意外なあんこ王国・小田原編。2番バッターは「御菓子 ういろう」の喫茶室で出会った抹茶餡(まっちゃあん)をアレンジした和風ぱふぇ「涼風(すずかぜ)」である。
正直、創業が室町時代というういろうの元祖(諸説ある)なので、上生菓子や新しい和スイーツと出会えるとは思ってもみなかった。
あんことは別種の「ういろう」はどちらかと言うと苦手な世界で、とはいえその歴史に敬意を表して、「ちょっと覗いてみるか」程度の軽い気持ちだった。
天守閣を思わせる壮大な店構え。入り口をふと見ると、右手に喫茶室があり、そこに栗と白玉、それに抹茶餡などが層になっている「涼風」(税別600円)のメニュー写真が「おいで」をした。ん?
まさかの流し目。まさかの出会い。クール美女の予感。
「老舗の職人が作るこだわりの逸品」とシンプルな説明も、超老舗のこだわりを感じさせる。うーん、悪くない世界。
これは食べなければ・・・BGMのピアノ曲が流れる中、隅っこのテーブル席に腰を下ろして、いただくことにした。
来た。
ごらんの通り、上から見ると、蜜煮した栗、白玉、甘納豆(大納言小豆)が見事に配置され、その下にはきれいな抹茶餡、横から見るとババロア、抹茶ゼリーが層になっている。
冷たい夢のような世界(オーバーだって? いやいや)。
小さくほおーっが出かかる。
スプーンで白玉(柔らかな上質)、栗(キリリとしている)、甘納豆、ババロアの順で口に運び、隠れ主役の抹茶餡へと進んだ。
これが見事な、京都の老舗に負けない抹茶餡だった。あまりにみずみずしい、粒子を感じる舌触り。
抹茶と手亡(てぼう)の絶妙な練り具合。餡作りの砂糖は白ザラメか。
抹茶の濃い風味が白あんのきれいな風味と融合している。
職人の手の存在も確かに感じる。
甘さもほどよい。
その歴史を思う。新しい和の試みに少しウルウルしてしまった。
店の人に自家製抹茶餡の詳しい話を聞こうと思ったが、「抹茶は京都から取り寄せています」としか教えてもらえなかった。上生菓子を作る職人さんが苦心して作ったもの、ということはわかったが。
当主は25代目とか。室町時代に中国から日本に帰化した外郎家(ういろうけ)が、博多⇒京都(外郎本家)と経て、そこからさらに小田原に分家したという歴史のようだ。後北条の時代か。
その後、京都の本家は衰退し、小田原の外郎家が生き残り、隆盛し、今日まで暖簾を守り続けているということになる(諸説ある)。これってすごいこと。
面白いのはういろう自体はもともとは薬(丸薬)で、京都の2代目が苦い薬を調合する合間に甘い生菓子を出したところ評判を呼んだという。それがいつしか「ういろう」になってしまった、というのが一つの有力な説。この小田原本店の一角にも調剤コーナーがある。室町から連綿と続いている、感動もの。
今ではういろうと言えば、名古屋が有名だが、歴史的には不明な部分が多い。
室町時代から数百年、小田原でその枝が和風ぱふぇにまで進化(?)していたとは、天国の初代が見たらびっくりするに違いない。
かってに恐惶謹言。あんこ大好き個人としては、このパフェにあんこバージョンも追加してほしい。特につぶあん、こしあん・・・あんコールだってば(オヤジギャグ?)。
所在地 神奈川・小田原市本町1-13-17