意外だが、つくば市はあんこのプチ王国、である。
と書きたくなるホットな展開になってしまった。
百聞は一見に如かず、ではなく、百聞は一味に如かず。
実際に足を運んだら、研究学園都市というイメージからは別の顔が見えた。
うれしい誤算、もたまにはあるな。
その一つが「手づくり和菓子 翁屋(おきなや)」竹園店。
以前このブログでご紹介した超老舗下妻市「翁屋」本店(7代目)の支店だが、実質的には8代目(息子さん)が仕切っているこちらが隠れ本店とわかった。
この8代目が凄腕の和菓子職人で、外観も店内も瀟洒な造りで、若い和菓子職人を育てているのもなかなかできないこと。
ガラス張りの工房が素晴らしく、しばし見入ってしまった。
下妻本店の創業は明和8年(1771年)。関東でも有数の歴史を刻んでいる。
★今回ゲットしたキラ星
あずきよせ(1棹)960円
うらら 260円
道明寺 210円
筑波太鼓(どらやき)240円
※すべて税込み価格です。
【センターは?】
5月だというのに夏日が多く、今回の訪問でこの季節限定の涼菓に惹かれた。
要冷蔵の日持ちしない棹菓子(冷蔵庫で4~5日ほど)で、紙箱入り。
本体のサイズは180ミリ×55ミリ。厚みは35ミリほど。重さは約400グラム。
本体は美しい藤色。こしあんと吉野葛の高貴な関係がどこかはかない夢のようで、それゆえに私のあんこころがくすぐられた。
目が吸い込まれる。
実食タイム 8代目によると、こしあんも自家製で、小豆は北海道産無農薬有機栽培小豆を使用、ザラメは白ざら糖。素材への深いこだわりが窺える。
ぷるぷる感が秀逸で、舌に伝わる冷たさとこしあん×吉野葛のマリアージュが上品。
こしあんの奥ゆかしい潜み方が心地よい。淡い甘み。
濃厚なあんこ好きにはやや物足りないかもしれないが、むしろ味わいのはかなさがたまらない。
水ようかんとは別の深い味わい。
この季節限定の冷たい上質を一度味わうとクセになるかもしれない。
口どけの良さも付け加えておきたい。
【セカンドは?】
うらら これは私が大好きな和菓子。俵屋吉富「雲龍」や鶴屋吉信「京観世」と同種の巻き菓子で、村雨(こしあん×米粉)で丹波大納言あずきの小宇宙(柔らかな羊羹状)を巻き包んでいる。
口に入れると、2種類のあんこが重層的に睦み合いながらどんどん広がって来る感じ。
ほどよい上質な甘さ。唾液がどんどん出てくる。小豆のいい風味に寄り切られそうになる。塩気もほんのり。あんこの小宇宙まで感じる。
これ、やっぱり好きだなあ。
道明寺 塩漬け桜葉と淡い桜色の道明寺、それに藤紫色のこしあんが舌に馴染んでくる感覚がとてもいい。こしあんの粒子を桜が撫でていくような。
小ぶりだが、この香り高い一品だけでも8代目の和菓子職人としての実力がわかる。
筑波太鼓 どら焼きだが、筑波にちなんだネーミングも面白い。
サイズは左右90ミリ弱の円形で、焼き色が濃いめ。手焼き感が伝わってくる。重さは約92グラム。
新鮮な卵の風味と柔らかな歯ざわりのどら皮。柔らかななふっくら感。
中は有機栽培小豆をていねいに柔らかく炊いたつぶ餡。それがたっぷり。
塩気が追いかけてくる。
手の香りのするいいどら焼きだと思う。
●あんヒストリー
下妻店の創業は江戸時代(上記)で、この竹園店は平成16年(2004年)にオープンしている。ガラス張りの工房がクール。8代目と若い和菓子職人が毎日、ここで和菓子づくりに励んでいる。8代目は製菓学校には行かず、甲府の老舗で腕を磨き、これまでに数々の賞を受賞しているようだ。店にはみかん大福から上生菓子まで、手の込んだ生菓子も作っていて、お取り寄せにも対応、全国にもファンが多い。
「翁屋」竹園店
所在地 茨城・つくば市竹園2-14-1