根っからの串だんご(あんだんご)好きなので、かつて東京・築地にあった「福市だんご」(一日少量しかつくらなかった=すでに閉店)のような、全身がとろけそうな串だんごに会いたい。
日本民藝館で柳宗悦のコレクションを楽しんだ後、東北沢まで足を延ばした。
私にとってはかつて2年ほど過ごしたエリアでもある。
目的は「和菓子司 ほさか」。
周辺の風景は大きく変わったが、小さな、志しを感じる渋い店構えはクール。
ここで出会ったのがよもぎの「草だんご」。
見た瞬間、細い竹串に突き抜かれた濃いよもぎ(2玉)の深い色に体ごと引き込まれてしまった(そんな感覚)。
「中は自家製こしあんです。本日中にお召し上がりくださいね」(女性スタッフ)
去年11月に立ち寄った目黒ちもとの草だんご(こしあんが外で中がよもぎ餅)のちょうど逆バージョン。手づくり感。
見た目のインパクトの強さは引けを取らない。
★今回ゲットしたキラ星
草だんご 170円×2本
大栗(焼き菓子) 200円×2個
くるみ(同) 190円×2個
※価格は税込みです。
【センターは?】
この小さな和菓子屋さんが素晴らしい店だとわかるのは店構えとともに、店内の木枠のケース。その中身。
季節の和菓子から半生の焼き菓子まで、商品の数はそう多くはないが、しっかりと手づくりしているのが見て取れる。
しかもよく見ると、隅々まで神経が行き届いている。清潔感。
地元の女性客が次々と訪れ、少量を買っていく(たまたまかもしれないが)。
さて、本日の主役、クールな草だんご。
実食タイム 深いよもぎ色の草だんごは柔らかく、口に入れる前からよもぎの新鮮な香りに襲われてしまった。
ひと串2個というのが微妙だが(個人的にはできれば3~4個が理想)、ひと噛みしたら、そんな雑念が吹っ飛んだ。
中のこしあん(自家製)のほどよい甘さといい小豆の風味がほとんど同時にふわりと広がるのがわかった。
雑味のない、ワンランク上の草だんごだと思う。
舌は正直。う・め・え。言葉が出かかる。
大量生産では多分出せない、職人さんの清潔な手の香りまでするような、どこか温かみのある味わい。
あんこは北海道十勝産小豆×白ザラメ。
素材のこだわりもさり気ない。
「うちは上白糖は使わず、白ザラメなんですよ」(女性スタッフ)
こしあんのむしろすっきりとした味わいは白ザラメならでは、かもしれない。
たかがだんご、されどだんご。
このされど、に店主の思いと技術がぎっしり詰まっている・・・そう思えてくる。
【サイドは?】
大栗:半生の焼き菓子で、重さは46グラムほど。
栗まんじゅうだが、卵黄のテカリと皮生地のほっこりとした味わいが印象的。
蜜煮した栗が丸ごと一個、さらりとした白あんに包囲されていて、皮の香ばしさと口の中で合体⇒崩壊すると、「これはいい栗まんじゅうだなあ」と感銘を受ける。
余韻も長い。
くるみ:京都老舗の半生焼き菓子のような、見た目からして、唾液が出かかる。
楕円形の小麦粉ベースの生地と絶妙なひび割れ。中央にはくるみが一個ハマっていて、手に持って噛んだ瞬間、皮生地の柔らかな崩壊と中のつぶあんの絶妙な融け合いが来た。
くるみのかりっとした歯触りと香ばしさがとてもいい。
ほどよい甘さが全体を押し上げる。
これは病みつきになる半生焼き菓子だと思う。
●あんヒストリー
創業は1952年(昭和27年)、店主は2代目。淡い薄紫色の暖簾といい、なかのシンプルな造りといい、作っている生菓子類といい、この店のポリシーが京都や東京の老舗の遺伝子を受け継いだものと思う。価格を低めに抑えていることも地元客を大事にしていることがわかる。私はその姿勢に清々しさを感じてしまった。
「和菓子司 ほさか」
所在地 東京・世田谷区北沢4-1-3