編集長「ふふふ『週刊あんこ』令和4年のスタートにふさわしいものを用意したよ(笑)」
あん子「バレバレですよ。三ノ輪の『花月堂本店』の豆大福でしょ? 群林堂、瑞穂、松島屋の東京三大豆大福に負けない、凄い大福だって言ってたでしょ?」
編集長「あんこの地下王国、日本橋高島屋の『銘菓百選』にもたまに置いてあるけど、やっぱり店まで行かないとダメだね。大福が豆大福を筆頭に4種類、つぶしあんとこしあんがとにかく素晴らしい。『朝生なので、必ず本日中に召し上がってくださいね』と念を押される。初代が京都の流れを汲む、いい店だよ」
あん子「センターは決まりですね。つぶしですか、こしですか?」
編集長「待ちなさい、お若いの(笑)。ここで期間限定の凄いものを見つけてしまった」
あん子「じれったいです。北朝鮮のミサイルが飛んできますよ(笑)」
編集長「こわ~。栗蒸し羊羹だよ。竹皮に包まれて、残りが二つだけ。オーラを放ってたんだ。予算オーバーだったけど、一期一会かもしれない、と思い切ってゲットしたよ」
あん子「わかりました。栗ということで新春スタートにふさわしいかも、ということにしときましょう(笑)」
・試食したキラ星たち
栗蒸し羊羹 ひと包み 1404円(税込み)
豆大福(つぶしあん) 216円(同)
豆大福(こしあん) 216円(同)
黒豆大福(つぶしあん)216円(同)
【本日のセンター】
こだわり方がクール、栗蒸し羊羹の傑作
三ノ輪「花月堂本店」の風情のある店構えがいい。かしわ手を打ちたくなる。
創業は明治4年(1872年)。現在7代目が仕切っている。
京都の公家の出の和菓子職人が明治維新とともに東京に出て、神保町に店を構えたのが最初のようだ。
三ノ輪に移転したのは明治44年(1911年)。
現在も作り続けている最中が目玉だったが、いつしか「豆大福の美味い店」として、固定ファンが付いている。
京都の流れを汲むことからわかるように、生菓子は「朝生(あさなま=朝作ってその日のうちに食べる)が一番美味しい」というポリシーが息づいている。
なので、「栗蒸し羊羹」もどこか京都の匂いがして、素材選びから製法までこだわり方がひと味違う、と思えてくる。
竹皮の包みを解くと、長方形(ほとんど四角)に切った栗蒸し羊羹本体が現れた。
素朴で質の高そうな濃い小倉色に一瞬、目が吸い取られる。拝みたくなる。
包丁で切ると、蜜煮した栗がぼこぼこ入っている。
ありそうでなかなかお目にかかれない代物、だと思う。
大きさは95ミリ×75ミリ×厚さ35ミリほど。重さは約287グラム(竹皮を入れて)。
十勝産小豆の自家製こしあんと小麦粉の混じり方が絶妙で、こしあんのいい風味が豊かに口の中に広がる感覚。砂糖は白ザラメを使っているようだ。
甘さがほどよく抑えられ、口どけの良さがとてもいい。
本場の吉野葛も加えているので、柔らかな食感に気品がある。
蜜煮した栗(国産)のほっこり感とのマッチングも申し分ない。
職人の手触りを感じる、トップクラスの栗蒸し羊羹と出会った気分。こいつは春から縁起がいいや。
【サイドはこしあんの豆大福】
大福は4種類ともあんこのボリュームと風味が素晴らしい。
定番の豆大福(つぶしあん)は東京三大豆大福と比較してもそん色がないと思う。
サイズは約70ミリ×60ミリ×厚みは36ミリほど。約110グラムとデカめ。
たっぷりの餅粉。羽二重のような餅の柔らかさ。
赤えんどう豆のふっくらした歯ごたえ。塩気。
あえて言うと、4種類の中で個人的に最も気に入ったのはこしあんの豆大福。
こしあんのふくよかなしっとり感が尋常ではない。
甘さが抑えられ、雑味がない。
粒子を感じるこしあんで、ほんのりと塩気もにじんでいる。
私の大好きな原宿「瑞穂(みづほ)」と比較しても十二分に美味しい。
よもぎ餅も黒豆(丹波産)も上質な美味さで、正午少しすぎに訪問したのに、売り切れ寸前だった。今回はぎりぎり間に合ったことになる。
メディアの取り上げ方が東京三大豆大福のやや影に隠れているが、「三ノ輪根岸の花月堂本店」の存在は東京の和菓子屋のキラ星の中で、間違いなくいぶし銀の光を放っていると思う。
初空や根岸の里の豆大福
三ノ輪「花月堂本店」
所在地 東京・台東区根岸5-16-12