江戸の粋筋を感じる東京・神楽坂。
今も通好みのエモーショナルが色濃く残る坂と路地裏の街。
宮仕え時代にここの小料理屋で接待をすると、ほとんどの客が頬を緩めた記憶がある。

東京の中ではある種別格のエリアで、いい和菓子屋や甘味処も多い。
「和菓子処 清水」もその一つ。
今どきの和菓子屋さんとは一線を画す、いぶし銀の店構え。

余分なものはない。
年季の入った水引暖簾が私のあんココロに静かに語りかける。
と書いて、カッコつけすぎだよ、あんた。
言葉が追い付かない。見えない結界すら感じる。
しかし敷居は高くない。
引き戸を滑らせて、一呼吸してから中に入る。

歴史を感じる木枠の菓子棚に上生菓子やどら焼きなどがオーラを発光しながら小さく佇んでいた。
ワオ~。心の中でつい叫んでしまった。
★ゲットしたキラ星
むしきんつば 200円
亥の子餅 330円
かのこ 280円
錦秋 330円
銅鑼焼き 200円
※すべて税込み価格です。

【センターは?】
むしきんつば:つぶ餡がぎっしり、岩のような存在感

蒸しきんつばは大好きでずいぶんと食べているが、ここのはまず形が黒々とした岩のよう(㊨)。
白ゴマが夢の跡のように点々としている。

こんな形のきんつばは初めて。
鈍いテカリと中のあんこの重厚な予感に目が釘付けになってしまった。
🧐実食タイム よく見ると、中のつぶ餡は濃い青紫色で、しっかりとした皮の奥で「おめえ、わいの味がわかるのかい?」とささやきかけて来た・・・そんな妄想さえ起きる(汗)。

思ったよりも固めの皮を割ると、重厚なつぶ餡が現れた。
敬意を表しながらゆっくりと口に運ぶと、濃厚な甘さ。

それでいて小豆(北海道産)の素朴な風味が凝縮したまま口の中を吹き上がってくる。
京都の上生菓子とは少し違う濃い味わいで、4代目の「砂糖は昔から上白糖を使ってます」のひと言で濃い甘さの秘密がわかった気がした。

京都というより江戸の遺伝子を感じる、しっかりとした味わい。
小豆本来の、大地を感じさせる素朴で上質なあんこ。
【サイドは?】
錦秋:紅葉をモチーフにした濃厚なきんとん

見た目の美しさに4代目の腕前を感じる。
きんとんはしっかりとした食感で、甘さも濃いめ。

季節限定品。
中はこし餡だが、こし餡というよりもむしろ羊羹に近い舌ざわり。

こってりとした上生菓子で、口の中で複雑に絡み合いながら、深い余韻を残しながら何処かへと消えていく。
見た目は京都だが、味わいは江戸と表現したくなる。
それゆえに野暮と粋が舌の上でドラマを繰り広げているよう。
●あんヒストリー
創業は昭和13年(1938年)。現在4代目。ルーツは信州佐久のようで、2代目が風月堂で修業後に神楽坂で和菓子屋を開いた。3代目⇒4代目とバトンをつなぎ、4代目によると「昔からの作り方をそのまま受け継いでいます」。あんこ炊きに上白糖を使うのも代々のポリシーを守っているからのようだ。お茶会用など贔屓のお客も多い。

亥の子餅:表面にきなこ、中は黒糖風味のこし餡

昔からの伝統和菓子で、亥の月(11月)に食べる餅菓子。
無病息災と子孫繁栄(亥=猪)を願っての縁起菓子だが、ここのは表面に焦がしきな粉をまぶしている。
中は黒糖風味の自家製こし餡。

甘めに作られていて、口の中で複雑に広がっていく。
あんこの中に様々な想いが詰まった、食べながらつい正座したくなる美味さ。
かのこ:大納言小豆とこし餡の美しい合体

蜜煮した大納言小豆を薄く覆う寒天の膜がキラキラ輝いていて、見ているだけで幸せホルモンが出てくるよう。
しっかりと作られていて、小豆好きにはたまらない美味さ。

甘さがこってりしていて、舌の上でしばらく留まってから、すうーっと消えていく。

後ろ姿がどこか江戸っ子のようでもある(個人的な感想です)。
素朴と上質がいい具合に絡み合っていいる、クールなかのこだと思う。
銅鑼焼き:小ぶりだが、しっかりとした絶妙な合体

サイズは直径70ミリほど。
きつね色の手焼き感がきれい。
トンボの焼き印が表面に。


やや固めのどら皮だが、中のつぶ餡との掛け算が素朴に美味しい。
これも甘めで、つぶ餡の噴出力との合体がクール。
いいどら焼きだと思う。
「和菓子処 清水」
所在地 東京・新宿区矢来町110