栗蒸し羊羹のシーズンはそろそろお終いだが、今回ご紹介したいのは大阪・心斎橋に店を構える「御菓子司 庵月」(あんげつ)のホットな栗蒸し羊羹です。

●アプローチ
出会ったのは約6年前。
京都の友人が東京に来たとき、手土産にしたのが大阪の老舗「庵月」の栗若瀬(くりわかせ)だった。
二層の美しい蒸し菓子だったが、軽い気持ちで食べたら、そのビジュアルも含めて、感嘆したくなる味わいだった。
その約5年後、東京・日本橋三越本店で開かれた「あんこ博覧会」をのぞいたら、その「庵月」が店主(4代目)自ら出店していた。
超レアな「白小豆栗蒸し羊羹」を買い求め、家に帰ってから賞味したら、これまた素晴らしいものだった。
一度お店も訪ねてみたいな・・・元記者の習性(サガ?)でそんな思いが残った。
今回、京都・大阪あんこ旅でようやくその暖簾をくぐることができた。

和モダンな店構えで、4代目も息子さん(5代目)も不在だったが、4代目の女将さんがいらっしゃった。
★ゲットしたキラ星
栗蒸し羊羹(ハーフサイズ)
やまと煉り羊羹(ハーフサイズ)
2棹入り4914円
蕎麦薯蕷まんじゅう(本店限定)
345円
※すべて税込み価格です。

【センターは?】
栗蒸し羊羹:闇夜に国産栗の圧倒
何はともあれ、本体(ハーフサイズ)をご覧いただきたい。


どっしりとした存在感。蒸し羊羹部分の濃厚なあずき色。
国産栗がぼこぼこと闇夜のお月様みたいに浮かんでいる(月がそんなにあったら大変だが)。

ハーフサイズなので50ミリ×105ミリ×45ミリ。断面がほぼ真四角に近い。
実食タイム ナイフを入れると、蒸し羊羹部分のみっしりとした凝縮感に軽く驚かされる。やや固め。

続いて蜜煮した大栗の存在感とド迫力。
蒸し羊羹は小麦粉と葛粉、それにこしあんの合体だが、その配合が絶妙で、菓子楊枝で口に運ぶと、こしあんの存在が強めで、そこから口内ドラマが始まった。

見事な大栗が「ワイが主役やで」と前面に出てくる。
一噛み、二噛み・・・栗の歯触りと爆発的な風味が追いかけてくる。


主役(栗)と脇役(蒸し羊羹)が次第に混然一体となり、国境線が消え、ワンランク上のマリアージュ(小天国)を現出させる・・・(表現がハズしたかな?チト苦しい)。
かすかな塩気(涙?)も効いている。
改めて一級品の栗蒸し羊羹だと感じ入った。金星の味わい。
国産栗の収穫時期しかつくらない季節限定品だが、「2月初めくらいまではなんとか作りたい」というのも栗蒸し好きには朗報だと思う。
【サイドは】
やまと煉り羊羹:小豆羹と求肥餅の甘い合体

こちらは小豆羹の中に求肥餅を組み入れた棹菓子。
叶匠寿庵の「あも」とほぼ同類の、小豆好きにとっては食いつきたくなる構成。

やや甘めで、大納言あずきのいい風味が来る。

求肥餅の柔らかな食感がいい具合に「愛の手」になっている。
栗蒸しほどの圧倒感はないが、これはこれでバランスの取れた銀星の味わい。
蕎麦薯蕷(そばじょうよ):日持ちしないので、本店でしか販売していない。

なので、ゲットしたその日にホテルで賞味となったが、自然薯とそば粉の風味が意外なほどいい関係になっていて、中のつぶあんとの合体も上品。余韻のきれいさ。

すっすっと口の中に入ってくるので、2個3個とすぐに行けそう。

そば粉を加えたことがこの店の創作力だと思う。
甘さを抑えた自家製つぶあんの美味さも光る。
●あんヒストリー
創業は慶応4年(1868年)。現在4代目(5代目も修業中)。もともとは神戸で「常盤堂」の屋号で創業。その後、終戦となり、大阪・心斎橋に移転。栗蒸し羊羹の名店として、数種類の栗菓子をラインアップ。伝統を守りつつ、新しいチャレンジも模索している。
「庵月」
最寄り駅 地下鉄心斎橋駅から歩約4~5分
