久しぶりの金沢あんこ旅。
3日間滞在して、足が棒になるほど歩き回ったが、さすが京都の次に位置するあんこのメッカ。
上菓子屋さんから饅頭屋さんまで、京都とよく似た奥の深さとタイムスリップ感を感じて、私のあんこセンサーはピコピコ鳴り通しでした。
で、「金沢あんこの巻」として、しばらくお付き合いください。
たまたま本日は「和菓子の日」。和菓子の中でも今回は特に「朝生(あさなま)」のあんこ菓子を取り上げたいと思います。
つまり「朝作ったものをその日のうちに、それも早めに食べる」。和菓子の原点の一つ。
個人的にはこれが一番うまい食べ方ではないかと思います。
では、よーい、スタート!
犀川大橋(さいかわおおはし)のほとりに暖簾を下げる小さな、いぶし銀のような和菓子屋さんと導かれるように出会った😁。
「生菓子商 谷屋」と書かれた白地の暖簾が、店主の心意気をにじませている。
明治35年(1902年)創業。店主は4代目。
いいあんこの気配にワクワクしながらゲットしたのは次の3品。
・くず餅(こしあん入り) 税込み148円
・五色(ごしき)生菓子から2種類
山(いがら餅) 同148円
里(蒸し羊羹) 同148円
【本日のセンター】
絶妙な本葛とこしあん、手摘みの笹に驚かされる
狭いが、ちょっとしたスペースがあったので、「ここで食べてもいいですか?」と女将さんに聞いてみた。
「どうぞどうぞ」
安いお客なのに、ほうじ茶まで出してくれた。あんこの女神様・・・。
くず餅は京都などと同じ本葛(ほんくず)を使った、くず桜とほとんど同じもので、下に敷いてあるのが桜葉ではなく笹だった(関東のくず餅は小麦粉を使用していて金沢や関西とは形も味わいも違う)。
くず餅の透明感と中のこしあんは甘さを抑えていて、塩気はほとんどない。
北海道産小豆を使った自家製のこしあんで、とてもなめらか。
たまたま4代目店主がいらしたので、あれこれ尋ねてみた。
「朝生は私たちにとっては当たり前のことで、朝早く、暗いうちから起きて、毎日手作業で生菓子づくりをしてますよ。昔からずっとこの生活です」
下に敷いてある笹も「夫婦で山に入って取ってくる。金沢はたまに熊も出るんですよ」と聞いて、店主のお顔をまじまじと見てしまった。
小豆の風味が絶妙で、みずみずしさを感じるこしあん。
あんこ炊きのとき、渋切り(あく抜き)を4~5回する、と聞いて驚かされた(フツーは1回かせいぜい2回程度)。
渋切りをしすぎると、小豆本来の素朴な風味が薄くなる。
その分、透明感が研ぎ澄まされると思う。
ギリギリのところで毎日勝負していることがわかる。
その成果をあんこ狂が無造作に店の中で味わう。
本葛のピュアなプルプル感が主役のこしあんをキラキラと押し上げている(そんな感じ)。
金沢のあんこ文化、京都に負けていない。そう思うのだった。
【サイドは五色生菓子】
日持ち(時間持ち?)しないので、悲しいかな胃袋も一つしかないので、五色生菓子のうち、涙の選択で2種類を選んだ(早朝からあんこ菓子を食べ続けているので、これがギリギリでした。残念無念)。
まずは「山」。こしあんを山芋を加えた求肥餅で包み、ごらんの通り、表面にはクチナシで黄色く着色した蒸かし立てのもち米が張り付いている。なので「いがら餅」とも言うようだ。
もち米は石川産で、米粒の食感が味わいに色どりを付けている。
五色生菓子は2代目藩主・前田利長の時代からお祝い事に欠かせない生菓子だそう。
「里」は丸い形の蒸し羊羹で、食感はむっちりと柔らかな弾力に富んでいて、こしあんの風味がすっと入ってくる。
甘さはかなり控えめで、上質な蒸し羊羹だと実感する。
いい時間がゆっくりと流れる。素朴で気さくな4代目が金沢生菓子文化の体現者の一人だとジワリと思い知らされるのだった。
「生菓子商 谷屋」
所在地 金沢市野町2-1-1
最寄り駅 金沢駅から歩くと約30分(バス便が便利)