと。
例えば吉祥寺「吉祥庵」で食べたものには生クリームが添えてあった。
個人的にはバターがあった方が好みだが、このシンプル、あんこのストレート勝負は多分、店主のポリシーなのだろう。
発案したのは30年ほど前。「和菓子屋なので」フツーのホットケーキの他にメニューに加えたとか。どら焼きをアレンジしたそう。
つぶあんだけなので、愛想がないと言う人もいる。だが、別の見方をすると、シンプル・イズ・ベスト。
個人的には生クリームや黒蜜やメイプルシロップは甘くなりすぎるきらいもある。
なので、ここは大納言小豆のボリュームと質に敬意を表して、座布団1枚を献上したい。
【サブは大栗まんじゅう】
フツーの栗饅頭の4~5個分はある? 巨大栗まんじゅう
これは一目でびっくり。1個400円は安くはないが、大きさからみて納得できる。
自宅に帰ってから、翌日、賞味してみた。
あん子「デカすぎて、何だかあんぱんみたいですね(笑)」
編集長「確かに。でも見た目は見事な栗饅頭だね。栗色のテカリ(卵の黄身?)とケシの実がいい絵柄になっていて、この店の名物だというのがわかるよ」
あん子「中はたっぷりの白あんですね。栗は丸ごと1個だけ」
編集長「手亡のしっとりとした白あんで、甘さが控えめ。蜜煮した栗が1個だけど、全体が大きいので、ここは3個くらいは欲しい気がする」
あん子「好みの問題ですね。それだと値段も上がっちゃうし、私はこのままで十分だと思います」
編集長「栗饅頭もここまで来ると、ほんとびっくりだよ。びっ栗まんじゅう(笑)」
あん子「お引き取りください・・・」
「和菓子処 とらや椿山」
所在地 東京・杉並区阿佐ヶ谷南1-33-5