今回は「あんこ博覧会2023」(東京・日本橋三越本店で開催)でまさかの出会いとなった逸品を取り上げたい。
それがこれ。
極めて希少な白小豆の栗蒸し羊羹です。
つくっているのは大阪・心斎橋「庵月(あんげつ)」。
創業は江戸時代最後の年、慶応4年(1868年)。
栗蒸し羊羹(季節限定)の名店としても知られた老舗の御菓子司だが、この時期に白小豆の栗蒸し羊羹に出会えるとは、ね。
しかも通常なら1月いっぱいまでの季節限定品のはずが「このあんこ博に出すために2月7日まで延長してつくったんですよ」(4代目)とか。
餡ラッキー!と叫びたくなったほど。
1棹税込み5292円、ハーフサイズ(半棹)2700円(同)。
安くはないが、素材選びから製法までこだわり抜いているので、ここは敬意を表したい。
●あんポイント 白小豆(しろしょうず=しろあずき)は白あんの材料の中で最高級の小豆。栽培が難しく、その分、希少価値が高い。中でも備中白小豆は特に手に入れにくく、色・風味ともに最高峰といわれている。
4年以上前のこと。
京都に住む畏友がこの「庵月」の別の棹菓子「栗若瀬」(通年商品)を手土産にしてポンと手渡してくれたことを思い出した。
これが絶品だった。鹿児島のかるかんと白小豆のむらさめ(米粉と混ぜてそぼろ状に蒸し上げた生地)、それに蜜煮した栗をふんだんに練り込んだ二層仕立ての棹菓子で、そのビジュアルと絶妙な味わいに「ほお~」と唸ってしまった。
その「庵月」だった。
今回は定番の栗蒸しではなく、この白小豆の方を選んだ。
・今回ゲットしたキラ星
白小豆栗蒸し羊羹(ハーフサイズ) 2700円(税込み)
わらび餅(1箱) 864円(税込み)
【センター】
ホロホロと崩れ落ちる国産栗×白小豆の余韻
★外観は?
洒落た渋い包みを取り、紙箱を開けると、本体が現れた。
そのアートな外観につい見入ってしまった。
蒸し羊羹部分がホワイトゴールド、蜜煮した栗が金色に見える。
表面には糖蜜の薄い膜が張り付いているようにも見える。
見事な大栗(国産の新栗)がぼこっ、ぼこっと浮かんでいるのがすごい。
白夜の(?)満月がいっぱい。
白小豆は備中ではなく北海道産を使用しているようだ。砂糖は白ザラメ。
ハーフサイズで大きさは約110ミリ×50ミリ。厚さ40ミリほど。
かしわ手を打ってから、包丁で切りにかかる。
★味わいは?
菓子楊枝を入れると、ぼそりとした感触で、しっとり感が少ないかな、と少し引いてしまったが、これが大間違いだった。
口の中に入れ噛んだ瞬間、栗のいい風味がまるでビッグバン級に広がり、甘すぎない、羊羹部分と蜜栗がホロホロと崩れ落ち、上品な余韻を残しながらスーッと溶けていくのがわかった。
ベースの白小豆あんと小麦粉、吉野葛の配合が絶妙で、口どけが素晴らしい。
掛け値なしに、これはすごいと思う。
かすかに塩気も感じる。
栗をここまで仕上げた栗蒸し羊羹に出会えたこと、個人的には餡ビリーバボーな出来事だった。
【サイドは自家製わらび餅】
この「わらび餅」は紙箱を開けたとたん、手づくり大豆きな粉の自然な香ばしさがとてもいい。夏季限定の商品だが、あんこ博のために特別につくったもの。
一つ一つが大き目で、わらび餅自体がよく見ると飴色で、ほどよい甘さ。
きな粉がたっぷりで、ツマヨウジで取ると、ぷにゅぷにゅ感が伝わってくる。
形のない、ぎりぎりの状態で、糸を引くような伸びやかさも十分にある。
きな粉自体に砂糖の気配がほとんどなく、それが全体を気品で包み込んでいる。
わらび餅好きにはたまらない、上質な味わいだと思う。
大阪まで足を延ばせなかったが、次回はこっそり暖簾をくぐりたい店の一つではある。
「御菓子司 庵月」
最寄り駅 地下鉄心斎橋駅から歩約4~5分
3代目(左)と4代目😄