めっきり寒くなったが、秋口から冬にかけてはあんこ菓子がひときわ輝く季節の一つだと思う。
栗蒸し羊羹⇒豆大福⇒たい焼き。
個人的な好みだが、このあんこラインは捨てがたい。
特に豆大福は紅葉が散るころがとても好きだ(一年中おいしいが)。
しみじみ感がたまらない。あんこころ。
と前振りしたところで、みちのくあんこ旅で出会った絶品豆大福と金時豆入りの珍しい蒸し羊羹を書きたい。
福島・いわき市の老舗「手造り和菓子 ふくみや」の二品。
ここは朝ナマ中心のハートフルな和菓子屋さんで、どら焼きなども人気がある。
ベースにあるあんこの美味さが東京の名店に負けていない。
●ゲットしたキラ星
豆大福(つぶあん) 1個110円(税込み)
東ようかん 1本 95円(同)
くるみゆべし 1個 130円(同)
【センターは?】
搗(つ)き立ての餅と自家製つぶあんのこだわり
〈アプローチ〉
「手造り和菓子」の文字がどこか誠実でなつかしい。
「餅菓子」の赤い暖簾が渋い。
地元では有名なお店で、早朝からお客が並ぶことも珍しくない。
ここの名物の一つが「豆大福」。
つぶあん一本勝負で、こしあんがないのがちょっと残念だが、このつぶあん豆大福を味わうと、豆大福はこれ一つで十分と思えてくる。
まずはご覧いただきたい。
渋いオーラが発散している。そんな気がしませんか?
大きさは直径60ミリ弱。高さは30ミリほど。重さは約79グラム。
餅粉(片栗粉)のかかり具合と早朝に搗いた餅、うっすらと見える赤えんどう豆。
だが、店主の熟練の手の香りがする。素朴な洗練、と言いたくなる。
餅菓子の定石「その日作ったものをその日のうちに食べる」朝ナマの王道を代々実践していることがわかる。
●店の歴史 現在3代目。創業は「実はよくわからないんです。でもここに移転したのは昭和39年です」とか。なので60年弱ということになるが、創業自体はもっと古い。
〈味わいは?〉
苦労して包丁で切ってみる。
ぎっしりと詰まった小倉色の自家製つぶあんと艶やかさが印象的。
柔らかな餅としっとりとした塩気やや強めのつぶあん、それにやや固めの赤えんどう豆のバランスがとてもいい。。
餅米は宮城産みやこがねを使用。手作業で餅米から蒸かして搗く。なので、餅の鮮度を感じる。「餅粉は使っていません」(3代目)。
何よりもじっくりと炊いたつぶあんが秀逸。渋切りもしっかりしていて、いい小豆の風味がふわりと来る。
雑味のない、心まで沁みるようなあんこ。
北海道十勝産小豆(エリモショウズ)を使用、砂糖は白ザラメ。小豆の皮まで柔らかく仕上げていて、ひと口ふた口と食べ進むと、舌を中心として幸せホルモンが出っぱなしになった。
1個110円が信じられない。コスパ最高クラス。ローカルの苦労も感じる。
いわきに「手造り」にこだわり続けている、実直な和菓子屋さんがあることを素直に喜びたい。
【サイドはレアな蒸し羊羹】
「東ようかん」と表記されている。
見た目は日光の水ようかんのようだが、つなぎに小麦粉を加えたレアな蒸し羊羹で、金時豆が練り込まれている。
蒸し羊羹で金時豆入りは初めて遭遇した。
もちもちした食感で、ふくよかな金時豆がおもしろい。
全体的にはほどよい甘さで塩気が強め。
こしあんの入り具合も絶妙。
3代目によると、東ようかんはいわき周辺にしか存在しない蒸し羊羹で、地元では昔から「馬方ようかん」と呼んでいるそう。
かつて常磐炭鉱が盛んだったころ、石炭を運ぶ馬方さんが好んで食べたことに由来する。
当時はもっと大きくて、腹持ちがよかったとか。
●おまけ くるみゆべし
あんこではないが、この店の人気が手造りの「くるみゆべし」。見事なくるみがゴロゴロ入ったゆべしで、もっちり感とくるみのカリっとした歯触りと吹き上がる風味が素晴らしい。甘い醤油の風味も絶妙。隠れた主役の一つだと思う。
「手造り和菓子 ふくみや」
所在地 福島・いわき市内郷綴町秋山25