なぜか縁のなかった「東京三大豆大福」の一角、泉岳寺「松島屋」へ。
何度か電話し、3回目にようやく繋がり予約が取れた。
三大豆大福の残りの2店(護国寺「群林堂」、原宿「瑞穂」)も行列覚悟で行かないとゲットできない(特に群林堂)。
並んだ末に目の前で打ち切りの経験もある。
さて、今回は「松島屋」。
正午前、京急線泉岳寺駅で下車し、伊皿子坂(いさらござか)をエッチラオッチラのぼって行くと、右手に8~10人ほどの行列が見えた。
ここが高級住宅街、高輪エリアとは思えない、どこか昭和の下町のような、そこだけセピアの小世界。
「餅菓子 だんご 松島屋」と染め抜かれた朱色のやや煤けた暖簾が、この地で100年以上続いている歴史を想像させる。
大福好きにとってはある種、極上の風情。
餅とあんこのいい匂いが建物全体から立ち上がってくるよう。
編集長「フツーなら本日のセンターは豆大福だけど、この時期は草大福ときび大福も作っているんだ。大福3兄弟、揃い踏みってところかな」
あん子「ひねくれ者の編集長のことだから、センターは草かきびか・・・ズバリ草大福!」
編集長「惜しいなあ(笑)。共通しているのはあんこで、つぶしあんだけど、餅の違いが微妙にあんこの味わいに変化を付けている気がしたよ。当日と翌日(冷凍後)、2回に分けて食べてみたら、これが意外や・・・」
あん子「うーん、じれったい。早くしないと、舟が出ちゃいますよッ」
・今回ゲットしたキラ星
豆大福(2個) 1個190円(税込み)
草大福(2個) 同 190円
きび大福(2個)同 190円
【本日のセンター】
豆大福vsきび大福、当日&翌日の味わいは?
「添加物を使っていないので、本日中に召し上がってください」
搗(つ)き立てが一番美味いとは思うが、数時間後にコロナ明けの飲み会が控えていたので、考えた末に、ゲットしたその足で、思い切ってオープンカフェに飛び込み、まずは看板の豆大福を食べることにした。残りは家に帰ってから冷凍保存して、翌日賞味することにした。
苦肉の策(笑)。
ほぼ出来立て、当日の豆大福(午後2時)。いわば長男でしょうね。餅粉がたっぷりかかり、素朴な見た目は群林堂の豆大福に近い。
餅はさすがに柔らかい。
赤えんどう豆はふっくらと固めで、群林堂ほど多くはないが、フツーのものよりも多い。
中のつぶあんがかなりのボリュームで、赤紫色の、素朴なあんこ。
甘さが抑えられていて、塩気が強い。
赤えんどう豆のキリっとした美味さがとてもいい。
ただ個人的な好みを言えば、三大豆大福の中では原宿瑞穂が一番で、次に群林堂、今回の松島屋の順になる。
・翌日の豆大福ときび餅
冷凍しておいた豆大福を解凍して、レンジで温めてから賞味した。
餅と赤えんどう豆は昨日よりも少し鮮度が落ちていたが、それでも十分に美味い。しっかりと搗かれた餅。
不思議なのは、あんこ。色も深みを増し、あくまで個人的な感想だが、一日置いた方が風味が増し、おいしく感じた。
ふくよかでいい小豆(北海道産えりも小豆)の香りが口いっぱいに広がった。
甘みと塩気がほどよく熟成したような、「これは美味い!」と言葉が漏れたほど。
渋切りを抑えた、小豆自体の甘みがジワリと来るような感触。
最も気に入ったのは「きび大福」だった。いわば三男にあたる?(写真一番右)。
やや癖のある、きびの香りが柔らかな餅の中で凝縮していて、中のつぶしあんがのびのびしているような(笑)。
同じあんこのはずなのに、こちらの方がなぜか雑味を感じない、しっとりとしていてふくよかさがほんの数ミリ広がる感じがした。
不思議な舌の時差感覚。
豆餅ときび餅の違いが、たまたま私の好みに合ったのかもしれない。
【サイドは草大福】
草大福(写真中央)の美味さも秀逸で、よもぎの香りがひと足早い春を連れてきた感じ。これは次男かな。
餅の中によもぎがそのまま混じっている光景がたまらない。
つぶしあんもボリューミーで、幾分塩気が強めに感じた。
大福が3種類(今の時期)というのは、「群林堂」や「瑞穂」にはない、多分和菓子屋「松島屋」の特徴だと思う。
創業が大正7年(1918年)、初代は宮城・松島の出で、そこから「松島屋」の屋号を掲げた。
裏手が高松宮邸(旧東宮御所)だった関係で、若き日の昭和天皇もこの「松島屋」の大福を愛したようだ。
昭和天皇は大の豆大福好きだったようで、「原宿瑞穂」のものも好みだった、という話も伝わっている。
皇族と餅菓子の縁は京都の「川端道喜(かわばたどうき)」にまでつながる。
あまりに素朴な松島屋の大福3兄弟を味わいながら、そんな時空を超えた甘い想像を楽しむ。
あんこの神様は意外と身近にいる、と思う。
「松島屋」
所在地 東京・港区高輪1-5-25
最寄り駅 泉岳寺駅から歩約5~6分