久しぶりに東京・銀座に出たついでに「甘味 おかめ」(交通会館店)へ。
このところ寒暖差が激しいので、ここの「田舎しるこ」を食べたくなったからだ。
名物のおはぎもいいが、おしるこもほっこりする。
有楽町駅前の交通会館は私の好きなスポットの一つで、昭和のよき匂いが残っている。
「おかめ」の前は女性客でいつもにぎわっている印象が強い。
民芸運動に共鳴した先代女将さんが店の造りから食器類まで民芸調で統一したことなどがどこか懐かしさを色濃く残している背景にある。
注文したのは以下の2点。
田舎しるこ 税込み890円
季節限定おはぎ(さくら) 同300円
●あんヒストリー 「おかめ」は本店が麹町にあるが、もともとは有楽町イトシア店のある場所が本店だった。昭和初期、下町の深川で甘味処「二川屋」を営んでいた初代が戦後、有楽町に移転し、店名も「おかめ」に変え、さらに高度成長期に鳴り物入りで交通会館が誕生するとこの交通会館店(B1)もオープンしている。当時、このエリアには朝日新聞社や読売新聞社もあり、にぎやかな戦後文化発信地だった。
★前菜はおはぎ(桜)。
注文を受けてから作り始める、昔からのやり方で、最初に来たのはこの時期限定の「さくらのおはぎ」。
塩漬けした桜の葉に包まれた淡い桜色のおはぎで、大きさは昔感じたほどの衝撃はない(それでも大きめ)。
※参考までに以前、北欧から一時帰国した友人と食べた巨大おはぎ(定番のつぶあん㊨とごま㊧)をご覧ください。フツーのおはぎのゆうに2個分はあると思う。9年ほど前の写真です。あしからず。
桜のおはぎ続き。見た目がきれいで、桜の季節限定(5月中旬ころまで)が心を少しウキウキさせてくれる。
中はつぶあん。北海道産小豆をじっくり炊いた自家製あんで、小豆の皮まで柔らかい。甘すぎない、ほどよいつぶあん。
桜葉の香りと塩気がいいアクセントを付けている。
蒸かしたもち米は半殺し(半搗き)とまで行かず、全生かし、と言いたくなるほど粒々感がしっかりとある。
個人的には半殺しが好きなので、ここはちょっとだけエクスキューズしたい。
つぶあんの量も期待より少なめ。
以前食べた巨大おはぎ(つぶあん)の方が感動も大きかった。
★メーンは田舎しるこ
ワンテンポ置いてから「田舎しるこ」が来た。
美しいお椀。浅草・かっぱ橋「田中漆器店」から仕入れているそうで、思ったよりも庶民的な、「おかめ」のポリシーを感じさせられるもの。
蓋を取ると、湯気の中に焼き餅が二つ(切り餅の半分くらい)。見事な焼き色。
思ったよりも水分の多い小豆餡で、柔らかな粒々感からいい風味が立ちあがってくる。
甘すぎない、ほっくり感がしばらく残るいい炊き方だとは思う。
個人的にはもう少し水分を飛ばして、こってりしている方が好きだが、よく考えてみたら、このむしろ茹であずきに近い感覚は東京のおしるこかも。
「田舎」を頭に付けているのは、御前しるこ(こしあん)との対比だと思うが、よく考えてみたら東京自体が歴史的には巨大な田舎の集合体なので、そう名付けているかもしれないな、と勝手な解釈をする。
餅の柔らかな伸びと茹であずき系のコラボ。
箸休めの昆布の佃煮がいいね。
それが人間関係の希薄さと紙一重でおかめの時間をほっこりさせている。
よき昭和の、よき甘味処の、ほどよいあんこ力。
たまに「おかめ」に来たくなる理由がわかるような気がする。
「甘味 おかめ」交通会館店