「純栗かの子」はたまらない。
私的には信州・小布施町(おぶせまち)が天国に近い場所。
頭に描いただけでヨダレが出かかる(失礼)。
人口1万人強のちいさな町に栗菓子屋の老舗が5軒ほどある。
桜井甘精堂(さくらいかんせいどう)、小布施堂、竹風堂が有名だが、いずれもいい味わいと独特の風味を作り上げている。
小布施の栗かの子は関東で言うと、おせち料理の栗きんとんに近い。
信州に旅したとき、小布施にも行く予定が、途中で時間を取られ、行けずじまい。仕方なく長野駅構内で桜井甘精堂の「純栗かの子」(270グラム 税込み1296円)を買い求めた。
安くはないが、これが極上の楽しみとなる。
自宅に持ち帰ってから、わくわくしながら缶の蓋を開ける。
グレーがかった純栗かの子が現れる。このあまりに自然な色がたまらない。
地産の蜜煮した大栗(丹波栗系)と栗あんがお見事、と掛け声をかけたくなる。
甘さを抑えた栗あん。蜜煮した大栗の歯ごたえ。
素朴な洗練、という表現が近いと思う。
それらがねっとりと舌にささやきかけてくる・・・。
その風味が口中で吹き上がる感覚はちょっと得難い。
桜井甘精堂の歴史は古い。
文化5年(1808年)、初代桜井幾右衛門が栗落雁(くりらくがん)を作り、文政2年(1819年)にはその弟・武右衛門が栗羊羹を作った。
栗かの子は明治に入って、5代目が作り上げた(明治25年)という。ちなみに今は8代目。
小布施の栗菓子の歴史は桜井甘精堂と共にある、といっても過言ではない。
本店に電話して、砂糖は何を使ってるのか、尋ねてみた。
「白ざら糖です」
栗と砂糖しか使っていない。今年はすでに栗の収穫が終わり、新栗を使った「純かの子」は12月から売り始める。約一か月後。
すべて手作業で、練り上げた栗かの子を缶に詰めるのも手作業だという。
「機械だとこの味わいは出ないんですよ」
意外な一面を見る思い。