Go toを利用して、古都・会津へ行ってきた。
目的の大半はむろんのこと、あんこ旅!
そこで出会ったのが吉野葛(よしのくず)と寒天を使った、不思議な食感の水ようかん(の一種?)だった。
その名も「小豆のほのか豆腐」(1棹 税込み780円)。商品名に豆腐の2文字を付けているが、豆腐ではない。
約3年前、現地で情報収集中、猪苗代駅前の食堂のオヤジさんから聞いたもの。「品がよくて、絹豆腐のような、ま面白い水ようかんだ。冷たくするとうめえよ。俺たちにはちょっと高いけどな(笑)」。
そのときは残念ながら時間がなくて行けなかった。今回の目的の一つがその時のリベンジ(?)でもある。コロナ下のご対面となった。
それがこれ。淡い藤色の、光を閉じ込めたような、半透明のぷるるん感が見た目からも伝わってくる。ありそうでない、初めての景色。
タネを明かすと、小さな和菓子専門店「會津 豊玉(ほうぎょく)」が苦心の末に作り上げた和スイーツで、北海道産有機小豆と吉野葛の恋愛の結果(こんな表現ってアリ?)生まれたもの。
この店、その後調べてみたら、きらりと光る丁寧な仕事ぶりが一部首都圏にまで届いていることがわかった。オリジナルの上生菓子も作る、手作りにこだわったレアな和菓子屋さんで、店主は「全国菓子大博覧会」で、工芸大賞も受賞している。
1棹の長さは180ミリ、幅60ミリ、厚さは33ミリ。重さが約437グラム。
砂糖は多分グラニュー糖。控えめな甘さとぷるるん感が半端ではない。上品すぎて、あんこ原理主義者の私には物足りなく思えるほど。
だが、しばらくすると、この物足りなさが、きれいな口どけと長い余韻に変化してくる。繊細な変化。
高価な吉野葛でこしあんを練り込んだ意図がぼんやりと見えてくる。
野心的な創作和菓子の世界、だと思う。
店の創業は平成14年(2002年)で、店主は東京製菓学校を卒業した後、東京や千葉・山梨で腕を磨き、飾り菓子で工芸大賞を取るまでになった。技術力の高さの証明でもある。
湧水のような余韻に浸りながら、さらに「富貴(栗)」(税込み200円)と「富貴(餅)」(同200円)も賞味してみた。
茶巾包みの小豆羹で、これがドンピシャ好みだった。
あんこ(大納言小豆)の炊き方が職人ワザで、やや濃厚な甘さとつぶつぶ感が口の中で吹き上がってくるよう。いい小豆の風味のガブリ寄りはちょっと凄い。
崩れ落ちる小豆羹の絶妙。餅粉と寒天のつなぎが解かれる感覚。しばしの間、おぼれたくなる。
手作りの蜜煮した一粒栗とのコラボ。
とろける求肥(ぎゅうひ)とのコラボ、
どちらも上質だが、あんこの美味さだけを追うなら、個人的には求肥の方かな(栗好きは置いといて)。
あえて言うと、「小豆のほのか豆腐」より気に入った。
店主はたまたま不在で、お会いできなかったのが残念だが、店のコロナ対策は過剰なほどだった。
素材選びと一からの手作りにこだわる、この猪苗代湖畔の町の小さな店。新しさと古典を融合させる試み。会津の頑固が少しずつ花開いていく。背景で猪苗代湖と磐梯山が微笑んでいる気がするのだった・・・。