新栗を使った栗蒸し羊羹の季節がそろそろお終い。
熱烈なファンが多い泉岳寺「松島屋」の栗蒸し羊羹は予約を終了していて、悲しいかなすれ違いに終わった。ぐすん。
だが、やっぱりあんこの神様はいる?
今回はそんなミラクルを書きたい。
松島屋で17年修業した店主が暖簾を下げている「高松屋」(大崎)にダメもとで電話したら、「栗蒸し羊羹は明日が最終日です」とのこと。
このぎりぎり感。
豆大福も栗蒸し羊羹も松島屋と同じ作り方で、故にここも行列店でもある。
店主が負傷してやむなく8月から休業、コアなファンが心配していたが、再開したという情報も入っていた。
すぐに予約。間に合った。餡ラッキー!(うれしさをダジャレで表しました、失礼)。
再開は来年になるとも予想されていたので、たまたま運よく、その隙間に滑り込んだ形となった。
私にとっては幻になりかかっていた、松島屋につながる希少な栗蒸し羊羹。
一気に胸がピコピコときめいた。
★ゲットしたキラ星
栗蒸し羊羹(ハーフサイズ) 1700円
豆大福 220円×2個
草もち 240円×2個
※すべて税込み価格です。
【センターは?】
新栗の浮かび方が半端じゃないスグレモノ
店構え:午前11時に到着。松島屋のような、昭和にタイムスリップしたような、素朴な店構えとは違い、シンプルモダンな、小さな店構え。清潔感。
再開を聞き付けたのだろう、10人近く並んでいた。普段ならこの倍以上は並んでる?
まだ完全再開とはいかないようで、店内に入ると、品数は少ない。
同時に予約しておいた豆大福(つぶあん)と草もち(つぶあん)。お赤飯など数点。それに「本日最終日」の栗蒸し羊羹が並んでいるくらい。
それでもその存在感は淡いオーラを放っていた。
豆大福と草もちは賞味期限が「本日中」なので、夕方、自宅に戻ってから味わうことにした。
で、本命の栗蒸し羊羹。
ハーフサイズなのでサイズは90ミリ×45ミリ×高さ40ミリ。重さは約190グラム。
茨城・笠間産の大栗がぼこぼこ、小倉色の蒸し羊羹の夜空に満月状に浮かび上がっている。おっと。
スケールと密度に心がよろめく。
店主の熟練の手を感じながら、包丁で切ると、見事な大栗がさらに断面になって、美しい満月を押し出していた。
すごいね。
味わい:栗がきりりとしていて(やや硬め)、歯を立てた瞬間、いい栗の風味がふわりと来た。怒涛の吹き上がり感。
蒸し羊羹部分はこしあんが絶妙な塩加減で、甘さが控えめ。柔らかななしっとり感。
それでいて、いい小豆(北海道産えりも小豆)の風味がぴたりと張り付いている。砂糖はザラメを使っているようだ。
栗が噛むたびにほろほろと瓦解する。上品な瓦解。
きりり⇒瓦解感が秀逸だと思う。
うわさ通りのおいしさ、としばしの間、極上の満月夜を散歩するように味わった。
【サイドは?】
草もち:「松島屋」は草大福だが、ここは「草もち」。栗蒸し羊羹と豆大福は見かけも味わいもほとんど同じだと思うが、この草もちは形も高松屋独特のもの。
柔らかなよもぎ餅の濃い色がとてもいい。もちろん無添加づくり。
よもぎの風味が立ってくる。
中のつぶあんが素晴らしい。
松島屋と同じ、藤紫色に近い、きれいな小豆色で、皮まで柔らかく、じっくりと炊かれているのがわかる。
甘すぎず、強めの塩気が舌の上ですっと広がる。春の予感まで連れてくる。
豆大福:見た目も味わいも松島屋とほとんど同じ。赤えんどう豆の質も量も私の好み。餅粉のかかり具合もそそられる。
柔らかな杵つき餅(宮城県産みやこがね)とたっぷり詰まったつぶあん。
香り立つような、きれいなあんこ。素朴な洗練も感じる。
甘さがほどよい。
塩気がやや強めで、それが絶妙を生んでいる。
昭和天皇もファンだったという松島屋直系の豆大福。
買ってから7時間ほど経過していたので、餅は少し固くなり始めていたが、無添加づくりの証明でもある。幸せホルモンに包まれてくる。
●あんヒストリー
創業は2016年8月。松島屋で17年間修業して独立。子どもの時から旧高松宮邸敷地(社宅)で遊んだり、松島屋の大福をおやつに食べたりと、このエリアの申し子みたいな歴史を持つ。父親は高松宮邸で働き、母親も松島屋で働いていたとか。
《小豆のつぶやき》
▼松島屋の行列と人気ぶりは知られているが、この高松屋も人気店だが、ある種の穴場とも言える▼完全再開は来年以降になりそうだが、桜餅や草もち(こしあん)も食べてみたい▼ベースは同じでも高松屋のオリジナルも打ち出している▼手に入りにくい栗蒸し羊羹を運よく食べれたこと、それが今回の大きな収穫だった。
「高松屋」
所在地 東京・品川区西品川3-16-2
最寄り駅 JR大崎駅から歩約5分