みちのくあんこ旅が長すぎたので、ここで箸休め。
今回はあの(!)東京・日本橋の老舗蕎麦屋「室町砂場」の「そばぜんざい」を取り上げたい。
以前から一度食べてみたかったメニューだが、これだけを注文するのは気が引ける。
本当なら純米酒の冷やかぬる燗を横に置いて、ざるそばでも手繰ってから、仕上げとして味わうべきものだと思う。
なので、今回は邪道を承知で、お客の少ない時間帯に暖簾をくぐった。
お品書きには2種類。「温」と「冷」。「野暮天が来ちゃったよ。しょうがないねえ」とどなたかがつぶやいた気がした。ごめんよ、と心の中で手を合わせてっと。
★本日のキラ星
そばぜんざい 850円(税別)
冷しそばぜんざい 850円(同)
●あんヒストリー 「室町砂場」の創業は明治2年(1869年)。現在5代目。「砂場総本家」(南千住)から暖簾分け。「砂場」のルーツは大阪で、秀吉の時代までさかのぼる。大坂城築城の際に秀吉の依頼を受けた「和泉屋」(和菓子屋?)が資材置き場(砂場)にそば屋を開いたのが最初と言われる。なので「砂場」。やがて江戸が中心地となり、砂場も江戸に進出したようだ(諸説ある)。
【センターは?】
お椀かガラスの器か、悩めるあんこタイム
🟫一膳目 そばぜんざい
器のお椀の蓋を取る。
たっぷりのこしあんとそば切り(さらしな)の香りが鼻先にふわりと来た。
浅草「梅園」の大好きな「粟ぜんざい」のご親戚の方、のような登場の仕方。
湯気ととも温かいにこしあん(自家製)が「どうでありんすか」と色っぽい仕草で迫って来たような妄想を数秒ほど楽しむ。勝手にしなさい。
店のスタッフによるとこしあんは希少な大納言小豆(北海道産)を使用してるとか。砂糖は「上白糖」とか。
こしあんの下にはそば切り(細打ちのさらしな)。三口ほどで食べれる量で、ほどよい量だと思う。
味わい:こしあんは甘すぎない、舌触りがまったりとしたいいこしあん。
そばは「さらしな」(一番粉)で、雑味のないピュアな味わいだが、湯切りしたばかりだと思うが、少しくっ付き気味で、正直に言うと、上品だが、そば切りよりもそばがきの方が相性がいいかも、とも思ったが・・・(個人的な好みです)。
とはいえ江戸時代からのそば切りの伝統と考えると、この組み合わせは感慨も深くなる。
箸休めのシソの実が少ないのがとてもいい。小粋な演出。
そば切りとあんこを融合させた、希少で贅沢な一品、ではある。
🟫二膳目 冷しそばぜんざい
ガラスの器がシャレている。
冷たい結露が涼やか。風鈴でも聴きたくなる。
こしあんとその下のそば切りが透けて見えるので、蒸し暑いこの季節は心が揺れる。
考えてみれば、レアなメニューだと思う。
こしあんは同じものだと思うが、色彩はやや淡い。こちらは冷たくしている。
味わい:同じこしあんのはずなのに、36℃の舌に吸いつくような冷たさが心地よい。
作り方を少し変えているのかもしれない。なめらか。かすかな塩気も心地よい。
なぜだろう、こちらの方が小豆の風味をより感じる。
温の方がより風味を感じるはずという予想が少し外れた。
冷水で水切りしたそば切りとの相性もこちらの方がより絶妙を感じた。
ほんわかときりり。全体的により締まった味わい。
変な例えだが、本妻と愛人みたい(どっちがどっちかはわからない)、と言ったら怒られるかな。
さらしなの風味もより感じる。
あんこの美味さもよりくっきりと広がる気がする。
とはいえ、これを冬に食べると感想も変わるかもしれない。
そば切り×あんこ、今度は季節を変えて味わってみたい。ぬる燗も一緒に。
《小豆のつぶやき》
▼今回は微妙な食べ比べとなったが、お品書きには「おしるこ」もある▼支店の「赤坂砂場」もメニューは同じ▼場所がら歌舞伎役者など有名人にもファンが多い▼「室町砂場」の近く地下コンコースには江戸時代の壁画「熈憂照覧(きゆうしょうらん)」もある▼立ち売りの菓子屋の姿も生き生きと描かれている▼日本橋周辺は江戸の中心地だった。
「室町砂場」