今回はあんこ旅の中で出会った木曽路の「そば饅頭」の美味さについて、書きたい。
そば饅頭と言うと、京都の「本家尾張屋」や「かわみち屋」が有名だが、それらは焼き菓子で、個人的には「へえー」という美味さだったが、中山道あんこ旅の途中で立ち寄った「元祖そば饅頭 芳香堂(ほうこうどう)」のものは「生まんじゅう」と言いたくなる蒸し菓子だった。
粗挽きのそば粉を加えたしっとりした皮と中の藤紫色のこしあんのマッチングが味わうたびに「絶妙⇒絶品」と変化していく、そんな印象。
地味系のいい仕事をしている和菓子屋さんだと思う。
木曽周辺では有名な和菓子屋さんの一つで、創業は大正2年(1913年)。現在3代目。
古い店構え。遠くに木曽路の山々が迫るなか、「木曽名物 そば饅頭」のブルーの幟が、どこか青空へ突き抜けた印象で、ふらりと立ち寄りたくなった。
人通りは少ない。
単品でもオーケーなので、5個をゲット。たまたま目に止まった「あんぱん饅頭」も買い求め、自宅に戻ってから、岐阜・中津川の老舗のそば饅頭と食べ比べも楽しむことにした(あんぱん饅頭は不定期発売なので今回は除外しました)。
・今週のキラ星
芳香堂「そば饅頭」 5個包み 600円(税込み)
【センター】
百年の美味、初代のオリジナル元祖そば饅頭
添加物不使用で、皮から中のあんこまですべて自家製。初代が創業当時に考案したものを3代目の今も受け継いでいる、というのがすごいことだと思う。
まずは外見。白に近い明るいグレーとそば粉の香りがパッケージを取った瞬間、目と鼻にすっと入ってくる。
形は楕円形で、長さ60ミリほど。
粗挽きそば粉の細かい点々がいいね。
菓子ようじで切ると、中はこしあんで、濃い藤紫色に近い。
皮も中のあんこもしっとりとみずみずしい。
皮はそば粉、山芋、米粉に塩少々。膨張剤も少し加えて、蒸し上げているようだ。
こしあんは甘さをかなり抑えていて、北海道産小豆と上白糖で仕上げている。
渋抜きをしっかりした餡づくりで、雑味がない。
そのピュアさがもっちりとしたみずみずしい皮と「いい関係」で、1個、2個、3個と食べ進むうちに、「派手さはないけど、その分、味わいがどんどん深く」なっていく。
焼き菓子のそば饅頭とはひと味違う、信州の生そばを舌先に感じる、優れた一品だと思う。
【中津川のそば饅頭と食べ比べ】
栗きんとんで有名な「すや本店」(岐阜・中津川市)のそば饅頭「そばまん」と食べ比べしてみた。
すや本店は「栗きんとん」など栗菓子の名店なので、そば饅頭はメーンではないが、あくまでも参考程度の試食比べになりました。あしからず。
・見た目、サイズ、価格など
芳香堂:シンプルな楕円形。重さは43グラム。単品1個120円(税込み)
すや本店:「すや」の焼き印が印象的。重さは39グラム。単品1個151円(同)
・味、材料など
芳香堂:添加物を使用していない。食感も味わいもすっきりとした、やや淡白な味わいだが、その分、余韻も含めて深みを感じる。つなぎの山芋とそば粉、米粉のバランスが素朴。こしあんも淡麗。
すや本店:しっとりとしていて、ねっとり感も強い。添加物は増粘剤や乳化剤も使用。後を引く美味さだが、どこかやや人工的な印象。そば粉と山芋、つなぎに卵白を使用。こしあんも濃厚。
どちらも上質なそば饅頭だと思うが、素朴さで「芳香堂」、派手さで「すや本店」といったところかな。※これらはあくまでも個人的な感想です。
「御菓子司 芳香堂」
所在地 長野・木曽郡木曽町福島5352-1