編集長「今日は伝説と言われた前橋の酒饅頭を取り上げたいな」
あん子「片原饅頭(かたはらまんじゅう)でしょう? 編集長がずっと追ってたのよね。東京・荻窪にある『高橋の酒まんじゅう』とよく似た、平べったい酒饅頭ですよね」
編集長「そう。1996年(平成8年)、惜しまれながら天保年間から続いた164年の歴史を閉じてしまった。イーストを使わず、昔からの製法を守り続け、糀(こうじ)で発酵させ、長時間寝かせ、中のこし餡も自家製。手間暇かけて蒸し上げていた」
あん子「その後継店も1年半ほど前に店主がご高齢で『体力気力が続かない』と閉店してしまったのよね。悲しいわ」
編集長「で、今回。その痕跡を求めて、前橋まで飛んだんだ」
あん子「それが『酒饅本舗 妙見茶屋』(みょうけんちゃや)というわけね。でも足元がふらついてますよ(笑)」
・今回ゲットしたキラ星
酒饅頭 1個108円(税込み)
サービス品(9個)540円(同)
草餅 150円(同)
桜餅 150円(同)
【今週のセンター】
酒饅頭は片原饅頭と同じルーツだった⁉
私がこれまで食べた自家製酒饅頭には二つの形があると思う。一つは秀吉の時代から大阪で暖簾を下げている大阪最古の『高岡福信(たかおかふくのぶ)』、そして日光最古の『湯沢屋』。
どちらもお尻のように丸くて糀の香りと中はこし餡。今も手間暇かけて手造りを続けている。アンビリーバブルな酒饅頭と言える。
もう一つが今回の片原饅頭タイプ。形は平べったくて、中はこちらもこし餡。同じように手作業を基本に据えて、糀の香りが立ってくる。東京・荻窪「高橋の酒まんじゅう」もこちらに属する。
では、今回の「妙見茶屋」は?
今回行ったのは前橋大胡店(おおごてん)だけど、実際に見て驚き、食べてなるほどと思わされた。ほお~が二つも出た。
片原饅頭と見た目もほとんど同じで、味わいもかなり近いのでは?と思わされた。
1個108円(税込み)。店の陳列棚に「サービス品」と書かれた、規格外れの酒饅頭も置いてあったので、こちらもゲット(9個入っていて540円)。
このことだけでもちゃんとした酒饅頭を作るのが難しいことがわかる(気温や湿度も関係してくるので)。
その約5時間後、自宅で友人からいただいた神奈川・茅ケ崎の地酒「天青 朝しぼり」(無濾過生原酒)を置いて、親子のマッチング(?)も試してみた。
酒饅頭の賞味期限は「本日中」。もったいないので一部は冷凍保存した。
妙見茶屋の酒饅頭は皮の艶やかさ、表面張力のような手触り、口に入れたときのもっちり感、糀の吹き上がるような感覚。
酒饅頭好きにはたまらない共通項。
これまで食べた中では「高橋の酒まんじゅう」とよく似ている。
中のこし餡は甘さが抑えられていて、しっとりとしている。
塩気もほんのり。
幻となった片原饅頭もきっとこれに近い、同じ種類の味わいだったのではないか。
「天青朝しぼり」はやや酸味のある辛口とキレで、この上品で素朴な酒饅頭と合っている。
これは当たり、の化学反応だと思う。
翌日、気になって「妙見茶屋本店」に電話取材を試みた。
思わぬ収穫。片原饅頭と同じルーツだったことがわかった。詳しいことは別の機会に譲るが、明治維新後、武士をやめて酒饅頭屋になったことなどなど。
伝説の酒饅頭・・・似てるはずだよ。
【サイドは草もち】
あん子「酒饅頭に比べると、こっちはフツーかな。私は草もちが気に入ったわ。よもぎの香りと中のどろりとしたつぶ餡がたっぷりで、いい和菓子屋さんだとわかります」
編集長「同じ意見だよ。桜もちは中がこし餡。それで面白いのは皮がクレープ状に二重巻きになってること。甘さがかなり抑えられていて、印象がちょっと薄いかな」
あん子「やっぱり今回は酒饅頭ですね。添加物は使っていないし、どぶろくで発酵させてるんでしょ? 片原饅頭と同じというのがわかっただけでも編集長の執念が実ったわけですね」
編集長「微妙に違うところもあると思うけど、ルーツが同じとわかって、片原饅頭がまったく消えたわけではない。あとは手間暇かけた手造りをいつまでできるかが、気になるくらいかな」
あん子「酒饅頭の歴史は鎌倉時代までさかのぼるんでしょ?」
編集長「虎屋の歴史とも重なってくる部分がある。中国から来て、それが日本で独自の進化を遂げている。長くなるので、そのあたりはまた別の機会に(笑)。乞うご期待ってとこかな」
「妙見茶屋本店」
群馬・高崎市引門町159-1
大胡店 前橋市堀越町848-1