週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

奇跡のようかん😎「愛宕下羊羹」食べる

 

桜がすっかり散ってしまったつい先日のこと。

 

あん友が「編集長、これ知ってる?」とニヤニヤしながら手土産を私に手渡した。

 

御衣黄羊羹(ぎょいこうようかん)と言ってね。掛川で見つけた老舗の羊羹屋のものなんだ。御衣黄って緑黄色の珍しい桜で、開けてみるとわかるけど、それをモチーフにしたのがこの季節限定の珍しい羊羹なんだ。食べたら後で感想を聞かせてよ」

ホームランもあるが、三振もある和菓子好きグルメなので、期待2~3割ほどで、約1時間後、渋いデザインの紙包みを開けてみた。

 

愛宕下羊羹(あたごしたようかん)」という店名が印刷されていて、包みを解くと、塩漬けの桜葉が一枚載った明るいグレーの珍しい煉り羊羹が現れた。

 

開けてびっくり、とはこのこと?

全体をうっすらと萌黄色の気配が漂っていて、渋いオーラを放っていた。

 

羊羹はずいぶん食べているつもりだが、かような羊羹は見たことがない(単に勉強不足かも)。

 

全国の羊羹類を網羅した「ようかん」(虎屋文庫、新潮社刊)にも載っていない。

 

これがちょっとオーバーに言うと、羊羹の森でホモエレクトスに出会ったような、驚きとなった。例えが変かな。

 

●今回試食したキラ星

 御衣黄羊羹 1棹900円(税込み)

 

 以下は宅配便で購入。下の写真右から

 小豆羊羹  1棹800円(同)

 白羊羹   1棹800円(同)

 栗羊羹   1棹900円(同)

 ※送料は別途

 

【センターは】

季節限定の凝った不思議系白ようかん

 

まずはご覧いただきたい。

白あんベースのグレーがかった羊羹の上に大きな塩漬け桜葉が一枚、よく見ると、緑色っぽい何かが練り込まれている。

 

それが梅の実だとわかる。桜と梅の渋い競演。

さらによく見ると、点々と細かな桜葉(?)が舞っている。

 

これはもはやアート、だと思う。

 

サイズは170ミリ×33ミリ×厚さ30ミリほど。重さは約200グラム(本体)。

包丁で切ってからまずは一口。

 

これまで食べた練り羊羹とは少し違う、固練りの素朴な歯ざわり

甘さはかなり抑えている。

 

梅の実のざっくりとした甘酸っぱい食感と桜葉の香りが白煉り羊羹と合体して春の波となって押し寄せてくる感じかな。

 

素朴と優雅の見事な融合だと思う。

 

私が知る煉り羊羹よりも固めの食感だが、歯切れと口どけがいい。

 

★あんヒストリー

愛宕下羊羹」の創業は明治40年(1907年)。掛川愛宕神社下で暖簾を下げる。現在5代目。羊羹一筋、昔からの製法を代々守り続けている、希少な羊羹屋さんだとわかった。地元ファンが多く、つくる本数が多くないので、午前中で売り切れごめんも多い。

この「御衣黄羊羹」は先代(4代目)が作り上げたものとか。

定番の愛宕下羊羹は4種類(小豆羊羹、白羊羹、栗羊羹、抹茶羊羹)

店での売り方は昔のままで、木枠のケースの中に裸のまま拍子木のように積み上げて、売っている。珍しい売り方。すぐにでも飛んで行きたくなったが、諸事情で、今回は断念。3種類を宅配してもらった。それが今回の経緯です。

 

【サイドは?】

●小豆羊羹

多分これが創業時からの大定番だと思う。3種類が一緒に包まれていた。小豆羊羹は一番右。包み(裏地が銀紙)を取ると、小倉色の表面がうっすらと糖化し始めていて、私の好きな世界が広がってた。

どこかもっちりとした素朴な固練り。素材は小豆(北海道産)、上白糖、寒天(長野産)だけ。ベースの生餡は製餡所から仕入れているようだ。添加物などは不使用。

 

甘さが控えめで練り上げる時にじっくりと水分を飛ばしているのがわかる。

素朴で穏やかな小豆の風味が広がる。

 

抹茶ももちろん合うが、コーヒーも合うと思う。

 

今回は試さなかったが、シングルモルトウイスキーにも合うのではないか。

 

●白羊羹

白いんげん(北海道産)の煉り羊羹で、これも甘さがかなり抑えられている。

ややぼそっとした食感、素朴な固練り。

 

煉り羊羹特有の歯にくっつく感触はない

だが、口の中で高貴なお方に変換するかのよう。ふくよかな広がり。

 

すっきりした後味で、ひと噛みするごとに、すーっと溶けていく感触。

 

編集部のあん子さんは「私はこれが一番気に入ったわ」と笑みがこぼれた。

 

●栗羊羹

国産栗がぼこぼこと小倉色の夜に浮かんでいるような。見事なビジュアル。

羊羹部分が一番しっとりしている印象で、上質な栗羊羹だと思う。

 

甘さはこれも控えめ。

栗のほっこり感と風味が素朴な羊羹部分といい関係をつくっていて、噛むごとに「うん、うん、これだね」とうなずきたくなる。

 

甲乙つけるのは無理だが、個人的にはこれが一番気に入った。

 

〈編集長の独り言〉

▼昔ながらの作り方、置き方を守り続け、コアなファンは別にして、全国的にはあまり知られていない▼食感は個人的な印象では、しばらく空気にさらした福島・二本松「玉嶋屋」の本煉り羊羹が近い感じがするが、どうだろう▼素朴で独特の小世界に今回初めて触れて、改めて羊羹の世界の奥の深さを思い知らされた。

 

愛宕下羊羹」

所在地 静岡・掛川市横須賀1515-1