「ブルータス」(マガジンハウス刊)は愛読誌の一つだが、特にあんこ特集はほとんどかかさず目を通している。
約10年前(2013年)発行の「あんこ好き。」が秀逸で、その表紙に載っていたのが、探索したら、目黒ちもとの草だんごだった。
そのビジュアルがあまりに美味そうだったので、いつか行かなければ、と頭の隅に置いておいた。
で、今回。
友人の再婚お祝いの宴が近くであり、「今だ、イケイケあんこころ!」と立ち寄ることにした。オーバーに言うと、10年越しのアンキーな出会い。
ちょうど栗蒸し羊羹の季節でもあり、ここの栗蒸しもゲットすることにした。
あんこの神様がどこかにいる?
●今回ゲットしたキラ星
栗蒸し羊かん 1本 1600円
草だんご 170円×3串
合計 2110円
※すべて税別です。
【センターは?】
竹皮包みの細長い栗蒸しにシビれる
東横線都立大学前(南口)で下車し、歩いて2分ほど。目黒通り沿いに和の情緒が漂う店構えが見えた。いぶし銀のオーラ。
「御菓子所 ちもと」の屋号と暖簾。
入り口には手書きで季節限定「栗むし洋かん」の貼り紙。
私のあんこセンサーがぴこぴこ。
まるで京都の老舗上菓子店のような店内。
季節の上生菓子類が並び、同店の目玉「八雲もち」も一角を占めている。
全品食べたくなったが、悲しいことに胃袋と財布は一つしかない。
2品だけゲットし、その夜遅く、自宅に戻り、黄金の賞味タイムとなった。
〈栗蒸し洋かん〉
お姿:竹皮包みの形状がユニーク。
全体の長さは330ミリ×35ミリほど。ごらんの通り、細長い棒状の形で、これまで見たことのない独自の形状。重量は269グラム(竹皮込み)。
味わい:「そのまま包丁でお切りください」とあったので、ざくりと切る。
竹皮のほのかな悲鳴?(甘い香り)とともに、見事な蜜栗がごろっと現れた。
蒸し羊羹部分はきれいな小倉色で、秋の夜長のお月さま登場って感じかな。
煎茶を用意してから、菓子皿に移していただく。
あん子「甘さが絶妙ですね。栗も丸ごと1個がぼこぼこ入っていて、ほっこり柔らかい。しかもきれい。これは上品な栗蒸しです」
編集長「栗はたぶん茨城産。ホント柔らかいね。細長い中に惜しげもなく入っていて、京都『亀末廣』や東京・富ヶ谷『岬屋』とも食感が違う」
あん子「どう違うの?」
編集長「柔らかさかな。上新粉とこしあんの融合が口の中でさらに溶け合い、昇華していくような印象・・・。主役の蜜栗と脇役のこしあんの存在感がとても絶妙で上質。塩気は感じないね。京都のような洗練を感じる」
●あんヒストリー
目黒八雲ちもとの創業は昭和40年(1965年)。現在2代目。ここも箱根ちもとや軽井沢ちもと、市川ちもととは兄弟店で、ルーツは江戸時代後期の道灌山(西日暮里)にたどり着くようだ。紆余曲折あって、戦後、銀座に新たに「ちもと」の暖簾を下げ、そこから軽井沢や箱根、この目黒八雲に暖簾分けされたようだ。わかりにくい系譜。
【ネクストは草だんご】
お姿:見るからにしっとりとした、みずみずしいこしあん。黒糖でも加えているような黒光り。それが2個ずつ。竹串に刺さって、「おいでよ」とささやいた気がした。
「本日中にお召し上がりください」
という朝生なので、夜の賞味となったが、こしあんは思ったよりも濃厚で、それでいて甘さがほどよい。
舌に吸いつくようなこしあん。
北海道産小豆のいい風味が口の中に広がる。
柔らかすぎず、固すぎず。ほどよい歯ざわり。
しっかりと造られた、上生菓子職人の草だんごだと思う。
10年越しの忘れかけていた恋が成就したような、甘い余韻にしばらくの間、浸っていたくなった。
《小豆のつぶやき》
▼私の出発点は串だんごなので、思い入れが強い▼小学1年生の時においしい串だんごに出会った▼以来、串だんごとの付き合いは長い▼築地の記者時代によく食べた福市だんご(すでに廃業。超のつく絶品だった)▼西日暮里『羽二重団子』は昔の方が美味かったと思う▼北千住「かどや」の柔らかな串あんだんご▼挙げればきりがない、店主の手づくり串だんごへのオマージュ、たまらない。
「御菓子所 ちもと」
所在地 東京・目黒区八雲1-4-6