製餡所が本気でつくったゆるゆるおはぎ、ヒットするか、どんな味わいか、大いに気になる。
ここ数年、あんこ製造のプロフェッショナル、歴史のある製餡所が新しいチャレンジに乗り出している。面白い動きだと思う。
東京・浅草のあんぱん専門店「あんですMATOBA」(的場製餡所)、愛媛・松山の「あんパティスリー七日」(石田製餡所)など成功例もきらりきらりと輝き始めている。
今回取り上げるのは埼玉・大宮の老舗「木下製餡」が工場入り口にオープンした直売店「あんこどき」。
店名がシャレているが、木をベースにしたウッディーな店内もシンプルでクール。
5月30日(金)にオープンしたばかり。
あんぱんでもなく、洋菓子プラスでもない。
目玉メニューはあんこワールドの素朴な王道とも言える、3種類のおはぎ。つぶあん、こしあん、川越いもあん。
バラエティーに富んだカラフルなひと口羊羹や数種類のあんこ詰めパックもきれいに置かれているが、私の関心はトリオ・ザ・おはぎ。
●ゲットした3種類のおはぎ
つぶあん(2個パック)370円
こしあん(同) 370円
川越いもあん(同) 370円
※すべて税込みです。
【センターは?】
つぶあん:ゆるゆるの凝縮が吹き上がる
2個パックだが、ごらんの通り上から見ると、濃い藤紫色のつぶあんの海!
一見、ゆるゆる(たおやか?)だが、製餡所の技術の裏打ちが一粒一粒に込められている。素材と無添加づくりにプロのこだわり。
「出来立てなので、できればその日のうちにお召し上がりください」(スタッフ)
個人的にはもう少し水分を飛ばした方が好みだが、自宅に戻ってから皿に盛って味わったら、北海道産小豆(エリモショウズ)のいい香りと柔らかな食感が爆発的に口の中に広がるのがわかった。
使用している砂糖は白ざら糖。なので、味わいにすっきり感がある。
プロフェッショナルが本気でつくるとこうなる、ということかもしれない。
甘すぎず、絶妙な塩加減、余韻まできれいなつぶあん。
もち米(埼玉産?)の炊き方も申し分ない。半殺し(半分搗いた状態)の絶妙。
一個が大きめだが、あっという間に2個(1パック)、胃袋に落ちていった。
このおはぎの快感。たまらないな。
【サイドは?】
こしあん:こちらもゆるめ。個人的には水分の多さが気になるが、これを意図してつくっているとしたら、これはこれであり、というしかない。
ギリギリの計算ということかも。
甘さが穏やかでやさしい。どこまでもなめらか。
小豆自体の素朴な風味はつぶあんほど前面には出てこない。
濃厚なあんこ好きには少し物足りないかもしれない。
だが、このピュアなまったり感は悪くはない。
濃い藤紫色のどろりとした舌触り。
塩気はほんのり。
もち米とのマリアージュはつぶあんほどのインパクトはないが、呉(小豆の中身)の上品な甘さはこしあん好きには受けるかもしれない。
川越いもあん:最後になったが、地場(埼玉)の素材にこだわっていることに好感。
さつまいもの名産地・川越「阿部農園」自慢のさつまいもを手で皮むきして、ていねいに炊いて、半殺しのふっくらとしたもち米にたっぷりとかぶせ包みしている。
オーガニックな甘さ。白ざら糖も加えているかも。
黄金色のおはぎ。
小豆とは違う、しっとりとしたさつまいもあんのおはぎ、これは男にも美味しいが、むしろ女性の方に人気が出るかもしれない。
●あんヒストリー
「木下製餡」の創業は1931年(昭和6年)。和菓子店やパン屋などあんこを使うメーカーや店に様々なあんこを製造販売しているが、今回、工場内入り口の一角に直売所「あんこどき」をオープンさせた。出来立てのあんこがすぐ食べれることになる。4代目の新しいチャレンジで、あんパティシエを中心にスタッフも若い。すぐ奥が工房になっていて、毎日、つくりたてのあんこでお客に対面販売している。さらに工夫すれば、埼玉のオシャレなあんあんスポットになると思う。
「あんこどき」
最寄り駅 JR大宮駅西口から歩約10分