路地裏の小さな隠れ名店、東京・人形町「御菓子司 東海」の驚きはさらに続く。
前回、上生菓子のレベルの高さに私のあんこハートがウルウルさせられたが、今回ご紹介したいのは生菓子ではなく、焼き菓子「茶通」と「栗最中」です。税込み250円と300円。
驚きという意味では「茶通(ちゃつう)」かもしれません。
●あんポイント 抹茶(あるいは挽茶)と小麦粉ベースの皮でこしあんを包み、平べったくして焼いた焼き菓子(半生焼き菓子)で、手間がかかる上に、作り手の腕がよくあらわれると言われる和菓子です。ルーツは不明。明治時代には存在していたようだ。
そのいぶし銀ぶりをまずは見ていただきたい。
私はあわや目が吸い込まれそうになりました、ホントです(個人的な感想です)。
私がこれまで食べた「茶通」で感動したのは京都「本家玉壽軒」のものですが、この「東海」のものは、ビジュアル的にも味わいの深さもまったく引けを取らないレベルだと思います。
サイズは約45ミリ×45ミリの円盤形。
表面には茶葉と黒ごまが点々としていて、まず焼き色が素晴らしい(この焼き加減も難しいと思います)。
手で割ると、こしあんが現れるのですが、このこしあんが驚きでした。
焼き菓子なのに、特筆すべきは舌触りのしっとり感とみずみずしさ。
ほどよい甘さ。
抹茶皮の柔らかなサクサク感と合わさって口の中で融け合うと、もはやこれは反則レベルと思ってしまいました(いい意味で、です)。
三位一体の掛け算的な味わい・・・表現が追いつかない(汗)。
黒ごまの香りも絶妙なプラスα効果で、ご高齢の2代目店主の繊細な腕に脱帽したくなりました。
栗きんとん最中:栗最中は2種類(小豆餡と白餡)あり、私がゲットしたのは白餡(手亡豆)の方。
と言っても蜜煮した栗が丸ごと一個入った、関東風の栗きんとんで、しっかりと閉じられた種(もなか皮)の上質な香ばしさと合体すると、吹き上がるような美味さが津波のように押し寄せて来ました。
甘すぎない、ねっとりとした絶妙な白餡+栗。
冷たい麦茶で舌をニュートラルにしながら、何度も噛みしめる。
いい栗最中だなあ、とまたもご高齢の2代目(訪問時は作業中でシルエットだけが見えた)に脱帽したくなった。
話題の映画「九十歳。何がめでたい」を観たばかりなので、こちらは「全部めでたい」と言いたくなってしまった。
私のあんこ旅の中でも、正座して感謝したくなる和菓子屋さんの一つ。
文字通り「有難い=あること自体が難いという意味」(裏千家・千玄室さんの言葉)の意味を改めて噛みしめる。
「御菓子司 東海」
所在地 東京・人形町1-16-12