西新井大師(東京・足立区)は寅さんの故郷になるはずだった?
と書くと、まさかと思う人が多いんでは?

だが、「男はつらいよ」(山田洋二監督)の撮影が始まる前のこと。
西新井大師も有力候補地だったという。
結局、「生まれも育ちも・・・」には柴又帝釈天が選ばれたが、西新井大師の周辺には今も「そうなんだよ。地元の反対などもあって、あっち行っちゃった」という声が残っている。
真相は藪の中だが、両者の共通点は多い。
その一つが草だんご。

柴又に負けない草だんごの老舗が数軒ある。
今回はその一軒、「中田屋」(文化2年=1805年)創業にドタリと舞い降りた。

「塩あんの草だんご」があると聞いて、久しぶりに足を運んだ。
あれれ、店舗がモダンにリニューアルされていてテイクアウトのみになっていた。食堂がなくなっていたのはちょっと残念。
それでも「草だんご」のノボリが夏風に翻っている。いい光景。
以前はつぶあんとこしあんの2種類だったので、「塩あん」は新顔なことがわかる。

「30個入り」(税込み1400円)を選んだ。

あんこは3種類あるが、定番のつぶあんと塩あん(こしあん)にしてもらった。
注文と同時に折りに草だんごと2種類のあんこを詰めてくれる。

あんこの量がかなり多い。
女性スタッフと当主の手際がとてもいい。さすが下町。

🧐実食タイム
〈新顔〉塩あん:塩味の利き方が素晴らしい
日持ちしないので、実食はその夜になった。


国産よもぎを使い、二度搗きしたという草だんごは柔らかく、よもぎの風味がほんのりと口中に広がる。


そこに塩あん(北海道産小豆使用)のなめらかな舌触りがかぶさってくる。

塩の利き方が絶妙で、よもぎ団子の柔らかさと合体すると、さわやかな風さえ感じる。
つぶあんではなくこしあんの塩バージョン。
当主(11代目)が考案したようで、これはコロンブスの卵かもしれない。
〈定番〉つぶあん:濃厚だが、素朴で深い余韻
こちらのあんこは昔からのもの。

北海道産小豆と上白糖で仕上げたつぶあん(製餡所に特注したもの)で、柔らかく煮詰められていて、表面のつやがあんココロをそそる。

口に入れた瞬間、小豆の風味が濃い。
やや甘めで、ほどよいねっとり感が素朴に伝わってくる。

柔らかなよもぎ団子との相性のよさ。
長い歴史を感じる、無添加づくりの深い味わい。
後を引く美味さ。

あっという間に2種類の三分の二が目の前から消えた。
草だんごには厄除けの意味もある。
これぞ極楽、としばらくの時間、煩悩だらけの脳から邪心が消え、清浄な余韻にひたるのだった。
●あんヒストリー
創業が和菓子文化が花開く江戸・文化年間で、現在11代目だが、「11代目という称号はあまり使いたくない」とか。なので当主。コロナの期間にリニューアルを考えたそうで、食堂をやめ。テイクアウト専門に切り替えたそう。塩あんを考えたのもその時期で、それが当たった。店の向かいには「清水屋」(元禄2年=1689年創業)があり、そちらは食堂も変わらず営んでいる。いい意味で門前のライバルだが、作り方も味わいも少し違う。塩あんは中田屋のオリジナルのようだ。
「中田屋」
所在地 東京・足立区西新井1-5-12
