今回は「あんこ博覧会2023」で見つけた「おっ、これは?」という新しいあんこ菓子を取り上げたい。
一つは明治4年創業の和菓子店「又一庵」の新しいチャレンジ、あんこプリン(ミルク)とあん生どらやき(チーズクリーム)。
きんつばで知られた老舗だが、洋菓子とのマリアージュがおもしろい、と思う。
もう一軒は秋田「角館 くら吉」。2011年創業の新しい店だが、栗の産地でもある地場のメリットを生かした栗大福2点。
驚かされたのは一個1080円(税込み)の「善兵衛栗 一粒大福」。ひょっとして日本一高価な栗大福かもしれない。
あんこの世界も気が付いたら、どんどん進化(?)していることがわかる。
・ゲットしたキラ星
〈又一庵〉
あんこプリン(ミルク) 378円(税込み)
あん生どらやき(チーズクリーム)451円(同)
〈角館くら吉〉
善兵衛栗一粒大福 1080円(同)
栗大福 378円(同)
【センターは?】
絶妙なつぶあんとミルクプリンの相性
選ぶのに大いに迷ったが、あんこを基準にしたら、このあんこプリンに落ち着いた(個人的な好みです)。
あんこプリンだけで3種類、カスタード、抹茶などもあったが、艶やかなつぶあんと白いミルクプリンが私のあんこセンサーに「よそ見しないで、こっちにおいで」とサインを送って来た(気がした)。あずきの甘い誘惑。
あんこプリン自体は今ではそう珍しくはないが、我が家に持ち帰って、実際に食べたら、ビンの上層部に艶やかにに収まっていた自家製つぶあん(十勝産小豆×白ザラメ)の美味さがまず際立っていた。
さすが手焼ききんつばで知られた老舗。まずはつぶあんをスプーンで掬う。
甘すぎない、小豆のいい風味が口に入ると同時にそよ風になって吹き上がって来るようだった。
この柔らかなつぶあんにやられ、その下に広がるミルクプリンの鮮度にも感心させられた。イケてる。
しかもこのマリアージュが素晴らしい。これまで食べたあんこプリンのなかではベスト5に入るくらいの味わい。
続いてあん生どらやき。
これはまずビジュアルがすごい。上下のどら皮の間にクリームチーズがごらんの通り、メーンに陣取っている。
あんこはどこ? と探したら、底の部分に「私を忘れちゃだめよ」とつぶやくように横たわっていた。いいね。
これも見事なつぶあんで、このチャレンジでは完全わき役に徹している。
クリームチーズとあんこの相性はとてもいい。
手焼きのどら皮も両面焼きで、こちらも完全わき役に徹している。
あんこ大好き人間としては、あんこの層をもう少し厚くしてほしいが、これはあんこが苦手な人にも十二分に楽しめる、チャレンジングなあんこスイーツだと思う。
あんこの可能性を感じさせる、老舗の二品、日本ばかりでなく、世界にも紹介したくなった。
ニューヨーカーやパリジェンヌにも似合いそう、などとね。
【サイドは千円一粒栗大福】
何よりもその価格に驚かされたが、1個がかなり大きい。
重さは約135グラムもある。手に持つとずしりと来る。
見た目は真っ白い大福餅だが、真ん中から切ったら、ごらんの通りの見事な断面が現れた。
角館は大栗(西明寺栗)の産地としても知られるが、ここで使われている栗はその中でも特に希少な「善兵衛栗」(無農薬で栽培)を使用、それも一個丸ごとじっくりと渋皮煮している。
栗のデカさに驚かされる。
その周りを甘さを抑えたこしあんが包み、さらに全体を柔らかな求肥餅で手包みしている。
食べると、1000円の値付けもなるほどと思えてくる。
蜜煮した善兵衛栗のいい風味がすっくと立ちあがってくる。
こしあんがいい具合に絡んでくる。
求肥餅の柔らかさ。
角館本店限定品のようで、あんこ博で出会えて餡ラッキー、という結果になった。
とはいえ、正直言うと、1000円は思いきらないと手が出ない。
その分、「栗大福」の方が手に取りやすい、と思う。
同じ善兵衛栗を使っているが、こちらは刻んだ栗。
ねっとり感のあるこしあん。
栗の風味とこしあん、それに求肥餅が一粒栗ほどではないが、いい関係で楽しめると思う。私はドリップコーヒーで楽しんだ。
「又一庵総本店」
所在地 静岡・磐田市見付1767-4
「角館 くら吉」