京都が秀吉なら、仙台は伊達政宗が造った街となる(諸説あるが)。
いい和菓子屋や餅屋が多いが、私にとっての謎は上生菓子の小世界である。
「御菓子司 賣茶翁」(ばいさおう)の名前は以前から知っていたが、敷居が高そうなので、これまでは足が向かなかった(反省)。
予約もできず、電話番号すら登録していず、ホームページすらない。
つい最近までそんな噂(都市伝説)が独り歩きし、「かなんなあ」の世界だったが、今回思い切って訪問することにした。
結論。都市伝説は訂正する必要がある。
電話も通じたし、最近ではインスタグラムも取り入れていた。
それ以上に私にとっては身近な「どら焼き」が、この店の目玉の一つだとわかった。
雑誌やネットなどで見ると、店構えの凄さ(侘び寂びの世界)に驚かされる。
前日に電話をしたら、予約できることもわかった。
「どら焼きをまずは一つお願いします。残りは実際にお伺いしてから」と小さなお願い。ちょっと緊張する(笑)。
応対は素晴らしい。
★ゲットしたキラ星
どら焼き 300円
玉藻羹(上生菓子)480円
最中の月 290円
※すべて税別価格です。
【センターは?】
黒塀に囲まれた、そこだけ時間が止まったような、侘び寂びの世界。都会の中の異空間、といったところ。
どこか京都の歴史ある料理屋のような佇まい。
これはすごいね、しばし時間を忘れる。
その一角によく見ると「焼きたてどらやきございます」の文字。「本日営業中」の立て札も見えた。
ラッキーと思うことにした。
千利休が伊達政宗を従えてどこかに隠れているのではないか? そんな妄想が起きた。
焼きたてどらやきのサイズは約95ミリ×95ミリ。大きい。
焼き色が濃いが、見た目は上野黒門町「うさぎや」とよく似ている。
日持ちしないのでホテルに戻っての実食となったが、手に持つとずっしりと重い。
手で二つに割ると、どら皮のスポンジ感がとてもいい。
新鮮な卵の風味が来た。
中はつぶあんだが、焼き立てということもあるのかドロリと緩め。
緩めのつぶあんも上野黒門町「うさぎや」と共通していると思う。
このつぶあんが美味が爆発するような広がりで、口の中がしばし支配された。
むしろ濃厚で、コクのあるつぶあん。
一粒一粒に丁寧さが入っていて、ふっくらと柔らかく炊かれている。
上生菓子屋がつくるどら焼き。
フツーに美味い。
【サイドは?】
上生菓子「玉藻羹」(たまもかん):目と舌をくすぐる精緻の極め方
上生菓子は数種類、宝石のように並んでいたが、日持ちしない、安くはない、という限られた条件の中で、私が選んだのがこの「玉藻羹」。
深い緑色と二層の羊羹の美しさ。
黒糖羹とあずき羊羹(水ようかん)。
上から見ると大納言あずき(甘納豆)が2個藻に浮いている。
藻は抹茶のようで、その深みのすぐ下に黒糖羹が控えていて、さらにその奥にこしあんが秘められている・・・すごいね。
スプーンで口に運ぶと、錦玉羹がぷるるんと揺れ、黒糖の香りと抹茶のマリアージュ、さらに穏やかなこしあんが二重三重の波となって押し寄せてくる。そんな感じ。
こしあんのキュートな味わいにホッとする。
和の世界に洋のアイデアを取り入れている?
ここはやはり凄腕と、脱帽したくなった。
最中の月:奈良の「みむろの最中」と同系の薄型の最中。
中はつぶあん。どら焼きとほぼ同じものだと思う。
皮の香ばしいサクサク感、甘めのつぶあん。
フツーに美味しい最中でした。
●あんヒストリー
▼「賣茶翁」という店名は江戸時代に存在した僧侶の名前で、煎茶の中興の祖と言われた人。▼一時仙台にもいたようで、この店の初代が尊敬していて、店名にしたようだ。▼「御菓子司 賣茶翁」の創業は情報を公開していないので、はっきりしない。▼店の人に聞いてもベールに包まれたような応対だった▼それでも話の内容から創業は古く(インスタには明治12年創業と書かれている)、仙台空襲後、昭和22年頃現在の場所で店を再開、その時に「賣茶翁」を屋号にしたようだ▼そこからは三代目となるようだ▼仙台から京都や東京に負けない上生菓子のいぶし銀ワールドを発信し続けている。
「御菓子司 賣茶翁」
最寄り駅 JR仙台駅からバス「市民会館前」下車