こう暑い日が続くと、冷たい生菓子を食べたくなる。
私の中では葛桜(くずざくら)が最上位右手に位置する。
半透明のぷるるん感と中に透けて見えるこしあん。
桜の葉のきれいな緑が、みずみずしい世界を深めている。
上質のものはもはやアートだと思う。
仕事で兜町に行くついでに、大正10年創業の茅場町「伊勢屋」をのぞいてみた。
かつて江戸の中心地だった一帯にひっそりと暖簾を下げている。
豆大福と栗どらやきがここの目玉だが、季節感のある「「葛桜(くずざくら)」(税込み200円」が目に飛び込んできた。
一瞬、涼風が脳内を吹き抜けていった。そんな感じ。
見事な葛桜で、一目ですぐれモノとわかった。
隣の「水まんじゅう」(同 200円)も流し目を送ってきた(気がした)。
豆大福は売り切れていたが、この二つで十分。「栗どらやき」(同180円)も買い求めたが・・・あんこ好きのサガ。
自宅に戻ってから、冷蔵庫で約1時間冷やし、賞味となった。
本葛粉を使用した半透明の皮と中のこしあんが秀逸。
濃い小倉色のこしあんはしっとりとしていてほどよい甘さ、塩がほどよく効いている。
目と舌を同時に満足させる、上質な味わいだと思う。
和菓子職人(三代目)の手の香りも伝わってくるよう。
桜の葉は「生葉を使ってます」。きれいなはずだよ。
次は水まんじゅうへ。
葛桜ほど期待していなかったが、これが結構気に入った。
葛桜よりもほんの少しぷるるん感が上回っている。ひょっとしてわらび粉も加えているのかもしれない。
包丁で切ってみると、中のこしあんが流れ落ちそう。
葛桜よりも水気があり、その冷たい食感がとても心地いい。
こしあんは小豆のいい風味が舌に残る。
「栗どらやき」もついでに書いておきたい。
しっかりと作られていて、人形町清寿軒の小判を連想させた。妙にべたべたしていないのが好み。余分な色気がない。わかる人にわかればいいってもんよ。そんなつっけんどんすら感じる。
中のつぶしあんははみ出そうなほどで、やや甘め。こちらも塩気がいい塩梅。丸ごと一個の栗もきりっとしていて、江戸の粋と野暮を受け継いだ一品だと思う。
酷暑に上質の生菓子、日本人に生まれてよかった。と改めて思う。