西の京都と東の浅草。
この二つのエリアが歴史的に見てもその深さにおいても和菓子界(あんこ界)の頂上に位置するのは、たぶん本当だと思う。
私の大好きな餡エリア。
その浅草。
年に数回は無性に足を運びたくなる。
ワタシ的には魔の引力・・・今では外国人観光客も押し寄せている。
だが、そんな表面上の(?)賑わいの中で、まるで時代から取り残されたような、いやまるで時代を拒絶しているような、和菓子屋さんがある。

「菓子司 千茶」。
仲見世のメーンストリートからちょっとだけ横道に入った雷門柳小路に、そこだけ昭和のままの佇まいで。
何も知らなければ素通りしてしまいそうな、侘び寂びの店構え。
ガラス戸に手書き文字で「栗むし羊羹」のシンプルな品書きが貼りついている。期間限定品。

呼吸を整えてから引き戸を滑らせて足を踏み入れてみた。
★ゲットしたキラ星
栗蒸し羊羹 一包み850円
小倉羊羹 300円
紅葉 350円
栗茶巾 350円
※すべて税込み価格です。

【センターは?】
栗蒸し羊羹:コスパの凄味と予想越えの味わい

丁寧な竹皮包みのサイズは標準サイズ。
左右約155ミリで重さは込みで225グラムほど。

竹皮包みをほどきながら本物の香りを吸い込む。たまらない。
素朴を生かした手づくり感にあんココロがピコピコ。
包丁をゆっくりと入れる。

😀実食タイム
小麦粉と葛粉、それにこしあん(自家製)のバランスのよさ。
深い小倉色で、こしあんがかなり多めだと思う。

ゆえにドンピシャ好み。
蜜煮栗がぼこりぼこりと入っていて、口に入れた瞬間、その歯触りと瓦解するときの風味がぐんぐん来る。

添加物不使用の手づくりなので、賞味期限は約1週間ほど。
なので、早めに味わうに限る。

やさしい、おだやかな甘み。
この価格でこの味わいはレアだと思う。
😎あんヒストリー
創業は昭和24年(1949年)。現在2代目だが、このお方がただ者ではない。一見そっけない対応であれこれ聞くのを躊躇したが、話すうちに打ち解けてきて、この店が凄い店だとわかった。初代(父親)は数少ない宮内庁の御用達職人の系譜で、2代目は出版社に勤めていたが、子供のころから父親の仕事を身近で見ていたことなどから、最終的に2代目を継ぐ形になった、という。いわば直伝の和菓子職人でもある。栗蒸し羊羹も当時のままの製法を守っているそう。店を広げず、時代に流されず、初代からの製法や考え方を大切に引き継いでいる。浅草の奥の深さを改めて思い知らされる店でもある。

【サイドは?】
小倉羊羹:小豆の粋を極めた驚きの一品

年季の入った菓子棚には2代目手作業の上生菓子が数種類置かれていた。
私がゲットしたのはそのうちの3種類だが、あんココロが最も引き込まれたのが、一見地味だが、渋いオーラと輝きに包まれた小倉羊羹。

エッジの利き方と光が淡く通るような、半透明の凝縮感。
小倉色のテカリと大納言小豆の咲き具合。
練り羊羹と水ようかんの中間くらいの舌ざわりで、小豆の美味さがほとんど爆発的に広がってきた。


雑味のなさが素晴らしい。
変な表現だが、小豆の夢の中を漂ってる感覚。
紅葉:季節の練り切り、中はこしあん

紅葉をイメージした淡いピンクと白と黄色が美的に凝縮している。
日持ちしないので、自宅に帰ってから、夜遅い時間に賞味となった。

上質な練り切りと中のこしあんの滑らかなマリアージュがとてもいい。
吹き上がる幸福感。
これだけでも2代目の腕がわかる。

茶会用の上生菓子としても素晴らしい味わいだと思うが、別建てで個人的にちょいとリッチな気分を味わうのもいいと思う。
私の場合はコーヒーを淹れて⇒グレン・グールドのバッハを聴きながら⇒五感で味わう。なんてね(カッコつけすぎだ)。
たまのご褒美気分(笑)。
栗茶巾:秋の気配を栗餡×こしあんで満喫

手づくりの栗餡によく見ると栗のかけらが点々と見える。
渋い職人のワザ。
中はこちらもこしあん。

2代目によると、小豆は北海道産で仕上げの砂糖はグラニュー糖。
グラニュー糖は昔からのこだわり(直伝)だという。
上質でやさしい甘さ。

心にまで沁みてくるような。
いい店は隠れている。
京都の粋人の言葉がこの店の奥から聞こえる気がした。
「菓子司 千茶」
所在地 東京・台東区浅草1-18-9
